伊藤大海投手

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 第1回【WBC「ベネズエラ戦」で逆転3ランを被弾「伊藤大海投手」に殺到した誹謗中傷の嵐…野球ファンからは「このままでは侍ジャパン入りを辞退する選手が続出してしまう」と悲鳴も】からの続き──。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表は3月15日、準々決勝でベネズエラに敗北。SNSでは敗戦投手となった伊藤大海に誹謗中傷が殺到した。他にも不振だった複数の打者が“攻撃”の対象に選ばれた。(全3回の第2回)

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 伊藤は3月17日にエスコンフィールドで報道陣の取材に応じ、「(誹謗中傷の対象が)僕でよかったかなとは思います」と他の選手を庇う姿勢を見せた。

伊藤大海投手

 打者として誹謗中傷の対象となった近藤健介は3月16日に自身のInstagramを更新。「ファンの皆さんの期待に応えられず申し訳ありませんでした」と謝罪した。その上で、SNS上での罵詈雑言について「その言葉に叱咤があるのかどうかは、選手自身が一番分かります」と自重を呼びかけた。

 さらに伊藤が所属する日ハムの新庄剛志監督は記者団に「もう5000%開幕投手です」と断言。続けて「(伊藤は)弱い人間じゃない。ああいう経験をして、さらに強くなるタイプなので。僕と伊藤くんはこの数年間で精神的に強くなっている」と全面的にバックアップする姿勢を明確にした。

 それにしても、これほどまでにネット上の誹謗中傷が激化したのはなぜなのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「基本的に炎上と誹謗中傷は同じ状態を指します」と言う。

 現象を客観的に捉えると炎上と表現され、名誉毀損などの被害を重視すると誹謗中傷が使われるというわけだ。

誹謗中傷でストレスを発散

「誹謗中傷を投稿する人の年齢や性別、社会的地位などはバラバラで、共通しているのは『現状に強い不満を持ち、ストレスや鬱屈を晴らそうと誹謗中傷を投稿する』という点です。攻撃の対象に選ばれるのは『普段は大活躍しているが、大舞台で成功を収められなかった有名人』。このためパ・リーグを代表する伊藤大海投手や近藤健介選手に誹謗中傷が殺到したわけです。プロ野球の巨人・阪神戦よりWBCで誹謗中傷が桁外れに増加するのは大舞台だからですし、国際試合なのでナショナリズムが高揚されます。『あいつらは日本の恥を世界にさらした』と誹謗中傷を正当化しやすいわけです」(同・井上氏)

 常識ある人間にとっては理解に苦しむ行動であるのは言うまでもない。そのためSNS上では「選手の気持ちを考えろ」、「今後も誹謗中傷が続くと、メンタル面の不安から辞退する選手が増える」と強い懸念を示す投稿も多い。

 ところが井上氏によると、こうした「良識ある投稿・忠告」は逆効果となる可能性があるという。

「大きな誹謗中傷が発生した場合、詳細を調べると多くの“小炎上”が発生していることが分かります。例えば“にわかファン”に対する攻撃です。今回のWBCでも『Netflixで初めてWBCを見たけれど面白い』という投稿に対し、『にわかは黙っていろ』という誹謗中傷が殺到しました。同じように『誹謗中傷は選手を傷つけるからよくない』という投稿に、『野球選手のメンタルは鋼鉄製だから平気だ』と反論が殺到して小炎上が起きました。そして、こうした屁理屈は以前からネット上に投稿されていたのです」

解決策は無視か賠償請求

 選手のメンタル面を心配するのは文字通りの正論だろう。ところが誹謗中傷を投稿する人間には響かないというわけだ。聞く耳を持たないどころか、居直って投稿量を増やす可能性すらあるという。

 伊藤を擁護して男気を見せた新庄監督の発言も逆効果になる可能性がある──井上氏は、そう指摘する。

「新庄監督が伊藤投手を開幕投手に指名し、『弱い人間じゃない』と力強いメッセージを送った気持ちは充分に理解できます。野球ファンにとっても伊藤投手にとっても嬉しい言葉だったでしょう。しかしながら、SNSで『野球選手のメンタルは強い。どれだけ誹謗中傷しても大丈夫』とうそぶくネットユーザーに太鼓判を押してしまう心配があります。昔から『無視するにしかず』と言います。ネット上の誹謗中傷には完全に無視するか、情報開示請求を実施して法的措置で投稿者を徹底的に叩きつぶすか、どちらかしかないのです」

 野球には良くも悪くも昭和の時代から“ヤジの伝統”が存在した。ところが近年、誹謗中傷の攻撃はありとあらゆるスポーツに及んでいるという。

 第3回【「サッカーW杯に出場する代表選手はネット史上最悪の罵詈雑言に晒されるかもしれない」と専門家も懸念…「WBC」「冬季五輪」で選手に批判が殺到した異常事態の内幕】では、良識を失った人々の誹謗中傷は今後、サッカーW杯や大谷翔平をターゲットにする可能性について詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部