ウクライナ危機と円安が多方面に影響を広げている。意外なところでは「5円玉」。原料の銅や亜鉛が値上がりし、5円玉の原価も高騰しているというのだ。このままだと、5円玉を作るための鉱物原価が、5円を超えてしまうこともありうるという。

円安も拍車

日経新聞は2022年5月22日、「銅高騰、5円玉の額面迫る、ウクライナ危機・円安で拍車、『50年後、レアメタルに』」という記事を公開した。

それによると、ウクライナ危機と円安によって円建て銅価格の高騰に拍車がかかり、一時は5円玉の材料の時価がその額面の84%になった。銅価格は4月の最高値からやや下げたが、もともと電気自動車(EV)向けなどに需要が伸びており、「5円玉の時価が額面を超える可能性は消えていない」という。

同紙によると、5円玉は銅と亜鉛の合金である「黄銅」でできている。重さ3.75グラムの60〜70%が銅なので、銅は平均して2.44グラム含有されている。

銅は世界生産の約4%がロシア産。ウクライナ危機と円安で、3月には過去最高値となった。亜鉛も最高値。

5円玉の材料原価に当てはめると銅が3.34円、亜鉛が0.86円となり、額面5円の84%に達した。銅相場が底入れした20年4月に比べて材料の時価は約2.4倍だという。

1円玉が高コスト

では、他の硬貨の原価はどのくらいなのだろうか。三菱UFJ信託銀行のウェブサイトが20年3月6日、詳しく解説している。

各種の硬貨に含まれている金属の種類や割合は公表されている。このデータを金属の市場取引価格に照らし合わせることで、1枚当たりの原料価格が推定できるという。

例えば、「1円硬貨は100%アルミニウムで作られており、重さが1gです。2018年のアルミニウムの価格は1kg当たり約291円前後です。この価格を当てはめると1円玉の原料価格は1枚当たり約0.29円となります」。

ただし、硬貨を作るには、原料費のほかに、製造コストがかかる。同行は各種硬貨の発行実績や、造幣局の年間予算をもとに硬貨の製造原価を算出。1円玉が約3.1円、5円玉は約10.1円、10円玉は約12.9円、50円玉は約12.1円、100円玉は約14.6円、500円玉は約19.9円と推計している。

つまり、1円、5円、10円はすでにコスト割れ。中でも硬貨の価値と、製造原価との乖離が最も大きいのは1円玉、ということになる。

故意に傷つけると犯罪

21年9月19日の「dmenuマネー」コラムでは、「1円硬貨」を1枚つくるコストについて、クイズ形式で問いかけている。選択肢は「約0.3円」、「約1円」、「約3円」の三つ。正解は「3円」だと明かしている。

ただし、「正式な製造コストについては公表されていません。造幣局は『国民の貨幣に対する信任の維持や、貨幣の偽造を助長する恐れがある』ことを理由にしています」と補足している。

さらに、「貨幣を実験や工作で使うことに問題はありませんが、故意に傷つけたり穴をあけたりすると、貨幣損傷等取締法違反により罪に問われてしまいます」と注意を呼び掛けている。

アルミニウムの国際価格は変動が激しい。現在は1円の原価が3円よりもアップしている可能性もありそうだ。