快進撃はどこまで続くか

写真拡大

 今年のプロ野球で、ここまで最もファンを驚かせているのはヤクルトだ。昨年は優勝した阪神から26.5ゲーム差をつけられて最下位に沈み、主砲の村上宗隆がホワイトソックスへ移籍。開幕前の順位予想では大半の評論家が最下位と見ていた。だが、開幕からいきなり5連勝を飾ると勢いは衰えず、4月22日終了時点で15勝6敗、貯金9でセ・リーグ首位に立っている。【西尾典文/野球ライター】

【写真】今季絶好調!ヤクルトスワローズ“先発全員安打”試合でハイタッチの瞬間

過去の成功パターンが今年も当てはまっている

 原動力は投手陣だ。チーム防御率2.40はリーグトップ。特にリリーフ陣の安定感が際立ち、5回終了時点でリードしていた試合はほぼ勝利につなげている。実績のある石山泰稚は出遅れて二軍調整中だが、不在を感じさせない。

快進撃はどこまで続くか

 中でも抜群の働きを見せているのは新外国人のリランソとキハダだ。リランソは7試合で5ホールド、キハダは9試合で9セーブ。ともに無失点を継続している。いずれもイニング数を上回る三振を奪っており、内容も圧巻だ。他球団の編成担当者はヤクルトの強みについてこう語る。

「ヤクルトは他球団と比べても外国人の当たりが多い。全員が成功するわけではありませんが、チームが好調な時は外国人が機能しています。キハダはメジャー実績がありますが、リランソはマイナー中心のキャリアですから、大当たりと言えるでしょう。先発補強よりも後ろの安定が大きく、先発が余計な負担を感じずに投げられている効果もあると思います」

 2021年、2022年のリーグ連覇でも投手ではマクガフ、サイスニード、野手ではオスナ、サンタナが主力として機能した。2015年の優勝時もバーネット、オンドルセク、ロマンの3投手がフル回転で支えている。外国人戦力が機能した時に強い――過去の成功パターンが今年も当てはまっている。

 一方で野手陣は万全とは言えない。サンタナと長岡秀樹は復帰して中軸を担うが、山田哲人、塩見泰隆、茂木栄五郎、内山壮真らは離脱や調整が続く。チーム打率.250はリーグ4位で、打線が圧倒しているわけではない。

勢いは本物か、それとも一過性か

 池山隆寛監督の「送りバントに頼らない」方針が際立つ。犠打数はわずか2で、12球団でも突出して少ない。他球団のアナリストはこう指摘する。

「無死一塁からの送りバントは確率的に非効率とされています。日本では依然として“まず進塁”という発想が強いですが、ヤクルトはそこに頼っていない。村上が抜けて長打力が落ちた状況なら小技に寄りがちですが、むしろ逆の選択をしているのは興味深い。一方でリスクが大きい作戦と言われる盗塁は積極的で、リーグ上位の数字を残している。限られた戦力で得点を取りにいく意思が明確です」

 4月18日の巨人戦では、1点を追う9回裏に田中陽翔と丸山和郁の連続二塁打で追いつくと、丸山が三塁へ盗塁。最後は長岡の適時打でサヨナラ勝ちを収めた。相手は守護神のライデル・マルティネス。この1勝の価値は大きい。

 2015年、2022年と前年最下位から優勝を果たしているだけに、今季も同じ軌道を期待する声は少なくない。勢いは本物か、それとも一過性か。池山ヤクルトの戦いは、シーズンの行方を占う試金石となりそうだ。

※成績は4月22日試合終了時点

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部