カメラスペック1億画素のスマホ!

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カメラスペック1億画素のスマホ!

■コスパ最強かと思われたが、しかし!?


Mi Note 10(Xiaomi/5万2800円+税) ディスプレイサイズは6.4インチ。カメラレンズは背面にマクロ・超広角・広角・ポートレート・望遠の5つ搭載。望遠は10倍のハイブリットズームから50倍のデジタルズームまで対応!

昨年12月9日。ここ数ヵ月、日本進出の噂が絶えなかった中国のスマホメーカー、シャオミが日本進出を正式に発表した。投入するスマホ第1弾となるのが、5眼レンズ搭載で1億800万画素というチートなカメラ性能を持った「Mi Note 10」シリーズだ。

シャオミの発表会を取材し、この端末もチェック済みというITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さん。シャオミは日本でも十分やっていけますか?

法林 キャリアの分離販売がスタートして、スマホの売れ筋は、キャリアが推している3万円台のミドルクラス端末。そして「iPhone 8」に代表される5万円台の端末です。

それを考慮すると、Mi Note 10の5万2800円+税という価格は、一般的なユーザーにアピールするにはいい価格帯です。事実、テレビやネットメディアでもこの価格帯を前面に出して報道されていました。

――では、価格と同じぐらい大きく報道されていたカメラ性能はどうでしょうか?

法林 Mi Note 10のベースとなっているのは、中国で販売される「小米CC9 Pro」という端末です。これは暗闇での撮影能力をウリにした端末ですが、一部で夜景を撮影すると、部分的に画像が白トビするという指摘もありました。

発表会ではそこまでチェックできず、Mi Note 10ではどのように改善できているのかが気になります。あと気になったのは価格の発表の仕方です。

――発表会でMi Note 10の価格を発表した瞬間に会場から歓声が湧き上がるほどインパクトがあったと思いますけど......。

法林 価格は他メーカーの端末と比較して発表されました。「iPhone 11 Pro Max」(11万9800円+税)や「Galaxy Note 10+」(税込12万1176円、機種変更ドコモ価格)と比較していましたが、これらの端末とMi Note 10では処理速度部分の性能差がありすぎ、価格が半分以下なのは当然です。

しかし、まるで同じクラスの端末であるかのように価格比較を行なっていました。近年、このようにあからさまな価格比較をやるメーカーはないので、IT系の取材陣には悪い意味で衝撃でしたね。

――そのほかに気になった点はありますか?

法林 端末の販売方法です。通常はキャリアやMVNOなどからも販売しますが、Mi Note 10はアマゾンのみでの販売になります。これは、まだメーカーとして、日本のキャリアやMVNOがお取引できるレベルにないということです。事実、日本市場で必須といえるSuicaに対応したFeliCa機能や防水機能もありません。

価格的には一般的なユーザーにアピールできましたが、細かい性能や販売方法などは"ガジェット好き"向けの端末になります。ちょっと普通のユーザーが購入するにはハードルが高いですね。

――発表会は大々的に開催されましたが、見切り発車的な部分が多いと?

法林 「日本でも商品展開をしている!」ということがブランドとしてウリになる中国、そしてシャオミが強いインドや東南アジアの株主へ向けたアピール的な部分が強い印象でしたね。

■実はライバルはユニクロと無印!

一方、中国のIT事情に詳しいジャーナリストの高口康太さんは、今回のシャオミの日本参入をどう見たのか?

高口 中国でのシャオミはデザイン性とカメラ性能が高く若者に人気のメーカーです。ただ、2015年をピークに中国ではスマホの売り上げが落ちています。シャオミの創業者である雷軍(レイジュン)は「スマホでの利益率を5%以下」にすると発表しており、スマホで稼ぐつもりはまったくありません。原価で配るようなものですね(笑)。

――それなのに日本参入とか、シャオミ正気かよ!

高口 現在シャオミの収益の中心になっているのがゲームと広告、動画・音楽配信。そして家電から日用品、スマートバンドなどのガジェットの販売になります。日本参入でも、炊飯器やスーツケースを販売します。

シャオミの炊飯器は中国では人気が高く、シリーズの開発には元・三洋電機で炊飯器開発のレジェンドと呼ばれた内藤毅氏が関わっています。この商品ラインナップは、スマホ以上に評価できます。

――実際に中国ではシャオミの家電やガジェットはどのように販売されているのか?

高口 シャオミは小売店にも卸していますが、多くは自社のECと「小米之家」と呼ばれる自社運営の実店舗で販売されています。北京や上海など大都市の巨大ショッピングモールには、「ユニクロ」や「無印良品」と並び、ほぼ必ず小米之家もあります。


中国大都市の巨大ショッピングモールではユニクロや無印良品と並び出店される小米之家

ここではスマホはもちろん、家電や各種ケーブルに充電器、さらには電動キックボードからスニーカーまで販売されています。店員の接客、ショップの雰囲気など日本ブランドをよく研究しているイメージですね。それこそ今の中国でシャオミのライバルは、ユニクロや無印良品なのです。


店内ではスマホから電動スクーター、さらに知育玩具まで自社ブランドで販売

――確かに! 中国のシャオミのECショップをのぞくと、無印良品的な日用グッズからファッションも大充実。

高口 ファッション系だと、PCを収納できるバックパックは日本人にも人気があります。


近年はスニーカーやリュックなどファッション系も充実し、スマホと同様に若者からの人気が高い

――でも、バックパックなどはユニクロや無印でもよくないですか。あえて中国人がシャオミを選ぶメリットは?

高口 安くてそこそこ品質が良いこと。あとガジェットに強いことです。今回日本でも発売されるスマートバンド「Mi Smart Band 4」やモバイルバッテリー「Miパワーバンク3」(1899円+税)などは、デザイン性とコスパを両立させた製品で世界的にヒットしています。

また、各種ケーブルや充電器、IoT家電などは白を基調とした統一デザインで、誰でも満足のできるスペックと価格で販売されます。

そして店舗ではユニクロや無印のような親切丁寧な接客で、ファッション系から小物もそろう。これも中国で選ばれる理由です。


Mi Smart Band 4(Xiaomi/3490円+税) 世界で最も売れているスマートバンド。ディスプレイはフルカラーで、メール・LINE、天気などのチェックが可能。1回の充電で最大20日間稼働するバッテリー性能は驚異的すぎ!

――ケーブルや充電器などデザインはオリジナルですが、Appleや無印製品と言われても気づかない雰囲気。でも、お値段は半額以下って、これは人気なのも納得です。

高口 日本で販売される炊飯器もスマホから操作ができ、これ以外にも監視カメラやスマートロックなどのIoT家電が充実しています。このあたりは、日本で普及が遅れるIoT家電の入門用として需要は高いでしょう。

――それこそシャオミは日本でも直営店の小米之家を展開したほうがいいのでは?

高口 9日の発表会はかなりドタバタしており準備不足という印象で、今後の戦略もまだ何も決まっていないのでしょう。ただ、中国のように"ガジェット重視の無印良品"的な店舗は日本にはありませんから、こちらのほうがスマホよりヒットするんじゃないかと思っています。

――スマホに話を戻しましょう。今後、シャオミが日本で成功するに必要な端末とは?

法林 OPPOのように3万円台で、日本市場で重視されるFeliCaと防水機能を搭載した端末です。もともとシャオミはミドルクラス端末に強いメーカーで、3万円台でコスパの高い端末を作るのは得意です。しかし、日本市場に合わせた端末作りは、ファーウェイやサムスンでも相当苦労していたので難しいでしょう。

ただ、シャオミが3万円台で日本仕様の端末を出せれば、ライバルはより安く高性能モデルを開発しますから、業界の活性化は期待できます。

――高口さん、修理などのサービス面はどうでしょうか?

高口 中国メーカーは故障した場合、効率優先で即交換になることが多いです。実店舗がないので、オンラインを通していかに交換を迅速に行なうかがポイントでしょう。このサービス部分の評価が高いと、日本でも受け入れられていくと思います。

――スマホ以上に家電が注目のシャオミ。これは無印的な店舗展開にも期待です!


自社製品以外も扱うECセレクトショップ「小米有品」も人気だ

取材・文/直井裕太