「コンビニ弁当は身体に悪そう」は減ったけれど…プラ容器使いすぎ?深夜も明るすぎ?まだある“コンビニと健康”の気になるところ
全国5万8,000店舗、年間約162億人が買い物する“コンビニ超大国ニッポン”。老若男女、昼夜を問わずさまざまな人が訪れるコンビニは、その目的や利用方法も人によってさまざまだ。「コンビニとの付き合い方」を覗いた先に見えてくるものとは? コンビニジャーナリスト・渡辺広明氏が、ゲストを招きコンビニについて大いに語り合う──。
今回のゲストは、加齢医学専門医として『ホンマでっか!?TV』などに出演している埼玉みらいクリニック院長・岡本宗史氏(44)。奇抜なファッションでもお馴染みの同氏だが、今回は健康という視点などからコンビニが日本社会に及ぼした影響を掘り下げていく。
【写真】『ホンマでっか!?TV』で“ナルシストドクター”として強烈な存在感を放ち、『ぽかぽか』などにも出演する岡本宗史氏
健康的な選択のための基本的な考え方
渡辺:ひと昔前は「コンビニ弁当は身体に悪そう」というイメージがありましたよね。ところが2000年代になると、各社は保存料や合成着色料をできるだけ使わない方向へ舵を切り、健康志向を意識した商品開発も進めてきました。今ではコンビニ商品もかなり変わった印象がありますが、逆に、いま課題として感じていることはありますか?
岡本:プラスチック容器を使いすぎ問題は今後、注目されるかもしれないですね。ペットボトル飲料や食品包装から微小なプラスチック粒子に曝露する可能性は報告されています。また人の血液や臓器から検出された研究もあります。ただ、どの程度が健康リスクにつながるのかは、まだ検証途上です。

渡辺:え、そうなんですか。
岡本:最近では、人の脳からも微小プラスチックが検出され、怖いことに認知症でなくなった人の脳からは検出量が多かったという報告もあります。ただ、先述のように因果関係まではまだ言いきることはできません。容器の加熱で粒子の放出が増える実験もあるので、不要な加熱を減らすという発想自体は合理的だと思います。
渡辺:マイクロプラスチックとかって食物連鎖で濃縮された魚から人間の体内に溜まるみたいな話もありますよね? 水銀みたいに。
岡本:魚については、魚全般というより、マグロ類など食物連鎖の上位の魚を多く食べる人で水銀曝露が上がりやすいと言われています。マイクロプラスチックについては先述のように現時点では、人への健康影響はまだ断定できるレベルではありません。ただ、関連を示す観察研究は出てきているので、過度に断定しないのが大事かと思います。
渡辺:健康関係のエビデンスって、ちゃんと精査が必要なものも多いんですね。
岡本:昔、問題になった、ダイオキシンも確かに毒性のある物質ですが、一般環境での通常暴露が健康影響を起こすとは考えにくいとされています。農薬についても、有機栽培のほうが残留農薬は確かに少ない傾向ではありますが、通常使用されている農薬で栽培された野菜が有機より明確に健康被害につながるという強い証拠はなく発がん性についても変わりが無いといった報告があります。
渡辺:瞬間冷凍させた冷凍食品は、普通の弁当などより保存料も少なくて健康的という話も聞くんですが、実際どうなんでしょうか。
岡本:物によると思うんですけど、冷凍ブルーベリーなどは問題ないと思います。ひとつの考え方として柔らかくて加工している食品より、なるべく未加工に近い、硬い食べ物を意識すると良いですね。しっかり咀嚼することで自然と食べる時間が長くなることで、血糖値の上昇も緩やかになりますし、自然と満腹感を得やすくなるので食べる量もコントロールしやすくなります。
都内のコンビニで活躍する海外人材。育成の背景は出店戦略も
岡本:コンビニの健康課題でほかに言うならば、深夜に煌々とした明かりに晒されると体内時計が狂うので、夜が更けたら暖色系の照明に切り替えてルクスを落とすなりしてほしいと感じることもあります。特に深夜は、ブルーライトと呼ばれる青白い光がメラトニン分泌を抑えることで体内時計を乱しやすくなります。防犯との両立を前提に、深夜帯だけでも色の温度や照度を少し落とす工夫は、利用者にも働く人にもいい影響になるかもしれませんね。
渡辺:コンビニが24時間明るいから街の治安が守られているとも言われますが、健康的にはそうですよね。僕はコンビニって顧客想いの世界No. 1のリアル店舗の小売業だと思うんですが、だからこそいろいろ破壊もしてきたんですよ。24時間営業で徹夜仕事も助長してきましたし、これは全くエビデンスのない僕の持論ですけど、未婚化も加速させたんです。近所にコンビニがあれば誰でも簡単に一人暮らしを始められて、推し活にも集中できる暮らしを続けられるので、パートナーを作る必要がない(笑)。
岡本:確かに一理あるかもしれないですね(笑)。渡辺さんにお聞きしたいんですが、少子高齢化と過疎化が顕著な地方のコンビニほど日本人の店員さんが多いのは、なぜなんですか? 都内のコンビニは海外の方のほうが多い印象ですけど、未だに地方のコンビニは日本人の店員さんがけっこう多いなと。
渡辺:簡単に言うと、地方は日本人もいないけど外国人もいないからです(笑)。やっぱり僕らもベトナムでいきなり働くなら、まずは働き口の選択肢が多そうなホーチミンとか住みたいじゃないですか。
岡本:そういうことなんですか。いきなり海外の地方に行くのは心理的ハードルもありますもんね。
渡辺:昨年末に都内のローソン店舗で働いたら、従業員15人中、一人を除き全員ネパール人でしたね。ただ、僕も元コンビニ店長なのでよくわかるんですが、お店のレベルは高いです。ネパール人の国民性なのかわからないですけど、真面目ですよ。
岡本:総じて一生懸命働いていますよね。
渡辺:コンビニ業務は特定技能の対象職種に含まれていなくて、日本語学校とか通いながら留学ビザで働いているので、原則週28時間しか働けないんですが、賢い人が多くて話すと勉強になりますよ。海外のコンビニでオペレーションとかハイレベルすぎますから。
岡本:彼らは母国である程度日本語を勉強してから来ているんですか?
渡辺:一緒に働いたネパール人は、去年9月から日本語学校に入って店舗でバイトを始めたそうですが、その前は宮崎県のコンビニの弁当工場で2年間働きながら日本語の勉強をしたそうです。ローソンはベトナムに研修センターを2017年頃に設置していて、留学生バイトやベトナム人社員をしっかり育成して、将来的にベトナムや中国での出店を拡大させる狙いがあるんですね。
監修サプリメントの構想を語る
岡本:コンビニのサービスで言うと、薬局が併設されているコンビニ店舗が一部あると思うんですが、コンビニで普通に処方薬がもらえる時代になったら最強ですね。
渡辺:一般のお客さんからも「薬を売ってほしい」という声は多いです。都市部だとクリーニング出したいという要望もありますけど。
岡本:薬剤師が常駐しないといけなくなりますけど、もうちょっと拡充されてもいいのかなとは思いますね。
渡辺:調剤や処方薬はドラッグストアが役割を担うかたちでいいと思うんですが、個人的にOTC薬(処方箋なしに買える医薬品)は普通にコンビニで販売されると良いなと。
岡本:高齢化や医療技術が進歩し、医療費が増える中、湿布や花粉症薬のような『OTC類似薬』の保険対応をどうするかは、実際の政策課題となっています。自己判断で済ませられる症状と、医療につなぐべき症状の線引きが重要と考えます。ただ、やっぱり癌やリウマチなどの痛みで苦しんでいる人まで保険から外れてしまうのは問題だと思いますし、その線引きの作業は難しい課題ですが議論を続けていく必要性があります。
渡辺:僕からすれば痛み止めとか解熱剤とか、本当に10種類くらいの薬を置いてくれれば良いんです。病院って夜はどうせ開いてないし、翌日ちゃんと病院に行くから……。
岡本:なるほど(笑)。コンビニへの要望ということで思い出したんですが、コンビニで販売されているサプリメントの監修には興味があります。
渡辺:え、良いじゃないですか。当然、岡本先生は専門知識がいっぱいあるわけですから。ぜひやりましょう。なにか気になるサプリメントなどありますか?
岡本:エルゴチオネインというヒラタケなどのキノコに多いアミノ酸ですが、強い抗酸化作用をもち、特に脳の健康分野でも注目されています。
渡辺:記憶力や認知機能に効くみたいな。
岡本:脳には血液脳関門(BBB)という血液中の有害物質や微生物が脳内へ侵入するのを防ぐ強固なフィルター機能が存在しているのですが、逆に言えばこのBBBのため、食事中のポリフェノールなどの抗酸化物質も脳の神経細胞に影響を及ぼしにくいといった一面がありました。エルゴチオネインはその中でもBBBを通過し脳内の神経系に良い影響を及ぼす可能性が報告されています。実際、シンガポールの研究では観察研究にはなりますが、キノコを多く食べる人は全く食べない人に比べて認知症に罹患するオッズ(リスク)が50%も低かったという報告もあります。
渡辺:サプリは商品化までのプロセスが大変ですが、将来効果が実証されれば確かにめちゃくちゃ売れそうですね。僕、商品開発も得意なんでお任せください(笑)。
渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。
デイリー新潮編集部
