〈京都・女子大生タリウム殺人事件〉逮捕された男は「舞妓ビジネス」を手掛けるやり手経営者。「一族が1億円でお茶屋を買い取った」「妻帯者で子どもを可愛がっていたのに…」被害女子大生との接点も判明!

「舞妓遊びを懐石料理と共に」こんなキャッチコピーで京都の舞妓遊びをプロデュースしていた花街の“顔役”が女子大生を毒殺した疑いが強まった。大阪府警捜査1課は3月3日、京都市左京区の不動産賃貸業、宮本一希容疑者(37)を殺人容疑で逮捕した。

タリウム中毒による急性呼吸窮迫症候群が死因

大阪府警捜査1課は3月3日、立命館大3年生だった浜野日菜子さん(当時21歳)に劇物のタリウムを投与して死に至らしめたとして、京都市左京区の不動産賃貸業、宮本一希容疑者(37)を殺人容疑で逮捕した。浜野さんは宮本容疑者が副業で経営しているイベント企画会社でアルバイトスタッフとして働いていた。宮本容疑者は容疑について黙秘しており、府警はタリウムの入手経路や動機などの捜査を進めている。

宮本容疑者は昨年10月12日午前、同市北区のマンションの浜野さんの自室で犯行に及んだとみられ、体調の急変した浜野さんは救急搬送された大阪府内の病院で3日後の同15日に死亡した。症状の推移などから不審に思った医師の通報を受けた府警が司法解剖したところ、尿などからタリウムを検出。タリウム中毒による急性呼吸窮迫症候群が死因と断定し、捜査を続けていた。

宮本容疑者(本人フェイスブックより)

調べによると二人は昨年10月11日に京都市内の飲食店で食事をした後、浜野さん宅に移動して飲酒を続けており、任意聴取の段階では宮本容疑者は「一緒に酒を飲んでいたら浜野さんが急に咳き込み始めたので看病していた。朝になっても症状が改善しないので彼女の母親に連絡した」と説明していた。

タリウムは殺鼠剤などに使用される重金属。常温では非常に柔らかい固体で毒性が強く、硫酸タリウムや酢酸タリウムなど一部の化合物は劇物指定され、18歳未満への販売制限がある。成人の致死量は約1グラムで、過去にもタリウムを使った事件が起きている。

2015年、別の殺人事件で逮捕されていた名古屋大1年生の女子学生(当時19歳)が高校時代、同級生ら2人に硝酸タリウム入りの飲み物を飲ませて中毒にさせていたことがわかり、殺人未遂罪で逮捕された。女子学生は合わせて6つの罪に問われ、19年に無期懲役が確定。また、2005年には静岡県伊豆国市の女子高校生(当時16歳)が母親にタリウムを飲ませて殺そうとしたとして殺人未遂容疑で逮捕されている。

殺害された浜野さんの自宅

宮本容疑者は東京の大手企業で勤めた後、京都に里帰りし親族の事業を継いだ。不動産業の傍ら2020年に観光客向けのイベント企画などを目的とした会社を設立。京都五花街の一つ、宮川町の置屋(お茶屋)を親族と共に買い取り、京都市中京区に料亭を開業、芸舞妓のお座敷付きの「舞妓ディナー」などの事業を始めた。

宮川町には宿泊施設も構えており、舞妓ショーや舞妓ツアーなどのイベントも手がけてきた。被害者の浜野さんは大阪府出身で、立命館大進学後に一人暮らしを始め、宮川容疑者が手掛ける会社でアルバイトをするようになったという。

外国人のお客さん相手に板前や舞妓を呼んだりしていた

宮本容疑者が「舞妓ビジネス」の拠点として選んだ宮川町とはどんなところなのか。京都には北野天満宮近くにあり最も古い「上七軒」、八坂神社門前で夏目漱石ら多くの文豪にも愛された「祇園甲部」、明治時代に祇園甲部から独立した「祇園東」、鴨川の西岸に沿った飲食店などで栄える「先斗町」、清水寺や三十三間堂などの名刹に近い「宮川町」の五つの花街があり、それぞれの花街が芸妓・舞妓の晴れ舞台である舞踊公演「をどり」を毎年開催している。

宮川町は五花街の中では最も南に位置し、芸舞妓の数は祇園甲部に次ぐ規模を誇り、毎年4月に開催する「京おどり」も人気を集めてきた。

ピースする宮本容疑者

宮本容疑者が拠点としている置屋の近隣店主はこう語る。

「社長は一希だが、60代くらいの親戚がお茶屋を営業していた。自身が手掛けるゲストハウスの外国人のお客さん相手に板前を呼んだり、舞妓を呼んだりしていたみたいですよ。お茶屋自体は1億円で買い取ったと評判なのに、月に2~3日しか営業しないんで相当なお金持ち一族なんだろうなとは思っていました」

宮本容疑者の自宅は、京都市左京区の昔ながらの趣を残す住宅街にあるが、中でも宮本家は威容な佇まいの大邸宅だ。敷地の中には一軒家が3棟あり、黒いベンツの停まった家が宮本容疑者の自宅とみられる。

近くの住人はこう訝しんだ。

「私の知る限りは女性が3人いて、一希は3年ほど前まで妻と娘と実家暮らし、妹夫婦も同居していました。母親はとても上品で、若いお二人(妻と妹)は芸能人に近いぐらいの美人という雰囲気です。お父さんは70代くらいでケーブルTV関連の仕事の経営者だと聞きました」

宮本容疑者の友人はこう証言する。

「一希くんは子どもをとても可愛がっていました。夜に友人と食事に出ているときも『子どもが寝る前に早く帰りたい』といっていたし『お風呂もいれてあげたい』ともいっていた。奥様とも仲がよさそうだった。何でこんなことがおきてしまったのか…」

だが、こんな証言をする住民もいた。

宮本容疑者の自宅

「正直とっつきづらい方たちです。あの家から出てくる人で挨拶をしてくれるのは容疑者の妹のご主人と思われる中年男性だけです。みなさん何のお仕事をされているのかもわかりませんが、その男性も1週間ごとに白と黒の2台のベンツを乗り分けているみたいだし、スケールの違う金持ちだという事はわかります」

京都が誇る文化を世界に発信するはずが、女子大生殺人の容疑者としてアピールしてしまった舞妓プロデューサー。事件の全容解明が待たれる。

宮本容疑者が経営していたお茶屋

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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班