30億円プレーヤー誕生の陰に黒田の存在あり カーショーとの熱い友情とは
2008年に“ルーキー”として出会った黒田とカーショー
メジャーでついに「30億円プレーヤー」が誕生した。ドジャースのエース左腕クレイトン・カーショー投手(25)が、7年総額2億1500万ドル(約226億円)で契約延長に合意したのだ。平均年俸が3000万ドル(約31億5000万円)を超えたのは史上初。年平均では、あのアレックス・ロドリゲスをも上回ったことになる。
2011年、2013年と2度のサイ・ヤング賞に輝いた史上最高の左腕が誕生するまでの過程で、絶対に忘れてはいけない人物がいる。それはカーショーが心から慕うヤンキースの黒田博樹投手(38)だ。
今やメジャーを代表する投手となった2人の親密な関係は広く知られている。出会いは2008年だった。広島からドジャースに移籍した黒田と、超有望株として開幕直後にマイナーから昇格してきたカーショーは、ともにメジャーでは“ルーキー”で、キャッチボールの時にパートナーを務めるようになった。
当時、20歳だったカーショーは日本で豊富なキャリアを持つ黒田を尊敬し、黒田も若いながら類い希な才能を持つカーショーに一目を置いていた。そして、お互いに優れた人間性にも惚れ込んだ。黒田はカーショーについて「年下ですけど尊敬できるピッチャーですし、人間的にも素晴らしい。彼のルーキーと僕の1年目が重なったので、なんかすごく思い入れのある選手ですね」と話している。
試合前のキャッチボールで必ずコンビを組み、黒田がブルペンに入る直前にはカーショーが捕手役になり、力の入った投球を座って受けた。右腕の球筋を確認して調子を確認し、さらに、そこから何かを吸収しているかのようだった。そして、黒田がブルペンに入ってからは後方で投球をジッと見つめ、自分に生かせるものを探していた。
想像を遥かに上回る二人の友情
黒田はツーシームを軸とした投球スタイルに変更してメジャーでも成功を収め、カーショーもあっという間に頭角を現した。2人はドジャースで切磋琢磨しながら、メジャーでエース級の投手として確固たる地位を確立したのだ。カーショーは4年目の2011年に21勝5敗、防御率2.28、248奪三振と圧巻の成績を残して、1度目のサイ・ヤング賞を受賞。その際、ドジャースのネド・コレッティGMは「このサイ・ヤング賞には、黒田から学んだものが詰まっている」と師弟関係で結ばれるベテラン右腕にも敬意を表している。
その年のオフ、黒田はヤンキース行きを決断した。シーズン終了前から、広島への復帰も含めて移籍の噂があった右腕に対して、カーショーは残留を求めて熱烈なラブコールを送っている。その様子は、黒田の著書「決めて断つ」でも詳しく書かれている。9月26日に行われた投手ミーティングでの出来事だった。
カーショーが黒田に対して「来年も一緒にやろうよ」と語りかけると、周りから「そうだ」という声が次々と上がった。その場は我慢した黒田だったが、クラブハウスに戻ると自身のロッカーの前でこらえきれずに涙を流したという。2人の友情は、想像を遙かに上回る熱いものだ。
昨年7月31には、2人の投げ合いが初めて実現した。ともに10勝6敗。しかも、黒田の防御率はア・リーグ2位の2.51で、カーショーはナ・リーグトップの1.96と、ともに絶好調の中で実現した初対戦だった。黒田は「カーショーと投げ合うのは僕の中では避けたい部分もありました。ちょっと神様のいたずらというか、こんなことってあるんだなという感じはしました」と話し、一方のカーショーは対戦が決まってから「僕にとってのドリームマッチ」と、ゲームが待ちきれないと言った様子で話している。その一戦は2人の関係を知る全米でも大きな話題を呼んだ。
試合は期待を裏切らない壮絶な投手戦となり、黒田は7回5安打無失点で降板。一方で、カーショーも8回5安打無失点と、お互いに譲らなかった。ただ、試合は9回に3点を奪ったヤンキースが快勝。試合後、黒田はこの投げ合いをうれしそうに振り返っている。
黒田との出会いがカーショーに与えた影響
「彼も素晴らしいピッチャーですし、点を与えないピッチングをしていた。意地の張り合いというか、お互い無言のそういうピッチングだったんじゃないかと思います。(援護がなかったのは)カーショーなら仕方ないと思っていましたし、こういう展開じゃないと、なかなか勝つチャンスがないと思っていましたから。僕が常に0点に抑えるしかないかなと。結果的にお互い勝ち負けつかずにドローということで。まぁ、チームは勝ったので、それは満足していますね」
一方、試合の数日前に黒田に「グッドラック」とメールを送っていたカーショーは、試合後に右腕の投球に脱帽した様子で話した。
「(黒田のことを)尊敬をしているし、多くのことも学んだ。今夜のゲームはタフになるだろうと思っていた。アメリカンリーグのベストピッチャーに負けたのだから、仕方がないよ」
カーショーは昨季も16勝9敗で、メジャー唯一となる防御率1点台(1.83)を記録。2度目のサイ・ヤング賞を受賞している。4年連続で200イニング以上を投げ、3年連続で防御率1位の左腕に対しては、平均年俸が3000万ドルを超えたことについても「妥当」との声が多い。まだ25歳と若いことも大きいだろう。
もし黒田との出会いがなければ、どうなっていたのか。それは誰にも分からない。カーショーは元々、類い希な才能を持っていただけに、同じような成功を収めていたはずだと指摘する人もいるだろう。ただ、黒田との出会いが左腕を大きく変えたことも確かだ。黒田の存在があったからこそ、「30億円プレーヤー」が誕生した。2人の関係を振り返ると、こんな表現も大げさではないと思えてくる。

