転覆した移設抗議船「不屈」

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〈お友達と奇麗な珊瑚礁を見る方が楽しそう〉――。無垢な期待を抱き沖縄に出発した少女の思いは、最悪の形で裏切られた。女子高生の命を奪った辺野古ボート転覆事故から2カ月、“元凶”とされる船長と反基地団体が、国交省の聴取をかたくなに拒んでいるのだ。

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【写真を見る】スナックで泥酔する姿も 平和丸の船長

 修学旅行中の高校生ら21名を乗せた2隻の小型船「不屈」と「平和丸」が、沖縄県名護市の辺野古沖で転覆したのは3月16日のこと。「不屈」の金井創船長(71)と、「平和丸」に乗船した同志社国際高校2年の武石知華さん(17)が亡くなり、2隻の運航団体であるヘリ基地反対協議会(以下、反対協)には批判の声が集まった。

転覆した移設抗議船「不屈」

 この痛ましい事故から約2カ月後の5月22日、金子恭之国交相が記者会見で、死亡した金井船長を海上運送法違反容疑(無登録営業)で告発すると発表。同時に耳目を引いたのが、武石さんを乗せていた「平和丸」の諸喜田(しょきた)武船長と反対協への対応だった。告発の対象として発表されたのは、金井船長のみだったからだ。

 この点を記者に問われた金子国交相は、

「沖縄県内における海上運送法の許認可を担当する内閣府沖縄総合事務局において、3月の事故発生以降、再三にわたって事実関係の聞き取りを申し入れてきました。現在に至るまで、運航関係者のどなたからも聞き取りには応じていただけておりません」

 と明かしたのだ。

 内閣府沖縄総合事務局の担当者によれば、

「平和丸の船長は、刑事事件の取り扱いが懸念されるという理由で“聞き取りには一切応じない”とのことで、事実関係の確認が困難な状況です。反対協の方は、“書面による照会にのみ応じる”ということだったので、5月8日に質問書を送付し、5月19日にご回答を頂いています。現時点で書面でのご回答はこの一回のみです。両者共に先方の代理人弁護士が意向を伝えてきた形です」

「私たちがやっていることが間違っているわけではない」

 反対協の対応は、事故直後から度々批判されてきた。事故当日の記者会見では、出席した5名の幹部全員が普段着で登場し、腕を組んでふんぞり返るメンバーもいた。

 さらに、共同代表の浦島悦子氏が、4月中旬に琉球新報の主催する講座に出席し、「私たちがやっていること(反基地運動)が間違っているわけではない」「『荒れた海に出た』というのは間違い」など、自身の一方的な言い分を話したことも報じられた。

 武石さんの父親も投稿サイトのnote(4月17日付)で、こう明かしている。

〈平和丸の船長、乗組員、ヘリ基地反対協議会その他の関係責任者達/沖縄にいる間、知華や私たちへ対面しての直接の謝罪、面会可否の問い合わせ、託された手紙、弔電、何ひとつありませんでした〉

 遺族の投稿を受けて、反対協はようやく5月1日、公式HPで謝罪と共に、

〈私たちは捜査機関および関係機関の調査に全面的に協力しております〉

 などと記したコメントを掲載した。だが実際には、国交省側の聴取を拒否していたことは先に触れた通りだ。

 社会部デスクの話。

「聴取に応じない平和丸船長に加えて、協議体である反対協は法人格を有せず責任の所在を特定するのが難しい。海上運送法は国交省所管の行政法ですが、国交省による両者の告発は困難だと見られています」

刑事責任をを問われるリスクが高まることを懸念か

 元第3管区海上保安本部長で日本水難救済会理事長の遠山純司氏は、

「亡くなった金井船長一人に責任を押し付けていると疑われても仕方のない対応です」

 と、指摘する。

「現在、海保は刑法の業務上過失致死傷などの容疑で捜査を進めており、反対協や平和丸の船長は、国交省側のヒアリングで自身らに不利な証言をして刑事責任を問われるリスクが高まることを懸念していると考えられます」(同)

 しかし実際のところ、平和丸の船長の行動には幾つもの瑕疵(かし)が見られる。

「波浪注意報が出ているにもかかわらず出航した判断、多くの生徒を乗せて波が高い危険なリーフ際の海域を航行したこと、武石さんに救命胴衣を正しく着用させていなかったこと、乗客名簿もなく118番通報もしなかった点など、平和丸船長の安全管理のずさんさは枚挙にいとまがありません。当然、業務上過失致死傷罪での立件も免れないでしょう」(同)

「駄目なんですか?」

 もっとも、反対協自体については、やや事情が異なるようだ。

「これまで、海難事故で業務上過失致死傷罪に問われるのは、一義的には船長であり、運航会社の社長などの刑事責任が問われることはまれでした。また、反対協は法人の体をなしておらず指示系統が曖昧で、安全管理を含む、船の運航責任に関与していないと主張する可能性が高いでしょう。しかし、海保は、本事件の重大性も勘案し、組織としての安全管理責任を立件することも視野に捜査を進めていると思われます」(遠山氏)

 当の反対協の仲村善幸共同代表に、なぜ書面のみの対応なのかと問うと、

「それが駄目なんですか? 弁護士さんを通すのは悪いことなんでしょうか? われわれは法律の素人なのでお願いしてるんです。この件は全部弁護士さんにお任せしているので、弁護士さんに聞いてください」

 仲村氏と平和丸の船長の代理人である三宅俊司弁護士は、

「反対協は書面で国交省側に協力しています」

 と説明。諸喜田氏が国交省の聴取に応じようとしないことについても、次のような理由を口にした。

「内閣府沖縄総合事務局に呼び出しの根拠を聞いたら、根拠はないとのことでした。内閣府ですから政府に内容が伝わりますし、発言がどう使われるかも分からず、海保の捜査もある中で、刑事事件の弁護人として依頼人が不利益な扱いを受ける恐れがある状況では(聴取を)了解できません」

 この期に及んで行政を敵視するような発言にはあきれるほかない。

実況見分当日に泥酔

 本誌(「週刊新潮」)は、諸喜田氏が事故後の実況見分に立ち会った3月22日に名護市内のスナックを訪れ、泥酔するほど酒を飲んでいたことを報じた。いまも酒に溺れているのだろうか。

「それ(飲みに行っているかどうか)は分かりませんが、本人は精神的にも肉体的にも変調を来して病院に通っている状態です。海保の聴取には応じていますし、“ご遺族に謝罪したい”と話すたびに言っています。反対協側の窓口が統一できておらず、まだご遺族側とうまくコミュニケーションは取れていませんが……」(三宅弁護士)

 通院中だ、窓口がない……。またも重ねるのは言い訳ばかり。さっさとまずは遺族に謝罪する。どうしてそんな当然のことができないのだろうか。

「週刊新潮」2026年6月4日号 掲載