【自然吸気V10エンジンの美魔女】BMW M6 中古購入、注意すべきポイント 維持費は後回し?
V型10気筒の維持を甘く見ない方が良いtext:John Evans(ジョン・エバンス)translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
英国なら1万ポンド(140万円)を超えない価格から手に入り、自然吸気の500ps V型10気筒エンジンを、シャープなシャシーに搭載したクルマ。2005年に登場したE60型M5の魅力はいまでも色褪せないが、兄弟モデルといえるE63型M6クーペという存在もある。わずかだが、M5より速い。
4ドアサルーンが必要ならM5を選ぶべき。反面、実用性を備えた、エキゾチックな大排気量エンジンを搭載したパワフルなクーペが欲しいなら、M6こそ正解の選択肢となるだろう。
BMW M6(2代目E63型)ただし、気軽に手を出さない方が良い。うっかりハズレを引くと、財布の中身はすぐに空になる。維持費は安くはない。以前にM6の購入ガイドを手掛けた時、専門家からの意見で挙がったのは、「SMG(シーケンシャル・マニュアル・ギアボックス)の信頼性が低い」 「保証が高すぎる」 といった内容だった。
ディーラーは怖がって中古車を流通させず、下取り価格も安かったため、中古車サイトに出ているM6のクーペやコンバーチブルの半数は個人売買のもの。価格帯は1万ポンド(140万円)から2万ポンド(280万円)程度で、この手のクルマにしては魅力的な金額に見える。
だが、個人売買のオークションで安価に落札しても、その後に後悔することも少なくない。M6のメンテナンスには、オイル交換はもちろん、高性能なブレーキやタイヤの費用が求められる。故障の予防としてクラッチにフライホイール、スロットル・アクチュエーターにビッグエンド・ベアリングも新品に交換しておきたい。
通帳の残高は大丈夫だろうか。通常ならクラッチ交換などは過走行車に該当するが、M6の場合、わずか5万km程度で交換が必要になってしまう。
選ぶなら、特に際立って良い個体
BMW M6は諦めるべきなのだろうか。そう簡単に断念するのはもったいない。歴史に残る最高のエンジンが搭載されているのだ。アクセルを踏み込めば、M5よりわずかに鋭く、安定した加速が楽しめる。
車重を軽く、重心を60mm低くするために、M6のルーフはカーボンファイバー製。その他の違いも重なり車重はM5より50kgも軽量で、リアのトレッドもわずかに広い。
BMW M6(2代目E63型)ローンチコントロールで更に鋭い加速も披露できるが、クラッチとリアデファレンシャルに負担を強いてしまう。個人売買で手に入れるのなら、少なくともオーナーに1度会って、どれくらいお熱い運転が好みだったのか確認した方が良い。
電子制御のダンパー(EDC)には、3段階の硬さの設定がある。2007年にフェイスリフトを受け、ライト周りのデザインが変わり、インテリアも手直しが施された。英国市場に存在するM6の場合、クーペはカブリオレの2倍ほどの台数がある。
カブリオレのソフトトップは複雑で高品質。ボディには補強も施され開放感は素晴らしいが、クーペに匹敵する落ち着きと鋭い走りは得られない。
クーペでもカブリオレでも、完璧な整備記録が残り、装備が充実したクルマを狙って購入するべき。数ある出品車両の中でも、特に際立って良いものを。そうすれば、自然吸気V型10気筒エンジンの素晴らしい走りに、どっぷり浸ることができるはず。
不具合を起こしやすいポイントエンジン
バルブ周りからの異音がないか確認する。ターミナルクランクが故障する前に、エンジンの警告灯で教えてくれる場合もある。コンロッド・ベアリングなどの不具合を防ぐためにも、定期的なオイル交換の履歴も確認したい。
スロットルボディとアクチュエーターも確認する。調子の良いエンジンでも、1600km毎に1Lくらいのエンジンオイルは消費する。
トランスミッション
BMW M6(2代目E63型)優しく乗られていたクルマでも、クラッチは8万km程度で駄目になる。傷んでいる場合は赤い歯車の警告灯がダッシュボードに表示される。変速フィールは街中では優れないが、スピードが増すにつれて滑らかになってくる。
調子の良いSMGなら発進時はスムーズで、リバースに入れてもシフトショックは生じない。振動、ジャダーリングが出る場合、クラッチリリース・ベアリングとガイドブッシュの修理が必要。比較的安価で済むはず。
2006年に登場したSMG3は、それ以前のものと比べて信頼性は良い。リアデフからの異音や振動は通常ならない。フルード漏れも確認したい。
サスペンションとステアリング、ブレーキ
ステアリングホイールを切った時に振動が出るのは、コントロールアームが傷んでいる証拠。電子制御ダンパーの交換は高価。ダンパーは1本600ポンド(8万円)はする。
ブレーキパッドやディスクの摩耗にも注意。サイズオーバーのアルミホイールは、フェンダーを擦る場合がある。タイヤはプレミアムブランドのものが理想的。
ボディとインテリア
ヘッドライト内に水が溜まっていないか確認する。屋根からの排水口が塞がると、車内が濡れてしまう。激しい運転を繰り返すと、iコントローラーがフリーズする場合がある。
BMW M6の中古車 購入時の注意点
警告灯が点灯したら、軽視せずに確認しておく。エンジンやブレーキ、タイヤの空気圧センサー、エアバック、スタビリティコントロールなどに関連する不具合を教えてくれる。修理が重なると、恐ろしい金額が必要になることも。
BMW M6(2代目E63型)
専門家の意見を聞いてみる
ジャック・デイ(Mパワー・カーズ社)
「数多くのMシリーズのクルマを売買していますが、M6は最近目にしていません。いつショールームにあったかも記憶にないですね。多くの人を悩ませるのが、信頼性の低いSMGトランスミッションです。現代のツインクラッチ・オートマティックとは異なります」
「当時のBMW固有のもので、不具合が起きると修理にはかなりの費用が必要です。保証をつけるとしても、大きな金額が必要となるでしょう。機構が複雑という理由で、コンバーチブルにも気をつけたいところです」
「クーペのM6はサルーンのM5より速く、実用性で多少劣っていてもスタイリングは魅力的、という良い面もあります。強力な自然吸気エンジンは今では希少で、需要も高まってきています」
掘り出し物を発見
BMW M6 登録2007年 走行8万2070km 価格1万6495ポンド(230万円)
個人売買によるもので、強気な価格は交渉も可能。フェイスリフト後のモデルで、BMWディーラーによる整備記録と、延長保証も付いている。交換済みの新しいクラッチとフライホイールは、安心材料となる。
BMW M6(2代目E63型)
