《日本人駐在員のレベルが低すぎる問題》当事者が暴露…日本企業の中国進出が失敗続き「本当の理由」が判明した
「日本企業が反日リスクで撤退」――連日、こんな見出しが、連日各メディアを賑わせている。しかし、実状は少し違う。コンサルにアパレル、自動車、電機メーカー……さまざまな業種の中国駐在員たちに言わせれば「ご冗談を」と断言するのだ。
彼らによる“NGなし”の大放談をお届けする。
【前編記事】『中国駐在員のホンネ「言うほど反日感情ありません」は本当なのか…マスコミとは真逆な現地の「リアルな温度感」』よりつづく。
昔より中国駐在の旨みは無くなった
コンサル(50代、元メガバンで在中20年。趣味は格闘技): 私がメガバンクの駐在員だった'00年頃は「ハードシップ手当(危険地手当)」が手厚かったです。地域手当だけで月7万円、さらに住宅補助もすごかった。当時のUFJ銀行の連中なんて、我々と月10万円以上も差がある! と飲み屋で嘆いていたものです(笑)。自動車業界はどうですか。
自動車(30代、大手メーカー工場マネージャー勤務。趣味はアニメ): ハードシップ手当? コンサルさん、それはいつの時代の話ですか(笑)。中国は今や「先進国」扱い、「生活環境良好」という判定ですので、そんな手当はつくはずもありません。
家賃補助は会社持ちですが、上限は数年前から据え置きで、最近の家賃上昇についていけない。交際費も管理部門に「誰と、何の目的で、なぜその店なのか」を数ヶ月前から細かく申請しないと1円も出ません。
電機(40代、中堅メーカー。趣味はパンダ見物): 昔は「中国駐在で3年いれば家が建つ」と言われた出世コースでしたが、今は中国の物価上昇と円安のダブルパンチ。手取りを円換算すると、日本で働く同世代より生活水準が低いんです。一時帰国して日本の本社に行くと、同僚から「大変だね」と憐れみの目で見られるという現象が起きていますね。「中国みたいな怖いところに行かされているかわいそうな人」という視線。実際は便利で快適なのに。
アパレル(50代、在中25年・ラグジュアリー業界。趣味は紹興酒集め): '90年代後半の北京や、'00年代前半の上海なら、手取りで30万円もあれば2000米ドルの豪華なマンションに住めて、毎晩のようにKTV(日本語ができるホステスもいるカラオケ店)で豪遊できたのになあ。
ちやほやしてもらえるのは、いまや中国人の「老板」ばかりですよ。ラグジュアリー業界で優秀なマネージャーを雇うには年収3000万が相場ですが、日本の社長が2000万ならそれ以上出せないのが日系企業。結果、優秀な人材は欧米企業に流れ、日本人は完全に脇役です。
現地スタッフの気質も「肉食から草食」へ
コンサル: 現地のナショナルスタッフ(中国人社員)の気質も変わりましたよね。昔のような「肉食」な感じが減って「草食化」しているという声もありますが。
自動車: まさに。私のいる大手メーカーでも、昔のような「ここで技術を盗んで、いつか自分で起業してやる」というギラギラした人は激減しました。10人に1人もいない。今は、言われたことを淡々と、波風立てずにこなす「安定志向」が主流。彼らは起業リスクよりも、大手日本企業の「倒産しない安心感」を求めている。
かつてのように駐在員が「教えてやる」と威張っていた階級社会は死にました。そんなことをしたら一瞬でボイコットされます。今は「ローカルスタッフさん」と「さん」付けで呼び、ご機嫌取りをする「調整役」が実態です。
コンサル: 日本企業の弱体化は、自業自得でもあります。駐在員は通常3年から5年で交代しますが、引き継ぎが本当にひどい。行きつけの店のボトルくらい。
アパレル: はい、これは本当に深刻です。引き継ぎと言えば、せいぜい「行きつけのKTVのボトル」と「使えるママのWeChat」、あとは「どこのマッサージ屋が上手いか」くらいなもんです。
肝心のビジネスにおける人脈、例えば「役所の担当者はこういうタイプだからこう落とせ」といった、ドロドロした、しかし最も重要な「暗黙知」が全く引き継がれない。だから、後任者が来るとまたゼロからのスタート。中国側から見れば「また新人の素人が来たぞ、カモにしよう」と思われるだけ。
自動車: 駐在員の役割の変化も理解すべきですね。かつては日本のやり方を教えるのが仕事だったようですが、今は現地のスピード感に置いていかれないための日中の調整役。そして中国人の手抜きを見破るのが仕事です。
彼らは隙があれば、効率化という名の下に、品質に影響する部分でも平気で手を抜きますから。とはいえ、それで成果を出す中国人も多いので、それはそれでたいしたものです。せっかく1を10にした経験を、次の人がまた0から始めている。この決断力を吸収できるかは、日本企業の生き残りに直結します。
なぜサイゼリヤは中国でも強いのか
コンサル: 日本企業の明暗が分かれていますが、くら寿司が中国から撤退したことが、日本でニュースとなりました。
アパレル: くら寿司の失敗は、幹部スタッフを現地人でなく、台湾人で固めたから、というせいもあると聞きました。2010年頃はモスバーガーが「シンガポール人」を教育スタッフにして失敗していました。トレーナーで来ていたシンガポール人も「中国人に教えるのは不可能」と初日に白旗をあげていました。妊婦の客に無料で毛布を渡す“意味”を質問され愕然としていました。客商売のサービス業で、非中国型の管理を押し付けるのは無理です。
電機: モスバーガーも'24年に完全撤退しました。一方、サイゼリヤやスシローは、相変わらずの大行列。とくにサイゼリヤについては、中国人は「本場っぽい洋食が食べられるファミレス」くらいの認識で、日本の会社だと思っていない。無国籍化が成功のカギのようです。
コンサル: 日本のメディアは「政治的な反日リスクで撤退」と報道しがちですが、実際は、内装のコンセプトが合わなかったり、価格設定が中途半端だったりと、中国人ニーズの読み違いがほとんどです。
自動車: 一方のスシローは、日本クオリティの管理を前面に出して成功していますね。あの成功は、飲食業ではなく装置産業ですね。サイゼリヤにもスシローにも、管理や育成が難しい「料理人」がいない。数週間トレーニングを施せば、誰もが等し均質の料理を作ることができる設備が揃っている。
アパレル: 飲食界全体でいえば、最近は情報の流れが逆転しています。東京で女子高生が麻辣燙(マーラータン)の店に並び、中国発の庫迪珈琲(コッティーコーヒー)が日本に進出するなど、逆転現象が起きています。かつてのように「日本で流行ったから持ってくる」モデルは通用しません。
ここは世界で最もエキサイティングな「実験場」
電機: 色々ありますが、中国ビジネスは今、刺激に満ちて楽しいと思いませんか? 中国で調子がいいのは、IPビジネス(知的財産を活用したビジネス)くらいでしょうか。『鬼滅の刃』の映画は日本円で150億円の大ヒットとなりました。
自動車: 勤務先の工場では、「ちいかわ」やサンリオのキャラの「クロミ」のキーホルダーをぶら下げた女の子たちもよく見かけますね。
電機: コンサルさん、歯ブラシの話はしましたっけ? これ、中国の国民性を知る上で面白いんですよ。日本のメーカー、ライオン(LION)の中国担当者と飲んだ時に聞いたんですが、中国で売られている歯ブラシは、ラインナップのほぼ100%が「柔らかめ」なんです。
コンサル: ほう、それはなぜですか? 歯茎が弱い?
電機: いえ、違います。中国の歯科医が、昔からの習慣で患者がガシガシ磨きすぎるのを見て、「とにかく柔らかいので優しく磨け」と一律に、そして強力に指導するからです。消費者はそれを「国家の教え」のように信じ込んでいる。だから「普通」や「硬め」を置いても在庫が山積みになるだけ。日本の常識で「汚れが落ちるから硬めがいいですよ」とプレゼンしても、1ミリも響かない。こういう、微細な、しかし絶対的な「教育の壁」を理解しているかどうかが、ビジネスの成否を分けるんです。
自動車: 一時帰国して本社に行くと、認識が20年前の「暗い・汚い・危ない」で止まっていて、同僚が憐れみますが、実際は便利で快適なことばかり。このギャップが駐在員のモチベーションを削いでいるだけで、中国という巨大な市場でマネジメントの全責任を負う経験は、日本では絶対に得られないチャンス。自分のキャリアの肥やしにする気概を持ってほしいです。
アパレル: 日本が先進国として上から目線でいられる時代は完全に終わりました。最近では、ベトナム駐在の中国企業のマネージャーたちが、「ベトナム人は働かない、手癖が悪い、すぐサボる」と現地スタッフに激怒しているそうです。かつて我々日本人が彼らに言っていたことの完璧な焼き直しですよ(笑)。歴史は皮肉な形で繰り返されますね。
電機: 日本の偏った報道と違い、今の中国は、AI監視社会の冷徹さと、相変わらずの人間臭い欲望が同居する、世界で最もエキサイティングな「実験場」でしょう。
コンサル: ありがとうございます。中国を好きか嫌いかの二元論で語っても無意味です。隣で猛スピードで発展する巨大な怪物に興味をもって、そのダイナミズムを理解し、必死に食らいつくしかない。それが現代の日本人に必要な中国リテラシーです。
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「週刊現代」2026年3月30日号より
