父親の「育休研修」が家庭を変える、父の育児参画が増え、母も長く働けるように

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一般社団法人EVIDENCE STUDIO

エビスタプロジェクト・東京大学への委託研究 4組織・1,200名超を対象としたランダム化比較試験(RCT)の結果

一般社団法人EVIDENCE STUDIO(エビスタ)は、社会保障領域を中心に「エビデンスで社会を良くする」をキーワードに、会員企業・自治体首長・発起人とともに議論し、テーマを絞り込んだうえで山口 慎太郎 教授(東京大学院経済学研究科)に委託研究を依頼。資金提供・参画組織の調整・研修部門の企画運営・プロジェクト全体のマネジメントを担い、日本の4組織1,200名超の男性従業員を対象とした大規模なランダム化比較試験(RCT)を実施しました。


その結果、父親が職場で受けた2時間の研修が、父親自身の育児参画だけでなく、研修を受けていない母親の労働時間の増加にもつながることが明らかになりました。




この研究でわかったこと



▪︎父親が職場で受けた2時間の研修で、週末の育児時間が1日あたり約1時間増加(16%増)。


▪︎家庭内の役割分担が変わり、研修を受けていない母親の労働時間も週3.6時間伸びた(18%増)。


▪︎効果は特に5歳以下の子どもを持つ家庭で顕著で、育児時間の増加は1日あたり2.3時間にのぼった。


▪︎研修後に育児休業制度を自ら調べた参加者の割合が16ポイント増加した。


▪︎「同僚も実は賛成している」と知らせるだけの情報提供では、認識は変わっても行動には結びつかなかった。


エビスタが果たした役割

本研究は、エビスタが課題設定から実施(研究は委託)・管理まで一貫して主導したプロジェクトです。



1. 課題設定・テーマ選定


 会員企業・自治体首長・発起人との対話を重ね、「男性の育児参画促進」を優先社会課題として特定。



2. 研究資金の提供


 東京大学への委託研究として研究費を拠出し、研究の独立性と質を担保。



3. 参画組織の調整・組成


 研究に協力する民間企業2社・地方自治体2団体を集め、連携体制を構築。



4. 研修部門の企画・運営


 NPO法人ファザーリング・ジャパンと協働し、研修プログラムを実施。



5. 全体プロジェクトマネジメント


 倫理審査・AEA RCTレジストリへの事前登録(AEARCTR-0012315)・進捗管理を一括推進。


研究の背景

日本は最大12か月の育児休業を父親に認めるなど、世界で最も手厚い制度を有しています。しかし、2023年時点で育児休業を取得した父親は約30%にとどまっています。


取得しない理由として多くの父親が「職場の雰囲気」を挙げており、制度面の整備だけでは行動変容に十分でないことが示唆されていました。一方、男性の育児・家事参画を促す職場介入の効果を大規模実験で検証した研究は、世界的にもほとんど例がありませんでした。


エビスタはこの課題に着目し、「制度ではなく職場の規範・意識に直接働きかけることで行動は変わるのか」を問いに設定。東京大学の研究チームと連携し、科学的な検証に取り組みました。


研究の方法

2023年8月~2024年3月、民間企業2社・地方自治体2団体の計4組織で1,200名超の男性従業員を対象に実験を実施。80の職場をランダムに2群に分けて研修の効果を比較しました。


研修では男性講師が育児参画とキャリアの両立について講義し、管理職には部下の育児休業取得を支援する方法も伝えました。また別途、「同僚が実は育児休業に好意的」という情報を提供する介入も行い、認識の修正が行動につながるかどうかも検証しました。


結果の詳細

⚪︎研修の効果

研修を受けた父親は週末育児時間が1日あたり約1時間増加。家庭全体で子どもと過ごす時間が増えたことも確認されました(父親の育児増加分は母親の育児時間を奪うものではなかった)。


研修を受けていない母親にも変化が現れました。週の労働時間が3.6時間増え、家事時間が減少。父親の行動変化が家庭内の役割分担の見直しにつながったと考えられます。


⚪︎情報提供だけでは行動は変わらなかった

実態には同僚の86%が「男性の育児休業取得は良いこと」と賛成しています。一方、「そう思っているだろう」と予想していた人は54%にとどまり、大多数が賛成なのに「職場では言い出しにくい」と感じていることがわかりました。




情報提供によってこのずれを修正することには成功しましたが、「今後育児休業を取りたいか」という意向や実際の行動には変化が見られませんでした。「周囲も賛成している」と知るだけでは不十分で、態度・意識そのものへの働きかけが必要です。


⚪︎政策・社会への示唆

▪︎法制度・経済支援に加え、職場の意識改革を組み合わせることが重要。たった2時間の研修でも実際の行動変容を生み出せる。


▪︎父親の育児参画による波及効果(母親の就業継続)は家庭に生じる。企業だけに任せず、公的支援の仕組みを整えることが普及のカギ。


▪︎「みんな賛成しているよ」と伝えるだけでは不十分。組織としての後押しを伴う包括的アプローチが必要。



少子化対策が急務の日本において、男性の育児参画促進は母親の就業継続を支え、子育て世帯全体の生活充実につながります。本研究は、低コストかつ実施しやすい職場研修がその有効な手段となりうることを示しました。




論文・研究情報

論文名:Workplace Norms and Paternal Involvement in Childcare


掲載誌:東京大学CREPE ディスカッションペーパー(CREPEDP-202)


著 者:Mari Tanaka, Hiroko Okudaira, Mariko Sakka, Shintaro Yamaguchi


URL:https://www.crepe.e.u-tokyo.ac.jp/results/2026/crepedp202.html


研究助成:科研費「基盤研究(A)」(JP23H00045)、一般社団法人EVIDENCE STUDIO



研究グループ

東京大学


山口 慎太郎 教授(大学院経済学研究科)


田中 万理 准教授(大学院経済学研究科)


同志社大学


奥平 寛子 准教授(ビジネス研究科)


筑波大学


目 麻里子 准教授(医学医療系)


お問い合わせ

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