井上尚弥(左)と中谷潤人

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[運命の日 井上尚弥VS中谷潤人]<上> 

 ボクシングの世界4団体スーパーバンタム級タイトルマッチが5月2日、東京ドームで行われる。

 統一王者の井上尚弥(33)(大橋)と、元世界バンタム級2団体統一王者の中谷潤人(28)(M・T)が対戦するビッグマッチ。ついに相まみえる無敗の両者のうち、「最強」の称号を手にするのはどちらか。決戦の舞台裏を探り、試合の行方を展望する。

32戦無敗同士 東京Dで激突

 昨年3月に行われた年間優秀選手表彰式。壇上の井上尚はスピーチで、「中谷君、1年後の東京ドームで日本ボクシングを盛り上げよう!」と後ろに座っていた中谷に声をかけた。中谷も「ぜひやりましょう」と受けて立った。

 井上尚の所属する大橋ジムの会長、大橋秀行(61)は驚いた。「ああいう発言をするとは聞いていなかった。先に聞いていたら止めていたんじゃないかな。でもあれで盛り上がった。ファインプレーです」

 井上尚は2024年5月に東京ドームでルイス・ネリ(メキシコ)にTKO勝ち。大橋は「次、東京ドームでやるなら中谷」と、この頃から構想を描いていた。中谷は同年2月にアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を破り、3階級制覇。「井上尚に必要なのは日本人選手で、ライバル。中谷が出てきたのは大きかった」

 中谷の所属するM・Tジムの会長、村野健(60)も同年5月に大橋から声をかけられた。「『東京ドームでやろうよ』という感じだった。可能性が上がってきたということだったんでしょう」

 決戦への号砲となった表彰式後、12月にはサウジアラビアで同じ興行に登場するなど両者は連勝を重ねる。機運は盛り上がり、「32戦無敗」という同じ戦績でぶつかることになった。

 これまでも名勝負と呼ばれる日本人対決が行われてきたが、一線を画すのは、この試合が海外からも熱い視線を送られている点だ。米国の権威ある専門誌「ザ・リング」の全階級を通じた格付け「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」の最新ランクで井上尚は2位、中谷は6位。PFP選手同士の試合は必然的にメガファイトとなり、今回の一戦で勝った方が1位に躍り出る可能性も秘める。

 少年時代の1977年にアルフォンソ・サモラとカルロス・サラテのメキシコ勢同士の強打対決に心躍らせたという大橋は、感慨を込めて言う。「日本人がPFPに入って対決する。それも無敗同士で複数階級王者。サモラ―サラテ以上のことを日本でできる日が来るとは……」。約5万5000席のチケットは完売。井上尚のファイトマネーも過去最高といい、興行規模も「日本ボクシング史上最大」(大橋)。海外メディアも「スーパーファイト」と報じている。まさに「世紀の一戦」のゴングが鳴ろうとしている。(敬称略)

名勝負 過去にも 薬師寺VS辰吉…

 世界戦初の日本人対決は1967年の沼田義明―小林弘。「精密機械」と「雑草」の対決と呼ばれ、「ボクシング・マガジン」元編集長の前田衷(77)は「会長同士の舌戦もあり、ピリピリしていた印象がある。盛り上がった」と語る。94年には世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級王者の薬師寺保栄と暫定王者の辰吉丈一郎が激突し、番組平均世帯視聴率39.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)をマーク。2000年には世界ボクシング協会(WBA)ライト級で畑山隆則と坂本博之の夢カードが実現した。