なぜ「半沢直樹」より「大和田暁」を求めてしまう視聴者が続出しているのか 香川照之の圧倒的な存在感

写真拡大 (全4枚)

大和田は続編となる原作には登場しない

半沢直樹』(TBS系)が最高のスタートを切った。世帯視聴率で第1話の22.0%に続いて、第2話では今年トップタイの22.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。さらに第1話は録画視聴を含めた総合視聴率でも33.0%を叩き出したほか、日曜夜はネット上の話題を独占するほどの勢いを見せている。

ただ放送前は、最終話が平成ナンバーワンの世帯視聴率42.2%を記録した前作から7年が過ぎ、加えてコロナ禍で3か月間延期されたことで、「旬を逸した」と不安視する声も少なくなかった。

予想以上のスタートダッシュに加え、まだまだ右肩上がりで伸びていきそうなムードを醸し出しているのはなぜなのか? その理由を考えたとき、真っ先に浮かんだのが香川照之演じる大和田暁の存在感だった。

存在感バツグンの大和田(香川照之)/photo by gettyimages

大和田がキーパーソンとなりそうな最大の理由は、「続編ドラマのベースになる原作小説に登場しない」から。2013年を振り返ると、前作がヒットして池井戸潤氏の原作小説が売れに売れた。それは前作のベースになった『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』だけでなく、続編ドラマのベースになる『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』も同様。

つまり、放送前から「多くの人々が続編ドラマの展開や結末を知っている」というハンディを背負うことになる。そこで新たな楽しみを与えられるのが、『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』には登場しない大和田。原作小説を読んだ人も、「大和田はどんな形で登場するのか?」「半沢と大和田はどう絡むのか?」という新たな興味から続編ドラマに期待しているのだ。

ここまでは池井戸氏の許諾を得た上で、原作のストーリーに違和感なく大和田を溶け込ませている制作サイドのファインプレーと言えるだろう。

毎週更新されそうな名言・迷言

そもそも原作小説に登場しない大和田を続編でも登場させたのは、視聴者サービスにほかならない。「原作小説に登場しない」=「本筋のストーリーには絡まない」ということ。それでも大和田を登場させるのは人気キャラクターだからであり、視聴者にとってはボーナスカットとなっている。また、裏を返せば「原作小説に登場しない分、脚本・演出の自由度が高く、思うように扱える」ことは制作サイドにとっての強みだ。

大和田(香川照之)の名言・迷言に期待してしまう…/photo by gettyimages

実際、大和田の登場シーンは、まさに作り手と香川の“やりたい放題”だった。

まず第1話の登場シーンは計6回。
1)前作の最終話で土下座したシーンの再現
2)中野渡頭取(北大路欣也)に取り入り、「施されたら施し返す。恩返しです」と宣言
3)部下の伊佐山泰二(市川猿之助)に料亭での会食をすっぽかされて怒る
4)役員会議で伊佐山に裏切られ、唇を噛んで立ち尽くす
5)銀行の階段で三笠副頭取(古田新太)、伊佐山とすれ違い、捨てゼリフを吐く
6)役員会議を行う部屋で半沢が動き出したことを聞き、スマホをテーブルの奥に投げる

次に第2話の登場シーンは計4回。
1)役員会議で三笠副頭取にやりくるめられ、悔しさをあらわにする
2)銀行の階段で半沢とすれ違い、長々と嫌味を連ねたあげく、「お・し・ま・い・DEATH!」と首を斬るポーズ
3)半沢を呼び出して中野渡頭取と二人で話を聞くが、宣戦布告され、怒りに震える
4)頭取室から出て「フハハハ、面白くなってきましたね」と不敵に笑う

各シーンはどれも短いのだが、思わずネット上につぶやきたくなるようなものばかり。だからこそ大和田が登場するだけでネット上は盛り上がり、「何かやってくれるのでは?」という期待感が募っていく。

事実、第1話最後にスマホをテーブルの奥に投げたシーンでは、「このあとどうするの?」というツッコミや大喜利のようなつぶやきが飛び交っていた。

そして何より驚かされたのは、大和田が視聴者を喜ばせる名言・迷言を早くも更新したこと。第1話の「恩返しです」が強烈だっただけに、「しばらくはないか」と思われていたが、第2話の「お・し・ま・い・DEATH!」で軽く更新してしまった。

今後も大和田は毎週のように名言・迷言を更新し、盛り上げてくれるのではないか。もしかしたら今年の流行語大賞に大和田の言葉が複数ランクインするかもしれない。

『日曜劇場』ファンに最も愛される香川照之

大和田が短いシーンばかりでも強烈なインパクトを残せるのは、まさに香川照之の真骨頂。まるでスローモーションのように目鼻口やシワを操る迫力十分の演技は「顔芸」などと簡単に語られがちだが、歌舞伎役者らしいけれんみを感じさせ、時に笑いを誘いながらも、シリアスな物語を邪魔することはない。その絶妙なバランス感覚とエンタメ性の高さこそ、香川の一流たるゆえんではないか。

香川ほどの俳優なら前作より出番が少なくなった続編ドラマでは、より集中力を高めてパワーを集約できるだろう。

実際に香川は、「封印された大和田をいかに解放し、いかに命を吹き込むか、持てる精魂を懸命に尽くしたい」と決意表明し、前作を超えるパワーで大和田を演じている。また、従弟の市川猿之助と演技を微妙にシンクロさせるなど、遊び心を感じさせるシーンも目立つ。

大和田(香川照之)が出るだけでうれしい/photo by gettyimages

そんな大和田と香川の登場を心待ちにしている人は多く、すでに半沢(堺)以上の人気があるのかもしれない。ネット上には「一週間待ちきれない」「常に大和田を待っている自分がいる」などの声があがり、とりわけ半沢と向き合うシーンにワクワクが止まらない様子がうかがえる。その意味で大和田(香川)は、本筋の悪役は伊佐山(猿之助)に任せて、むしろ視聴者に癒しを与えるような存在になっているのではないか。

振り返ると、香川は2013年の『半沢直樹』以降、『日曜劇場』に出っ放し。2014年に『ルーズヴェルト・ゲーム』、2015年に『流星ワゴン』、2016年に『99.9 -刑事専門弁護士 -』、2017年に『小さな巨人』、2018年に再び『99.9 -刑事専門弁護士-』、2019年に『集団左遷!!』と毎年『日曜劇場』に出演し、視聴者を楽しませ続けてきた。

最も『日曜劇場』に貢献してきた俳優であり、最も『日曜劇場』のファンに愛されている俳優と言えるだけに、「香川が出るだけでうれしい」という人がいるのは当然かもしれない。

今さらその演技力を語る必要性はなさそうだが、飽きられずに求められ続けるのは、すでに香川を溺愛している人が多いから。Twitterで2週連続「#半沢直樹」が世界トレンド1位にランクインしたのは、作品の充実ぶりはもちろんだが、大和田の人気あってのものだろう。

次回予告にも大和田の顔がたっぷり

もう1つ制作サイドの大和田に対する期待感が現れていたのは、次回予告の映像。

大和田は本筋に絡むキャラクターではないにもかかわらず、第2話の予告では3カット、第3話の予告では2カット、しっかりその姿を映し出していた。これは主人公の半沢に次ぐ多さであり、当面の敵である伊佐山や三笠副頭取よりも優先されている。

さらに、第3話の目玉である人気キャラクターの黒崎駿一(片岡愛之助)や初登場の高坂圭(吉沢亮)と同レベルの扱いであることも特筆すべきポイント。制作サイドは視聴者の期待に応えた上で視聴率を獲得するために、いい意味で大和田に頼っているのだ。

次回予告もやっぱり大和田(香川照之)/photo by gettyimages

ちなみにその黒崎も大和田と同じ原作小説に登場しない特別な存在。悪役ながら大和田に次ぐファンの多さを誇るだけに、さらなる盛り上がりが期待できるだろう。やはり今回の続編を成功させるためには半沢の雄姿だけでなく、大和田や黒崎の存在は欠かせない。その人気が半沢に匹敵するほど、ネット上の盛り上がりは増していくはずだ。