70代医者夫婦が「ホームレス一歩手前」の状態に…90年代に銀行が提案した「変額保険」が生んだ悲劇

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銀行員がおすすめしているし、保険だから―そう信用しきってハンコを押した。それが自宅を追い出されるきっかけになるとも知らずに。

切実な懇願

〈私たちは、自宅を売却すると住む家がなくなります〉

K子さんは切羽詰まった思いで、三菱UFJ銀行の大澤正和頭取に手紙を書いた。入札はすでに始まり、6月3日に結果が出た。買い手が決まれば、家族の思い出が詰まった自宅は第三者の手にわたる。

〈競売を取り下げていただくよう、切にお願い申し上げます〉

頭取は、この手紙を読んでくれただろうか。

相続税対策になると言われて

都内の閑静な住宅街。かつて夫の亡き母が女手一つで切り盛りしていた医院の跡地、100坪を超える広大な敷地に立つ邸宅が、今回の舞台だ。

ここに暮らすWさん(79歳)と妻のK子さん(79歳)の悲劇は、今から35年前、旧三菱銀行から提案された「ある投資」から始まった。

「夫は当時まだ43歳。相続税対策など意識もしていませんでした。しかし、地価高騰で自宅の評価額が5億円を超えたと聞かされ、今のうちに対策をしないと大変なことになると煽られたのです。あの言葉を信じてしまったことが、悔やんでも悔やみきれません」

K子さんは、当時の後悔を吐露する。母の知人を名乗る千代田生命の外務員が持ち込んできたのは「変額保険」だった。死亡時に3億円が入る保険なら、1億3300万円の一時払いで買えるという。

「そんな大金はない」と拒むと、外務員は三菱銀行の行員を伴って現れた。自宅を担保に1億3300万円を融資するという。書類は銀行員が手際よく用意し、Wさん夫婦はハンコを押すだけだった。

「借入金を増やすことによりマイナス資産を増やせるので結果、相続税対策になる。金利だけ払っていればいい、という説明でした」(K子さん)

「銀行の人がそう言うのなら」

とはいえ、その金利だけでも毎月40万円。勤務医だった夫の給料で賄えるはずがない。

すると、銀行は「カードローンで払えばいい」といって、三菱マイカード・ビッグというカードを用意してきた。融資枠は保険料とほぼ同額の1億3000万円。借金の利息を借金で払う。しかも金利は8.1%と割高だ。

心配になったが、「変額保険の利回りは13%を下回ったことはないから大丈夫」と言われ、「銀行の人がそう言うのなら」と信じてしまった。

さらに別の安心材料もあった。万が一のために、「ダイヤモンド信用保証株式会社」という三菱銀行の関係会社と保証委託契約を結んだのだ。三菱銀行の課長からは、毎年25万円の保証料を支払う代わりに、Wさんが返済できなくなった場合には、同社が代位弁済してくれると説明を受けていたという。

しかし、これこそがのちに夫婦を地獄へ引きずり込む「融資、カードローン、自宅担保、信用保証」という恐怖の4点セットの罠だった。

【後編を読む】「医師だった夫はうつ病、引きこもりに」…90年代に「変額保険」を申し込んだ79歳夫婦の悲痛

「週刊現代」2026年6月22日号より

【つづきを読む】「医師だった夫はうつ病、引きこもりに」…90年代に「変額保険」を申し込んだ79歳夫婦の悲痛