【ライターコラムfrom松本】応募殺到! 『サッカー×AR』の新体験…松本が見出した新たな可能性
さまざまな可能性が広がるコラボレーションだった。9月16日、ザスパクサツ群馬とのホームゲーム。松本山雅FCはオフィシャルスポンサーEPSONとの共同企画で、メガネ型のAR(拡張現実)端末「MOVERIO BT-350」を使ったスタジアムツアーを初めて行った。選手の会場入りや試合開始前のハイタッチ、そして勝利後のダンス「アルプス一万尺」。選手の近くで撮影した映像がその場で再生されるほか、ロッカールーム準備の様子は360度カメラ映像で体験。Bluetooth送信端末を仕込んだギミックも新たに取り入れた。従来のバックヤードツアーに付加価値を生む要素だ。
ツアーではそれ以外にもさまざまな映像を用意して再生。これらはガイドがタブレット端末で再生の信号を飛ばすことで参加者の視界に表示されるものだった。もちろんこれだけでも、従来に比べてもより満足度の高いツアーになることは間違いないだろう。サポーターの関心も高かったようで、モニター15人の募集に対して680人の応募が殺到。幸運にも当選した30代男性は終了後、「普段は見られない場所に行けたし、そこでの臨場感をすごく味わえた。実際に選手と一緒にいるような感覚になったし、ハイタッチの映像ではつい手が出た」と興奮気味に語ってくれた。
この企画は、ボールパーク的な発想に基づいてピッチ外での満足度向上に主眼が置かれたもの。ただ、将来的に「サッカー×AR」をピッチ内に持ち込むことができれば――とも改めて感じた。そもそもサッカーは、数値的な指標をリアルタイムで把握するのが難しいスポーツ。手元の集計を除けば公式スコアシートに記載された「シュート本数」「CK本数」程度しか確固たる手がかりはない。とりわけJ2の場合はリーグでトラッキングデータを扱っていないし、Data Stadium社の集計結果がウェブ上に一般公開されるのも数日を要する。
だが、この技術が進歩して観戦者側にも提供されるようになれば状況は一変する。パス本数、ヒートマップ、走行距離、スプリント回数、果ては体温、心拍数、乳酸値……。チームの現場にとっては不都合かもしれないが、リアルタイムに集計された多彩な数値へ瞬時にアクセスできれば、観戦スタイルの幅はグッと広がるし誘客にも結び付く。地域リーグ時代から縁深いEPSONと松本山雅。AR端末を通じて新たな地平に立った両者のタッグは、無限の可能性を秘めている。
文=大枝令
