ハーバード大学へ強く執着していたというエプスタイン元被告(時事通信フォト)

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  4月20日付の米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、米司法省が公開している「エプスタイン・ファイル」をもとに、ハーバード大学の教授らとジェフリー・エプスタイン元被告の関係を詳細に報じた。

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 大学の公式報告によれば、元被告は1998年から2008年にかけて、大学関連プロジェクトに総額約910万ドル(約14億6000万円)を提供。研究施設内には「ジェフリーのオフィス」と呼ばれる部屋があり、未成年者を含む売春勧誘に関する罪で有罪となって以降も大学は関係を継続。大学の公式報告によれば、釈放後の2010年から2018年にかけて元被告は大学を繰り返し訪れていたという。

 資金の流れには、大学側の積極的な働きかけもあったとされる。紙面ではハーバード卒業生が元被告と船上で笑顔を浮かべるツーショット写真を掲載。同氏が大学の社交クラブへの寄付を働きかけていたと説明している。

 最大の資金提供先は、数理生物学者マーティン・ノヴァク氏が率いた研究プログラムだった。だが、関係は資金にとどまらない。ノヴァク氏が東欧出身の若い女性を紹介されていたとする報道や、マンハッタンにある元被告の物件などに同氏が滞在していた記録も指摘されている。その関係は、資金提供だけではない深い段階にあった。

 ハーバード大学元学長で元米財務長官のローレンス・サマーズ氏との関係も濃かった。米紙「ボストン・グローブ」によれば、元被告はサマーズの「ウィングマン(女性との関係構築をサポートする役割)」を自称し、教え子である若い女性へのアプローチについて助言を求められていたとされる。2019年7月5日、逮捕の前日までメールのやりとりが続いていたことも確認されている。

 物理学者リサ・ランドール氏との関係も明らかになった。2010年、有罪判決後の拘束状態を冗談めかして言及するメールが交わされ、2014年にはボートで私有島である「エプスタイン島」へ招かれ、その後プライベートジェットでボストンへ送り届けられた。2017年のハリケーン後には、ランドール氏が島を気遣う連絡を送っている。

「このときのプライベートジェットには、MITメディアラボ元所長の伊藤穰一氏も同乗していたと報じられています。伊藤氏はエプスタインからの寄付を、名前が前面に出ない形で受け入れていたとされ、MITを辞任。関連資金はMITへの直接分、匿名分もふくめ数百万ドル規模とされています。島への招待とジェットでの送迎は、単なる学術交流では説明のつかない関係の近さを感じさせるものです」(海外ジャーナリスト)

 心理学者スティーヴン・コスリン氏もまた、深い関係を築いていた。2005年、同氏は元被告に推薦状を書き、心理学部の客員研究員として受け入れる後押しをした。服役中も面会を続け、出所直後に元被告から送られた「帰ってきた。自由だ」というメールに対し、「ジェフリー!!!!! それは最高だ!!!!! いまサンフランシスコにいるけど、あとでちょっと電話するよ」と返信していた記録が残っている。

エプスタイン元被告による2つの"接待"

 こうした関係の背景にあったのが、元被告による独特の"接待"のあり方だ。前出の海外ジャーナリストが続ける。

「海外メディアや公開されている資料を総合すると、その手法は大きく二つあるとみられます。

 ひとつは、島や邸宅への招待、プライベートジェットでの移動といった閉じられた空間でのもてなし。島や邸宅には各界の有力者が出入りしていたとされ、女性が同席していたとする証言や報道もあります。

 もうひとつは、資金や人脈の提供。研究資金の拠出、有力な寄付者や投資家の紹介などです。大学関係者のキャリアや組織運営に直結する利得をもたらすことで、関係が維持される。資金に加え、若い女性の紹介や島での滞在は、私的な関係の深さを示しています」

 2009年、未成年者を含む売春勧誘に関する罪で有罪となり、服役を終えたその日、元被告が連絡を取った相手の一人がコスリン氏だった。大学側は寄付を受けない方針を決めていたが、関係は途切れなかった。

学長は退任、教授も処分

 ハーバード大学は2020年に内部調査を公表し、約40人への聞き取りと25万ページの資料を検証。教授らが元被告の自宅などを訪れていたことは把握したものの、それ以上は踏み込まなかった。

 だが2026年2月、「エプスタイン・ファイル」の追加公開を受けて2度目の調査を再開。サマーズ氏は職を退き、ノヴァク氏は休職処分となっている。

「エプスタイン元被告は、名門ハーバード大学のブランドに強く執着し、大学側もその関係を受け入れる土壌があったと『ニューヨーク・タイムズ』は指摘しています。性犯罪者となっても関係を維持する教授、メールを続ける元学長。資金と人脈、そして特別な場を通じて、知的エリートの世界に食い込んでいった構図が浮かび上がります」(同前)

 資金と人脈、そして"特別な場"。それらが、エプスタイン元被告の用いる"囲い込み"の手口であったみられている。