交流会でおすすめの絵本を紹介する学校司書の小前恭則さん=大阪市福島区

 人の心の中にはさまざまな引き出しがある―。そんな言葉を胸に、多様な経験を積んだ人たちが知識や歩みを語り、共有する交流会が大阪市で開かれている。その名も「私の引き出し」だ。(共同通信=中川玲奈)

 主宰の土肥康嗣さん(70)は会社員時代、多くのセミナーを受講し、人と関わる面白さに魅せられてきた。「しんどい時も、人の話を聞くと『また頑張らな』と思える」。参加者が「心の会話」をできる場をつくり続け、3月、50回に達した。

 3月下旬の会は、同市の福島区民センターの一室で開催。学校司書小前恭則さん(73)が、仕事内容や学校で子どもたちと接する際に心がけていることなど約1時間にわたって語った。お薦めの絵本も紹介し、約10人の参加者が熱心に聞き入った。

 土肥さんは長年、ドイツ民謡を歌う集いに参加。「楽しいけれど歌い終わったら帰っていく。個々を深く知れるような交流はあまりなかった」と振り返る。

 江崎グリコに勤務していた土肥さんは、マーケティング調査のため多くのセミナーを受講。一つのテーマを参加者同士で話し合うものもあり、面白さを感じていた。

 歌仲間に相談し「それぞれの心の引き出しを開けてみよう」と2015年、交流会をスタート。以来、日本の国宝や万葉集、城や気象予測など多岐にわたるテーマを扱ってきた。

 話し手には医師や研究者ら高い専門性を持つ人もいるが、事前に何度も打ち合わせ「難しくなり過ぎないよう、話し手とその世界との具体的な関わりを入れて」と注文している。知り合いのつてなどで参加者を募ってきたが、「今後は興味がある人がいれば広く受け入れたい」。

 年6回開催。コロナ禍などで一時休会したが、終わらせることはなかった。「自分が面白がってるんちゃうかな」と土肥さん。「地層のように積み重なった人生の一部分をうまく引き出せたり、難しいことが易しく参加者に伝わるよう橋渡しができたりしたら、それが私の存在価値かな」

 ◎社会活動と孤独

 社会活動と孤独 内閣府の孤独・孤立に関する調査(2025年)によると孤独感が「しばしば・常に」「時々」「たまに」あると回答した人は計37.7%。自治会や町内会、趣味や娯楽など社会活動に特に参加していない人のうち計42%が孤独を感じていた。内閣府のプロジェクトチームは孤立、孤独対策のため多様な居場所づくりの必要性を指摘している。

交流会「私の引き出し」主宰の土肥康嗣さん

交流会で仕事内容などについて説明する学校司書の小前恭則さん(左から2人目)=大阪市福島区

交流会の参加者と談笑する土肥康嗣さん=大阪市福島区

大阪市「NORBDENCE福島区民センター」、JR野田駅、大阪メトロ野田阪神駅