月の重力は地球に影響を及ぼし、潮の満ち引きを起こすことはよく知られています。さらに「月は人間の精神にも大きな影響を与える」という主張もあり、「満月になると犯罪の発生率が高くなる」という俗説を唱える人もいます。果たして月の満ち欠けと犯罪発生数は本当に関連しているのか、ニューヨーク大学マロン都市管理研究所の研究チームが調査の結果を発表しています。

The relationship between calls for service and phase of the moon

(PDFファイル)http://betagov.org/completed-trials/Mexico-Lunar.pdf

It's better light, not worse behaviour, that explains crimes on a full Moon

https://theconversation.com/its-better-light-not-worse-behaviour-that-explains-crimes-on-a-full-moon-101524

Does crime increase when the moon is full? | EurekAlert! Science News

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-10/nyu-dci102919.php

月と犯罪の関係についての研究はこれまでにも発表されています。たとえば、1985年に行われた分析では、それまでに発表された30件以上の論文を調査し、「月の満ち欠けによって人の行動がおかしくなると推測するのは適切ではない」と論じました。また、2009年に発表された研究では、1999年から2005年に発表された研究では、1999年から2005年までにドイツで発生した2万3000件以上の犯罪発生率と月の満ち欠けを照らし合わせていますが、相関関係は見つからなかったとのこと。

しかし、2017年に報告された研究は、「月と犯罪発生率に関係がある」と主張しています。フロリダ国際大学の犯罪法学者であるリサ・ストルツェンバーグ氏らは、2014年にアメリカの13州とコロンビア特別区で発生した犯罪を「屋外で行われたもの」と「屋内で行われたもの」に分け、それぞれのデータを月の満ち欠けと照合しました。その結果、「屋内で行われた犯罪と月の満ち欠けとの関連は認められなかった」とする一方で、「月が満ちるほど屋外の犯罪行為が増える傾向があった」とフロリダ国際大学の研究チームは論じました。



こうした研究もあり、「月の光には犯罪者を増やす効果がある」という俗説がまことしやかにささやかれるようになりました。政府との共同研究プロジェクトに関わるマロン都市管理研究所の研究チーム「BetaGov」は、カリフォルニア州バレホ市の警察官が「満月の日は犯罪の発生件数が増える」と主張する新聞記事を見て、月の満ち欠けと犯罪発生率に関連があるのかを、警察による協力のもとで検証することにしました。

研究チームはまず、バレホ市で2014年1月から2018年5月までに起こった犯罪データを警察から取り寄せ、月の満ち欠けと照らし合わせました。すると、犯罪発生率と満月の間に関連性がないことが判明。これによって少なくともカリフォルニア州バレホ市では、満月になったからといって人々が犯罪に走ることはないことがわかりました。

さらに研究チームは、カナダのオンタリオ州バリー市やメキシコのグアナファト州イラプアト市の警察と連携し、同じように月の満ち欠けと犯罪発生率の間に関係があるかどうかを調査しましたが、いずれも有意な関連性は見いだされなかったとのこと。



マロン都市管理研究所のアンジェラ・ホーケン教授は「この種の分析は面白いものですが、この調査結果は警察の人員配置やその他の法執行機関の資源配分の開発など、警察活動に実際的な影響を与えるものです」とコメントし、「びっくりするかもしれませんが、重要なのは自分の思い込みに注意し、データを使って調べることです」と述べました。