アルコールが脳の記憶に影響するためアルコール中毒が生じている可能性

アルコール依存症に陥るとなかなかアルコールを絶つことは難しく、一度回復できたとしても再びアルコールに手を出してしまうという再発のリスクも非常に高いことが知られています。しかし、アルコールが神経への毒性も持つにもかかわらず、なぜ人はアルコールを再び欲するようになるのか、脳にどのような反応が起こっているのかはよくわかっていませんでした。そんな中、摂取されたアルコールによって脳の記憶の経路が影響を受けていることで中毒性が引き起こされているという研究が出されています。
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(18)30893-6
Just a few drinks can change how memories are formed | News from Brown
https://news.brown.edu/articles/2018/10/alcohol
イリノイ大学で神経科学を研究するエミリー・ペトルチェリ助教授の研究チームは、キイロショウジョウバエを使ってアルコールに対する脳の反応を調査しました。アルコール中毒の状態は人間だけに起こるものでなく、ハエにも生じることが知られています。そして、ハエの脳と人間の脳は細胞の数など大きな違いがあるものの、報酬や回避の記憶を作り出すときに出される信号の仕組みは基本的に同じであるため、アルコールに対するハエの脳の反応を研究することは、人間のアルコールへの反応を知るうえで非常に良いモデルとなるというわけです。

実験ではアルコールのありかを見つけるようハエを訓練する中で、遺伝子を選択的に無効化することでアルコールへの欲求を引き起こす要因を分析しました。その結果、ハエがアルコールを好む原因が、ドーパミン受容体(D2様受容体)の発現に関わるシグナル伝達に影響を与える「Notchたんぱく質」にあることが判明しました。なお、D2様受容体は記憶が良いものだったか悪いものだったかを決めていることが知られています。
論文の共同著者であるブラウン大学のカーラ・カウン助教授によると、今回調べられたアルコールの報酬系に関していえばシグナル伝達カスケードはドーパミン受容体遺伝子をオン・オフすることはなく、作られるたんぱく質の量を増やしも減らしもしなかったとのこと。そのかわりに、Notchたんぱく質が「最初のドミノ」として働くことで最終的にドーパミン受容体をわずかに変化させて記憶の形成方法が変わり、悪い記憶よりも良い記憶の方が保持されやすくなるのではないかとみられています。

ペトルチェリ博士らは、アルコールの摂取によって脳の記憶経路に与えられる影響が、中毒症状につながる高い依存性を引き起こしている可能性が高いと考えていますが、そのメカニズムの解明については今後の研究が待たれています。
