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身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア・ハートフル訪問看護ステーション中目黒」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。自らの経験を元に、介護や看護で困っている方への質問・疑問に答えてもらうのがこの連載です。第29回目は、「もしかして更年期?『疲れ』や『違和感』を自覚するためのサインとは」についてです。(構成:野辺五月)

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前回「『介護の話なんて絶対いや!』と相談すら拒否する頑固な親。心の扉を開く『3つの鍵』とは?」はこちら

「思考の癖が変わる」こと自体が、更年期特有のサイン

Q:年度末の忙しさに、心が追いつきません。気合で乗り切れないのは、更年期が拍車をかけているからでしょうか。

2月は日照時間も少なく、そもそも鬱々とした気分に陥りやすい時期だと言われています。加えて年度末は、いわば「外野」が騒がしくなるシーズンの到来です。職場での組織改編や決算に伴う多忙さに加え、プライベートでも子どもの卒業・進学の手続き、さらには高齢の親の体調不良によるサポートなど、自分ではコントロールできない「外野の用事」が重なるのもこの時期です。さまざまなことに「外側から追い込まれる」環境になり、メンタルを壊しやすいのも当然なのです。

特に更年期とはある日突然始まるものではなく、いつの間にか始まってしまうもの。

ご自身でも「最近、なんだか以前の自分と違う」「おかしいな」と、戸惑いの中で不調だけが表れ、「もしかしたら更年期障害?」と思う方も多いものです。ここで知っておいていただきたいのは、「思考の癖が変わる」こと自体が、更年期特有のサインであるということ。

今までは「気合」という武器で荒波を乗り越えてきた方も、減少していくホルモン量にだけは勝てません。根性や努力で無理を通そうとすると、その刃は自分自身に向いてしまいます。

ネットサーフィンなどで不安材料を集めがちになるケースも多いので、まずは一旦立ち止まり、ご自身の「心の言葉」と「体の声」を確認してみましょう。

今回は、以下の3段階のリストでチェックしてみてください。

第1段階:【心の黄色信号】思考の癖が「自責」に傾く

こんな心当たりはありませんか?

●普段なら気にならないような、些細なミスや忘れ物にひどく動揺する
●タイミングの悪さなど、不可抗力なことまで「自分のせいだ」と思う
●「皆はできているのに私は……」と周囲と比べて卑屈になる
●誰かの何気ない一言を、「私のことでは?」と深読みして不安になる

周囲と比較して自分をマイナスに捉えてしまうことは、誰にでもあるものです。ただ、頻繁に「自責の言葉」が口をついて出るようになったら、それは心が発している黄色信号です。真面目な方ほど、思考が極端な「自責」へと振れてしまいがちになります。

「休むのは自分の怠慢だ」と自分を責める言葉が頭をよぎり始めたら、それは性格の問題ではなく、脳からの休止命令が届いている証拠です。


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【なぜ「性格のせい」だと思い込んでしまうのか】

ここで多くの女性が陥る罠があります。それは、こうしたメンタルの揺らぎを「自分の弱さ」にすり替えてしまうことです。しかし、エストロゲンの減少は感情を安定させる脳内物質「セロトニン」の不足を招きます。

セロトニンは別名「幸せホルモン」。これが不足すると、普段なら笑って流せることに傷ついたり、未来を過剰に悲観したりします。あなたが自分を責めているその思考自体、実は脳という精密機器の「部品不足」によるエラーに過ぎません。車のガソリンが切れているのに、「走れないのは根性がないからだ」と車体を叩いても意味がないのと同じなのです。

第2段階:【行動の黄色信号】「いつもの私」ができなくなる

ネガティブな思考が行動にまで表れ始めたら、一度立ち止まるべきタイミングです。

●ため息が多くなった
●好きだったはずの趣味が「面倒くさい」と感じる
●以前は早かった返信が遅くなる
●LINEやメールの通知を見るだけで、だるさや拒否感がある


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無理にテンションを上げる必要はありません。「ああ、今は落ち込んでいる時期なんだな」と、自分の現状をそのまま認めてあげてください。

ここで私の提案は、「スマホを置く」代わりに、脳を物理的に休ませる習慣を持つことです。スマホから流れてくる膨大な情報は、疲弊した脳にとって「過食」と同じです。情報を遮断した後は、ぜひ以下のことを試してみてください。

●「5分間」だけ目を閉じる:視覚情報をゼロにするだけで、脳の疲労回復速度は劇的に上がります。トイレの個室で目を閉じるだけでも十分な「脳の急速充電」になります。

●「席を外して」小さなストレッチを:腕を回したりアキレス腱を伸ばしたりするだけでも、滞っていた血流とともに「自責のループ」が物理的に断ち切られます。

第3段階:【体の黄色信号】「気合」で誤魔化せない不調

今は「頑張りすぎてはいけない」という体からのSOSが出ています。

●朝起きても疲れが抜けていない、よく眠れた気がしない
●慢性的、あるいは断続的に頭痛や肩こりがある
●胃腸の調子がずっと優れない、寝付きが悪く休まらない
●甘いものやカフェインを、過剰に欲してしまう


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【更年期は「人生の棚卸し」のチャンス】

更年期は英語で「The Change of Life」。文字通り人生の転換期です。これまでのあなたは、周囲の期待に応え、家族や仕事のために自分を後回しにして走り続けてきたのではないでしょうか。

無理が利かなくなるということは、裏を返せば「本当に大切なことだけを選び取る力」を養う時期だということです。「以前のように動けない自分」を嘆くのではなく、「これからはこのペースで、心地よく生きていくんだ」という新しい自分と契約を結び直す。今の不調は、その自由を手に入れるための脱皮のようなプロセスなのです。

「自覚」さえできれば、解決への一歩です

順を追ってリスト化してみましたが、いかがでしょうか。当てはまるものが多かった方へ。あなたは今、とても疲れています。そして、その疲れは決して悪いことでも、あなたの責任でもありません。

もしこうした症状が2週間以上続いているようなら、一度医療機関に相談することをお勧めしますが、どの段階であっても「自覚」さえできれば大丈夫です。次にすべきことは、たった3つだけ。

1.生活を「一段階」緩めましょう:普段の「6割」でよしとするだけで、緊張は随分と和らぎます。

2.「やらないこと」を1つ決めましょう:全てをこなそうとせず、あえて1つやめる決断を。

3.物理的に休みましょう:睡眠と栄養をとる。それができたら、自分を褒めてあげてください。

「更年期障害かも?」とネットの海を漂って不安を募らせる前に、まずはスマホを置いて、この小さなステップから始めてみませんか。