またデザインについてだけでなく、フォーストールとほかの幹部の不和がこれまで表面化しなかったのも、フォーストールと個人的にも親しかったジョブズの存在がある意味で後ろ盾になっていたのだと考えられます。


このような背景を想像すれば、ジョブズ亡きあとのクック体制を確立するにあたって、「フォーストール外し」がそのまま「各分野の協調を促進」であるのも理解できます。

そして今回の退社の最終的な引き金になったのは、やはりあの iOS 6 マップの大失態だったとされています。リンク先 WSJ が得た「関係者証言」によれば、フォーストールは例の 新マップについての謝罪文に署名することをクックに命じられるも拒否し、代わりにクックが名前を載せたとのこと。

iOS と新マップの担当者として大失態の責を追うのは当然ではあるものの、この「署名拒否」の話がどこまで真実なのか、またどのような意味だったのかは諸説ありはっきりしていません。(たとえばフォーストールがMapのひどい出来を認識しつつ Go を出したうえに失態をあくまで認めなかったのか、あるいはあの品質のまま見切り発車する最終的な判断がフォーストール個人のものでなかったにもかかわらず、自分の名前に全責任を負わされることに抗議したのか etc)。

旧マップを捨てて自社製に切り替える方針そのものについては、位置情報(と広告)というモバイル時代で極めて重要な要素をライバルである Google に押さえられた状態から脱却するための全社的な至上課題であり、当然ながらフォーストール個人に帰することができるものでも、「iPhone 5の地図ひどいらしいね」「責任者クビになったってよw」で片付く話でもありません。

(自社製マップへの切り替え時期については、こちらもまた側聞ながら、方針としては承知していたGoogleですら、時期が予測より早かったため意表を突かれたという話がありました。iOS版の 純正「Google マップ」がなかなか出ないのも、アップルの急な動きでタイミングをずらされたため、という説もあります。開発に時間がかかっているのは、アップル対抗イベントで公開した3D表示の導入にあわせるためとも。現在は Google Earth でのみ利用可能)。

いずれにせよ、ジョブズ亡きあとのクック体制を占ううえで非常に興味深い人事であることはたしかです。ハードウェアの設計や外観だけでなくソフトまでサー・ジョニーが拘り抜くといったいどうなってしまうのか、ドキドキしながら見守りたいと思います。