医師の資格も持ち、科学的探究心の強い永田さんは、「シラス(ウナギの稚魚)が細ってきていて…」という知り合いの漁協関係者の相談をきっかけに、シラスの研究に着手。シラス漁が盛んな沖永良部(おきのえらぶ)島を拠点に、約10年にわたって研究を続けてきた。

 ウナギの稚魚はシラスだが、そのシラスになる前に、〝レプトセファルス〟という仔魚の段階がある。

「ええ、レプトセファルスから半年経ってシラスウナギになり、10か月位経つと、食べられるウナギになります」

 仔魚のレプトセファルスから、シラスに生育するまでの生存率は非常に低く、これをいかに高めるかが研究の重要項目だった。

「卵を孵化させ、レプトセファルスにして、それをシラスに育てていく。わたしたちの開発した養殖の技術では、この段階の生存率は50%から60%という高いものです」と永田さん。

 永田さんはこの10年間に約10億円の研究資金を投じて、このシラス養殖技術をつくりあげた。

 ウナギが成魚になるまでには、他の魚に喰われてしまうなど多くの試練がある。「ウナギの気持ちになって、研究してきました」と語る永田さんの笑顔がすばらしい。


精神文化を今一度

「日本の精神文化の深さ。これを今の世代は学んでこなかったということですよ。でも、若い人たちの間で、今また勉強したいという声も出始めています。で、わたしたちがやろうとしているのは、寺子屋教育と大学改革なんです」

 こう語るのは、『一般社団法人世界のための日本のこころセンター』代表理事の土居征夫さん。

 明治5年(1872年)に『学制領布』が出され、明治国家の学制改革が進められた。それまで、日本全国に約2万カ所あったという寺子屋教育は廃止された。

「近代化を急ぐ明治新政府が科学技術を導入しながら、そのために行った教育改革も分かりますが、寺子屋教育がなくなった影響は大きい」と土居さん。

 日本は江戸期でも、心学の石田梅岩の私塾や寺子屋が武士階級も含めて、庶民の教育の場としての役割を果たしてきた。

「私塾の先に藩校もあるんですが、寺子屋教育には徳育というか、精神教育が入っていた。精神教育も、上から目線で教えるのではなく、子供たちが気づく機会があったんです。それで親も参加し、地域社会も参加している。先生がいて、本当に子供たちは社会の中で学ぶと。単に、先生が教科書で教え込む世界ではなかったんですよ」

 深い精神が忘れられて、次に育ってきたリーダーたちが、「頭でっかちになってしまった。特に昭和以降はですね」と土居さん。

 環境激変下をどう生き抜くか?

「知識とか論理ではなくて、人間性、徳育、そして直感、感性、情緒など統合智が必要です。そうでなければイノベーションも生まれない」と土居さんは語る。

 生き甲斐、働き甲斐を含めて、「人」という問題にどう向き合うかというテーマである。