大和の人的補償で阪神へ移籍する尾仲祐哉【写真:荒川祐史】

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今オフも人的補償で選手が移籍、新天地で花咲けるか

 今オフも現時点で2選手がFA移籍の人的補償として他球団へと移った。阪神からFA宣言してDeNAに移籍した大和内野手。その人的補償として阪神に移籍したのはルーキーの尾仲祐哉投手だった。また、西武・野上亮磨投手の巨人へのFA移籍に伴い、高木勇人投手が西武へと移籍。巨人入団3年で新天地に移ることになった右腕は西武入団会見で明るく話しながらも、移籍通達には「いきなりだったので、びっくりしました」と戸惑いの色を隠せなかった。

 FAで移籍する選手とは異なり、人的補償となる選手たちは移籍先を選べない。当然、本人が望まない移籍もあるだろう。そんな複雑な心境を抱えつつも新天地で活躍しなければプロとして生き残れない。そこには精神的なタフさも要求される。果たして尾仲や高木勇は新たなチームで花咲けるのか。

 移籍による環境の変化は飛躍への契機となる場合もある。ここ数年を振り返っても、新天地で活躍した選手は複数いる。2011年以降で見ると、人的補償となる選手は2015年のオフを除いて毎年出ているが、その中で最も飛躍を遂げた選手は一岡竜司投手だろう。

 2011年のドラフト3位で巨人に入団した右腕は2年間で計13登板した後に大竹寛投手の人的補償として広島に移籍。1年目で開幕1軍入りを果たすとその年31試合の登板でプロ初勝利初セーブ初ホールドを含む2勝0敗2セーブ、16ホールドと大躍進した。負傷もあったが31回を投げて自責はわずか2、防御率0.58。以降のシーズンも1軍で出場し続け、今季はキャリア最多の59試合に出場し、6勝2敗1セーブ、19ホールド、防御率1.85の好成績を収めている。まだ26歳と若い一岡にとって、早い段階の移籍は結果的に奏功する形となった。

新天地で再び輝き放った選手も

 移籍後に再び輝きを放った選手もいる。一岡と同じ2013年シーズンのオフに片岡治大の人的補償となった脇谷亮太内野手もその一人で、特に移籍2年目の2015年には自身5年ぶりの100試合出場を遂げ、キャリア最高の打率.294を記録。その年のオフにFAで巨人に復帰した。またすでに引退しているが藤井秀悟投手(2011年オフ・村田修一の人的補償、巨人→DeNA)や馬原孝浩投手(2012年オフ・寺原隼人の人的補償、ソフトバンク→オリックス)、高宮和也投手(2012年オフ・平野恵一の人的補償、オリックス→阪神)らも新天地で存在感を見せたシーズンがあった。

 近年では2013年オフに相川亮二の人的補償として巨人からヤクルトに移った奥村展征内野手が2016年に1軍デビューを果たすと、今季は自己最多の44試合に出場して初安打、初打点を含む打率.239、5打点、1盗塁を記録。2016年オフに糸井嘉男の人的補償で阪神からオリックスに移ったプロ5年目の金田和之投手も34登板で防御率4.15ながら4勝1敗2ホールドと、移籍を踏み台にして頭角を現しつつある。

 人的補償に戸惑いはつきもので、時には周囲からも同情的な声が上がる。だが、その突然の通告を好機と捉え、飛躍への糧にできなければ、プロ選手として先はない。FA移籍の裏で新たな挑戦を迎えた選手たちの今後に注目したい。(Full-Count編集部)