NTT、NTTデータグループ、NTTドコモビジネスの3社は、AIネイティブインフラ「AIOWN」(エーアイオン)を発表した。

AI時代のインフラを一括提供

 「AIOWN」は、ユーザーの用途に合わせてGPU、ネットワーク、電力などのリソースを最適化し、エッジデバイスまで含めたセキュアな環境と統合的なオペレーションを実現するインフラ基盤。生成AIの普及により、AIワークロードが学習中心から推論中心へ移行し、推論需要が大幅に拡大することを見据えた取り組み。

 NTTグループは、現在国内47全都道府県に160拠点以上のデータセンターを展開しているが、さらなる需要増に応えるため、現状のIT電力容量約300MWを2033年度には3倍超の約1GWまで拡張する。

 IOWNにはもともと、AIの要素が含まれているものの、より顧客の理解を得やすいように「AI」の要素を追加して、AIOWNというブランド名にした。

データセンター増強

 AIが社会に浸透するにつれ「学習」から「推論」へと使用率の比重が移っている。マッキンゼーの予測によれば、AIの推論による負荷は、2030年までに4倍以上となり、同年には全体の4割超を推論が占める見通し。

 NTTの島田明社長は、ガートナーのデータをもとにこれからのAI市場で求められるものを液冷方式の冷却システムやソブリン(主権)性のあるAI、AIのために作られたネットワークだと話す。同社ではこれらの各種技術の研究開発を進めており、液冷方式の冷却システムを用いる設備については、グローバルで250MW以上提供している。国内ではラピダスにも採用された。

NTTの島田明社長

 また、独自技術を活用したオールフォトニクスネットワークについても、2027年度までに全国で800Gbpsの基盤を構築するほか、今後建設予定のものも含め全国160以上の拠点を生かした分散基盤配置の需要にも応える。グローバル全体では、今後5年間で2兆円の投資額を見込む。

 具体的な国内展開として、2029年度下半期には東京都心の品川区内のJR駅付近に、液冷標準のAI対応型データセンターを開設する。

 2029年には栃木県に最終容量約100MWの大規模拠点を竣工するほか、千葉県の印西・白井エリアでも合計約250MWの国内最大級データセンターキャンパスを段階的に整備していく。福岡県には海底ケーブル直結のAI対応型データセンターを2029年に竣工する。海底ケーブル陸揚げ局との接続によるゲートウェイ拠点で、アジア各国とつながる。

 島田社長は「NTTは、必要なGPUやネットワーク、電力などのリソースを最適化し、セキュアなAIネイティブインフラであるAIOWNを展開していく。車やロボットなど、広範なコンピューティングリソースを統合的にオペレーションする」と語った。

産業ごとに高まるAIインフラへの要求

 説明会では、NTTと手を組んでAIやその基盤の活用に取り組むトヨタ自動車と中国電力とのパネルディスカッションが開催された。

 トヨタ自動車とのセッションにおいて、交差点のデジタルツインや製造現場における人とロボットの協調など「フィジカルAI」の展望が語られた。こうした膨大な情報を扱う環境では、ネットワークとコンピューティングを一体として柔軟に拡張できる分散型の計算基盤と、国内で自律的に運用できる主権性(ソブリン性)を担保したインフラが不可欠になるという。

トヨタ自動車 デジタル情報通信本部長の山本圭司氏(左)とNTTデータ 代表取締役社長の鈴木正範氏(右)

 また、中国電力は、発電計画や燃料運用の最適化といったインフラのコア業務におけるAI活用事例を紹介。機微なデータを安全に扱うための高度なセキュリティや、AIの普及に伴う電力消費の増大が課題に挙げられ、地方へのデータセンターの分散配置や再生可能エネルギーの活用など、電力と通信が連携したインフラ全体の最適化が求められていることが強調された。

中国電力 執行役員 デジタルイノベーション本部長の鎌倉仁士氏(左)とNTTドコモビジネス 代表取締役社長 社長執行役員CEOの小島克重氏(右)

【お詫びと訂正】
 記事初出時、NTTドコモビジネスの小島氏と中国電力の鎌倉氏の写真とキャプションが入れ替わっておりました。お詫びして訂正いたします。