夜空がどんどん明るくなって星の可視性が世界的に急速に低下していることが明らかに

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2023年1月に科学誌のScienceで発表された最新の研究により、光害の影響により目視で確認可能な夜空の星の数は20年足らずで半分以下に減少することが明らかになりました。

Citizen scientists report global rapid reductions in the visibility of stars from 2011 to 2022 | Science

https://www.science.org/doi/10.1126/science.abq7781

Star visibility eroding rapidly as night sky gets brighter: study

https://phys.org/news/2023-01-star-visibility-eroding-rapidly-night.html

人工光による地球規模の空の明るさの変化を研究するため、ルール大学ボーフムの地理学研究所で働くジオインフォマティクスの研究者であるクリストファー・キーバ氏らの研究チームが、アメリカ国立光学赤外線天文学研究所が運営する「Globe at Night」というプロジェクトの参加者約5万1000人に星図を渡し、実際の夜空と星図を比較するよう求めました。この調査は2011年から2022年までの12年間にわたって行われています。

レポートを分析した結果、被験者は夜空に見える星の数が減少していると報告。被験者の報告をベースに場所ごとに「空が年間でどの程度明るくなっているか」を推計した結果、場所平均で年間9.6%ずつ空が明るくなっていることが判明しました。このペースで空が明るくなっていくと、わずか18年で夜空に見える星の数は250個から100個にまで減少するそうです。



Globe at Nightプロジェクトに参加した被験者のほとんどがヨーロッパとアメリカ在住ですが、キーバ氏はウルグアイ、南アフリカ、日本からも多くの参加者があったとしています。研究チームは「我々が測定した光害の世界的な傾向は、経済発展が最も急速に進んでいる国々の傾向を過小評価している可能性が高いです。なぜなら、そういった国々では夜空の変化率が最も高いためです」と述べ、発展途上国では研究チームの弾き出した数値よりも激しい変化が起こっている可能性を示唆しています。

研究の分析期間が2011〜2022年であるため、科学系メディアのPhys.orgは「屋外照明が発光ダイオード(LED)に置き換えられたタイミングと一致しています」と記していますが、研究チームは「一部の研究者はLEDの影響を示唆していますが、別の研究者はスペクトルの変化やLEDの高い発光効率、より明るい照明の設置、照明の長時間駆動が影響している可能性を指摘しています」と述べ、夜空が明るくなっている原因はLED以外にも考えられるとしました。

なお、同研究によると世界の照明市場におけるLEDのシェアは2011年時点ではわずか1%でしたが、2019年には47%にまで増加しています。



キーバ氏は「動物や植物を直接照らす光の影響についてはたくさんの研究があります。しかし、人工の光が夜空の明るさに与える影響を調査することは本当に困難です」と述べ、光害が夜空に見える星に与える影響についてはまだまだ未知な部分が多いと説明しました。

なお、Globe at Nightプロジェクトは公式サイト上でデータを公開しており、2023年2月にも新しいキャンペーンを実施予定です。

Globe at Night

https://globeatnight.org/