「電話サポートのイライラ」はAIで解消…!大満足の経営者が落ちる「コンタクトデフレ」という地獄
「ナビダイヤル」という名の用心棒
読者のみなさんが購入した商品や使っているサービスで不具合がおきたときに一番嫌な気持ちがするのはどのような場合ですか?
私の場合は、お客様サービスに連絡をとろうとしたときの窓口がナビダイヤルだったときです。
「この通話は20秒ごとにおよそ10円でおかけいただけます」
というアレです。
忍耐力があるお客様の私としても、
「そっちの不具合で電話しているのになんで10分間待たされて300円とられるんだ」
と不愉快な気持ちになるわけです。
企業の側からするとここにメリットがあります。それだけお金がかかるとわかることで、どうでもいい問い合わせが激減します。
一般的にコンタクトセンターにひとり人員を配置する場合、一時間あたり最低でも2500円のコストがかかります。このコストを企業はできるだけ減らしたいのです。
あまり知られていませんが、ナビダイヤルで私たちが支払う「20秒ごとにいくら」という料金は実はコンタクトセンターを運営する企業の側はうけとっていません。携帯キャリアとナビダイヤルを運営する企業で折半しています。
要するにナビダイヤルはお金を払ってコンタクトセンターが雇う用心棒のようなもので、お客を追い返すのに使われている仕組みなのです。
この仕組みで一番ワリをくってしまうのが、深刻な問題を抱えた利用者です。とはいえなんとかして問題を解決しなければいけないので、ナビダイヤルでも辛抱して電話がつながるまで待ちます。
これはナビダイヤルを利用している企業側でもメリットがある話です。コンタクトセンターにかかってくる電話が基本的に深刻な相談の比率が多くなりますから、それは情報としては宝の山になります。顧客の不満や思わぬ使い方、気づいていなかったニーズを拾うことができるのです。
AIがクレームを“未然消滅”させる時代
さて、ここからが本題です。
私はコンタクトセンターに不満をもつ消費者のひとりですが、最近、そのストレスが減ってきました。生成AIの性能が上がってきた結果、AIで問題が解決されることが増えてきたのです。
私の場合、この恩恵を一番感じるのは頻繁に起きるパソコンやスマホのさまざまな不具合です。いつも使っているアプリが今日は開かなくなったとか、わけのわからないエラーメッセージが出てそこに書いていることが何なのかすら理解できないとか、そんなトラブルが一か月の間に数回のペースで起きます。
こういった場合、ChatGPTやジェミニにそのエラーの内容を質問すると、あっという間に問題解決の手順を返してくれます。
「これはマイクロソフトのアウトルックで頻繁に報告されているエラーで、対処としては、、、」
とか、
「iPhoneの設定→プライバシーとセキュリティ→位置情報サービスの順にタップして、、、」
のように返してくれる指示通りに対応すると、それまで心を煩わせてきた問題がすっきりと解決する、そんな体験を何度もしています。
それでよく考えてみると、この1年間、私はデルコンピュータやアップルのお客様相談室に一度も連絡をしたことがありません。生成AIのおかげで人生に快適さが増した感じがしています。
この現象、まだ定まった呼び名はついていませんが「コンタクトデフレ」や「ゼロコンタクト化」といった言い方で、AIの経営への影響を分析するひとたちの間で話題になっています。顧客が企業に一切問い合わせをせずに、問題を自己解決するケースが激増しているのです。
コスト削減か、顧客消失か
そしてこの現象については興味深いことに日本企業とアメリカ企業では問題認識が異なっています。
日本企業の多くがAI活用について生産性向上、つまりコスト削減の効用に関心が集まっています。その観点からみれば、コンタクトデフレはこれまで経費として重荷になっていたお客様相談サービス部門のコストを劇的に下げてくれているわけで、好ましい現象だと思ってしまうのです。一方で、アメリカ企業の経営者のAI活用の関心はどちらかというと顧客満足度の向上に力点が置かれています。
この観点で考えるとコンタクトデフレ現象は大問題です。
なぜなら企業と顧客との接点が失われてしまうからです。企業はただ商品を販売するだけで、顧客からの不満も満足度合いも一切情報が入ってこなくなる状況が生まれます。
調査会社の予測によれば、AIの進化に伴い1年後には問い合わせの40%が減り、3年後には実に80%の問い合わせが企業に来なくなるといいます。
アメリカの消費財企業や小売企業は、この数字に大きな危機感を持ち始めています。
では、コンタクトデフレにはどんな解決策があるのでしょうか。
後編『失礼な「お客様サービス」よりAIが便利…!「問い合わせゼロ」の先にある悲惨な現実と「コンタクトデフレ」時代の生存戦略』でじっくり考えていきましょう。
【つづきを読む】失礼な「お客様サービス」よりAIが便利…!「問い合わせゼロ」の先にある悲惨な現実と「コンタクトデフレ」時代の生存戦略
