この記事をまとめると

■スズキが「カーボンキャプチャー・キャリイ」を初公開した

■カーボンキャプチャー・キャリイは荷台を犠牲にせずにCO2回収装置を搭載する

■回収したCO2はハウス栽培に活用するという循環システムを想定している

CO2キャプチャーの実装はもう近い

 2026年5月27日からの3日間、パシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」が開催された。オンラインや名古屋会場(6月17〜19日)などでも楽しむことができる、日本最大級の自動車技術展だ。

 横浜会場をウロウロしていると、スズキが本邦初公開となる「CARBON CAPTURE CARRY(CO2回収装置付きスーパーキャリイ)」を展示しているのを見つけた。

 WEB CARTOPでは、2025年9月に「出すそばから二酸化炭素を回収できればエンジン車でもよくない? いま自動車メーカーが取り組むCO2キャプチャーとは」というコラムを公開しているが、その時点では計画段階だったスズキのCO2回収装置が、試作とはいえ、実車に搭載されるレベルで完成したというのだから見逃せない。

 あらためて「CO2キャプチャー」の狙いと開発の背景について整理しておこう。

 いまや気候変動・地球温暖化については肌身で感じている人が多いだろう。その原因が何であれ、CO2(二酸化炭素)を減らすことは、人類が温暖化に対抗できる有効な手段とされている。人為的に放出されるCO2のほとんどは、石油や石炭といった化石燃料由来。そこで、自動車でいえば、そもそもCO2を出さないゼロエミッション車、つまり電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCEV)を普及させることが究極的な目標となっているのは、ご存じの通りだ。

 しかし、ゼロエミッション車100%の世のなかになるには時間が必要だ。そこで自動車メーカー各社は、排ガスに含まれるCO2を分離・回収する「CO2キャプチャー」または「カーボンキャプチャー」と呼ばれる技術を開発している。

 大型工場や発電所向けの回収技術と異なり、車載のCO2キャプチャーを実現するにはコンパクトにすることがキーとなる。また、回収したCO2をどのように活用するかも重要だ。車載できるCO2タンクはそれほど大きなものにできるはずはなく、定期的なメンテナンス(CO2の放出)が必須といえるからだ。

 スズキが、人とくるまのテクノロジー展に出展したCO2回収装置付きスーパーキャリイは、そうした難題をクリアした姿で公開された。

 通常の軽トラよりキャビンを延長したスーパーキャリイの、その伸びたキャビンの下部分にCO2回収装置は収まるよう設計されている。つまり、メインの荷台はもちろん、運転スペースも犠牲になっていない。

CO2を回収するだけでなくどう再利用するかも課題

 大まかなシステムは、マフラーから排ガスを取り入れ、排ガス中の水分を2段階で除去したあとに、ゼオライト系の固体吸着剤を使ってCO2を回収するというもの。会場で説明員の方に、その能力を質問したところ、20kmの走行につき1kgのCO2を回収できるという。スーパーキャリイの燃費性能から計算すると、20km走行で2〜3kgのCO2を排出しているから、かなりの割合で回収できていることになる。

 しかし、スズキのカーボンキャプチャーシステムにおけるポイントは、こうして回収したCO2を、ユーザーレベルで放出できるシステムにしている点にある。

 言わずもがな、軽トラのヘビーユーザーといえば農業従事者が思い浮かぶ。そして、多くのハウス栽培では農作物の成長を促すためにCO2濃度を上げている。そのために化石燃料を燃やしているという事実もあったりする。

 そこでスズキが考えたのは、スーパーキャリイで回収したCO2を、そのままビニールハウス内に放出するソリューションだ。そのためにハウスにつながる配管につなぐだけで、ユーザーの操作によって回収装置からCO2を放出できるよう仕上げているという。

 前述したように、スーパーキャリイに搭載されたCO2回収装置は荷台をほとんど犠牲にしていない。つまり、作物の出荷など日常業務に軽トラを使いつつ、そこで発生したCO2を作物の成長促進に活用するという一石二鳥の循環システムが構築できるのだ。

 CO2回収装置とカーボンニュートラル燃料(CNF)を組み合わせて、トータルではCO2を減らすカーボンネガティブを実現することは、エンジン車ができる地球温暖化対策としては最上級レベルといえる。

 しかも、スズキが軽トラに搭載したシステムにおいては、回収したCO2の活用という出口戦略もしっかり考え抜かれている。「カーボンキャプチャー・キャリイ」は、まさしくカーボンキャプチャー、カーボンネガティブに向けた、2026年時点での最適解といえそうだ。

 こうした技術の発展と、一日もはやい量産・市販化に期待したい。