京都・男児遺棄事件受け「販売台数、例年の約3倍、生産追いつかず」子ども見守りGPSのニーズが今、増える「自治体も活用」
AIとGPSで子どもは守れるのか──。春休み目前に京都で起きた男子児童の行方不明事件で、義父が逮捕されるという衝撃的な展開が連日ニュースを賑わせました。新年度が始まる時期だったこともあり、子ども見守りGPS「BoTトーク」は、販売台数が例年の同時期に比べ約3倍に増えたといい、「親が子どもを手放しに送り出せない危機感が高まっている」とビーサイズ株式会社の八木啓太代表は話します。テクノロジーで安心・安全は作り出せるのか、伺いました。
【写真】「最新型は交通系ICと連携」機能を極限までシンプルにしたという子ども見守りGPS「BoTトーク」(全8枚)
京都の事件受け「社会のニーズと責任高まり」
── 端末をお子さんに携帯させるだけで、GPSによる位置情報の把握ができ、学校や家に着いたことを知らせる通知機能のほか、ボイスメッセージを送れる機能を備えた「BoTトーク」を2017年から販売しているそうですね。ユーザー数は年々増え、業界トップシェアを更新していると伺いました。
八木さん:コロナ禍で子どもたちが自宅学習になった際に、一時的に低迷した時期はありましたが、契約数は右肩上がりです。最近では、京都で小学生の男の子が行方不明になり義父が逮捕された痛ましい事件が報道されたためか、去年のこの時期と比べて販売台数が約3倍となり、生産が追いつかない事態になりました。
新年度が始まる前だったこと、連日大きく事件が報道されたことで、親御さまが「子どもを手放しには送り出せない」という危機感が強まったと感じております。社会のニーズとともに、我々の役割や責任が高まっていると考えています。
AIが行動範囲を学習で「ヒヤリハット回避」
── 警察庁によると、国内では9歳以下の子ども1000人以上が毎年、行方不明になっているそうです。実際にBoTトークで子どもの安全が守れた事例はありますか。
八木さん:非常に多くの事例が届いています。BoTトークに搭載されたAIは、普段の行動範囲を学習して、それを逸脱した場合に保護者に通知が送られます。例えば、「お友達が家に帰る途中で具合が悪くなり、交番に寄っていたそうなのですが、普段の行動範囲を離れたようですと通知が来たため、すぐに迎えにいくことができた」ですとか、電車通学をされているお子さまが、「降りる駅を乗り過ごしてしまった際などに通知が届いて、すぐに現在地を把握できた」などのお声をいただきます。
また、2018年の大阪北部地震の際に、帰宅途中にお子さまが乗っていた電車が止まってしまったそうなのですが、位置がわかったのでスムーズにお迎えに行くことができたという事例もありました。
── 災害時にも役立つのですね。東日本大震災の際などは、電話がつながりにくい事態が起きました。
八木さん:GPSは人工衛星からの電波を取得して位置を特定するため、通信回線に関わらず位置情報の特定が可能です。また、ボイスメッセージを送受信できるトーク機能を利用する際のデータ通信は非常に小さいデータ量なので、電話回線より混線しにくく、コミュニケーションは取りやすいと考えています。
そのほか、「登山に行く際に、万が一はぐれたときを想定してBoTトークを持たせていたところ、山の中でもしっかり位置情報を拾っていて安心材料になった」という声をいただくこともございました。
「子どもから離れたら見守るすべはない」GPS端末利用の注意
── GPS端末を「持たせているだけで安心」というご家庭も多いかと思います。利用の注意点はありますか。
八木さん:見守りに十分な精度は満たしているものの、位置情報に多少のズレが生じることがございます。また、通学時にランドセルにつけてご利用されている方が多いのですが、そもそもランドセルとお子さまが離れてしまったり、端末と離れてしまったりした場合は見守るすべがなくなってしまうので、携帯していただく必要はございます。
電池切れが起きた場合も見守りができなくなりますので、バッテリー残量を確認して充電していただけたらと思います。
── 見守り用のGPS機器は子どもの安全を守る反面、「位置を常に把握されることで、子どものプライバシーの侵害にあたるのでは」という声も聞かれています。ただ、CHANTO WEBが読者に実施したアンケートでは、「ある一定の年齢までは、子どもの同意のうえで活用するのは可」といった意見が聞かれました。
八木さん:弊社が提供しているのはコミュニケーションサービスであり、監視サービスではありませんので、お子さまの人格を尊重して、ひとりの人格が大人に成長する自立のプロセスをサポートしたいという思いが前提にあります。サービスを利用するにあたっては、ご家庭でよく話し合っていただいて、双方が納得したうえで利用していただきたいと考えています。
我々子育て世代が子どもだった頃は、自由に野原を駆け回っていた経験がある方も多いと思います。そういう冒険心を現代のお子さまにも抱いてほしいという思いはありつつも、子どもを狙った犯罪が増えるなど、手放しで送り出せる世の中ではなくなっています。子ども見守りGPS(AI見守りロボット)がお子さまに付き添うことで、安心して親御さまがお子さまを送り出せる環境を作れたらいいなと思っています。
子どもの親離れはもちろんですが、親も子離れして行くことが自立へのステップだと考えています。「1年生になったから」と急に親元から切り離すのは無理がありますし、危険も伴いますので、テクノロジーを使って滑らかにサポートできたらいいですね。
ユーザーの年齢分布は小学生のお子さまがいるご家庭が圧倒的に多く、スマホを持たせる前の期間に利用してくださる方が多い印象です。お子さまが、いずれ「BoTトーク」を卒業されるタイミングがあるとして、その時、健やかに成長されているとすれば、我々は十分役割を果たせたのかなと思っています。
自治体が購入の動きも「生活圏のリスク把握にデータを活用」
── 自治体からの問い合わせも多いと伺いました。
八木さん:1万円など上限を決めて、GPS端末の購入費用を補助する自治体もありますし、自治体で一括購入して無償提供するところもあります。どの自治体も、お子さまが安心して生活できる地域社会を作るということに危機意識を持っていらっしゃるのだと感じます。
山形県長井市では、BoTトークご利用者のうち、事前にデータ提供に同意いただいたご家庭の情報を市が受け取り、子どもが日常的に通る経路や行動傾向の把握に活用されています。さらに、長井市が独自に保有する河川水位や、クマといった有害鳥獣の出没情報などのデータと掛け合わせ、子どもの生活圏におけるリスクの可視化や、見守り・安全対策への活用を検討する取り組みが進められています。
子育てと親の面倒、自力だけでは不可能だからこそ
── さらに、ノウハウを活かして、高齢者用の見守りサービスを開発中だと伺いました。子ども用とはどんなところが違うのでしょうか。
八木さん:「BoTトーク」をシニアの方が使っていらっしゃる事例も多いです。認知症の方は、「足腰は元気で、新幹線に乗って信じられないほど遠くに行ってしまう」というケースもあるそうです。認知症で徘徊をされる方は自発的に端末を持って行くことや自分で充電をするのが難しいと思うので、そういったところを解決できるような商品を開発している最中です。数年以内にお披露目できたらと思っております。
── 子どもと親を同時に見守る時代がもうやってきていますね。
八木さん:40~50代の働き世代は、サンドイッチ世代と言われることもあるそうなのですが、働きながらお子さまと親の面倒を同時に見る必要があるにもかかわらず、人口分布としてはシニアより働き世代のほうが少ないというのが切実な課題だと思っています。テクノロジーなしに2つの世代を見守るというのはもう不可能な域に達していると思います。
いっぽうで、家族の絆は何より大切なことです。見守りAIロボット「BoTトーク」で日中は安心して仕事や家事に集中していただき、帰宅後は家族との時間を大切に過ごしていただきたいというのが我々の提供したい価値です。「AIは人にとって変わる」というのを脅威に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、どちらかというと人間が人間らしくあるための手段のひとつと捉えています。
家族のあり方を考えるうえで、社会の弊害となる要素をAIが得意なところはAIに任せ、人が担うべきところは人間が担うというようにうまく役割分担することが、ますます必要になってくるのではと思っています。
取材・文:内橋明日香 写真:ビーサイズ株式会社

