【針貝 有佳】「有給消化率100%」のデンマークと「休むことに罪悪感を覚える」日本の職場…その決定的な違い
「休むけど結果は出す」デンマーク人
「休んで休んで休んで休んで休んでまいります。でも、結果は出す」
新年度のスタートを迎えた4月には、気合いが入って「今年度は◯◯をしよう」と目標を立てた人もいるかもしれない。その後、調子はどうだろうか。気合いを入れてスタートしてから約1ヶ月。少し疲れも出てくる頃ではないだろうか。というわけで、ゴールデンウィークを前に、ここで「休み」について考察してみたい。
「休んで休んで休んで休んで休んでまいります。でも、結果は出す」。
こんなセリフを耳にしたら、あなたはどう感じるだろう。「なんだと。ふざけるんじゃない」と、うっすら怒りを覚えるだろうか。それとも、「面白そうだな。どうやって休みながら結果を出せるのだろう?」と興味を持つだろうか。じつは、これは、拙著『デンマーク人の休む哲学』の紹介文として、実際に書店で使われたフレーズである。私が暮らす北欧デンマークは、幸福度も国際競争力もトップクラスで、ビジネス効率性は6年連続トップである。現地に15年以上暮らす筆者から見て「休んで休んで休んで休んで休んでまいります。でも、結果は出す」というフレーズは、まさにデンマーク人の生きる態度を端的に表している。
休むことに罪悪感を抱きやすい日本人
日本人は勤勉で真面目なので、「休む」という行為に複雑な感情を抱きやすい。休むことにポジティブな感情を抱く人もいれば、ネガティブな感情を抱く人もいるかもしれない。「休む」という行為はどうしても、怠けているとか、サボっているというイメージと重なりやすい。だからこそ、他人が休むことに対して嫌悪感を抱くこともあれば、自分が休むことに罪悪感を抱くこともある。けれど、人間として、やはり休むことは大切である。
元HKT48とAKB48を兼務し、センターとして活躍していた兒玉遥さんは、働きすぎでうつ病を発症した。2年間の休業をして、SNSには「馬車馬のように働き、うつ病になりました。私自身は、ワークライフバランスという言葉を最優先します。休んで、休んで、休んで、休んで参ります」と投稿し、休むことの大切さを伝えていた。
アイドルの世界は極端かもしれないが、私たちだって、目の前にあるタスクをガムシャラにこなし続けていたら、いつか心身を壊してしまうかもしれない。やはり、人間には休みが必要である。
デンマーク人の語る「休みの効果」
では「休み」を日常に取り入れると、どのような効果があるのだろうか。「ワークライフバランス先進国」として知られ、平日は午後4時に退社し、夏休みは3週間以上の連休を取得しながら結果も出すデンマーク人の語る「休みの効果」について紹介しよう。
デンマーク人が指摘する「休みの効果」は、主に以下のとおりである。
?〆切効果
?リラックス効果
?整える効果
?〆切効果
まずは、〆切効果。これはわかりやすいだろう。時間が無限にあると思うと、仕事も勉強もダラダラしてしまう。けれど、カレンダーに楽しみの予定が入っていると、なんとしてでも間に合うように頑張ろうと思う。「楽しみ」を予定に入れることで〆切が設定され、「◯◯までに終わらせよう!」というモチベーションが高まる。一段落ついたら休むのではなく、「楽しみ」の予定を先に入れた方がエネルギーが湧いてくるし、結果的に、効率もアップするのだ。
?リラックス効果
次に、リラックス効果。リラックスできる休み方でデンマーク人がとくにオススメするのは、? 安らぎを感じられる人と一緒に過ごすこと、?自然を感じること、?没頭すること、である。
自然体でいられる人と一緒に時間を過ごすと、ホッとして心が解ける。自然散策や焚き火なども、自然とつながれて癒される。運動・読書・編み物・陶芸・庭仕事・音楽活動など没頭できる活動をすると、フロー状態に入れてリラックスできる。リラックスできると、心の余裕ができて、前向きに物事に取り組めるようになる。
?整える効果
最後に、休みには、整える効果もある。今取り組んでいる物事から離れ、視点を外すことで、思考や感情の整理ができるのだ。あなたも経験がないだろうか。一生懸命取り組んでいるときには見えなかったものが、ちょっと距離を置くことで見えてきた経験が。物事と距離を置くことで、全体像やポイントが見えてくる。デスクに座って考えていても解決できなかったのに、ちょっと席を離れて気分転換した瞬間に良いアイデアが思いつくこともある。
デンマーク人は、行き詰まったときに、そのまま頑張り続けるとか、根性で粘り続けるといったアプローチをしない。行き詰まったら、あえて休んでみる。離れてみる。別のことをしてみる。距離を置いて、視点をズラしてみるのだ。そうすることで、良い解決策に辿り着けることは多々ある。
デンマークでは、ヨガを日常に取り入れて、心身を整える時間を持っている人も多い。取り組んでいることから少し離れて俯瞰することは、自分を整える行為でもあるのだ。
「有給消化率ほぼ100%」を実現できるワケ
いかがだろうか。そう考えると「休みの効果」というのは、たしかにありそうな気がしてこないだろうか。「休んで休んで休んで休んで休んでまいります。でも、結果は出す」は、意外と説得力のあるフレーズなのではないか。休んでいいどころか、休むからこそ結果を出せる。そう考えると、「休み」に対する罪悪感から解放されそうだ。
休むことを良しとするデンマークの職場では、1年間のスタートにまずメンバーの長期休暇の取得タイミングを調整する。メンバー全員の休暇を先にスケジュールに組み込んでおけば、有給休暇を取り損ねることもないし、仕事のプランも立てやすい。デンマークでは、有給休暇というのは、万一の時のバッファとして取得できる休みではなく、取得すべき休みなのである。おかげでデンマークの有給休暇消化率はほぼ100%である。
ちなみに、休んでいるときに本当にリラックスできるためには「他人の目」や「周囲の期待」からも解放されている必要がある。デンマーク人はウォーターフロントや公園の芝生に寝そべって日光浴をするのが大好きだ。
旅先で家族のリクエストや職場のお土産探しに必死になっている日本人を見ると、その根底に休むことへの申し訳なさや、休ませてもらっているという感覚があるように思える。「お土産は買わなくていい」とは言わないが、お土産購入はさっさと済ませて、誰かのためではない「自分の時間」をゆったり楽しんでも良いのではないか、と思うことはある。ちなみに、デンマーク人は長期休暇からも手ぶらで帰ってくることが多い。
芝生でゴロン。テラスでワイン。ゆったりとした時間をまるごと楽しんでいるデンマーク人の堂々とした姿には、感動するとともに、何か考えさせてくれるものがある。
「休んで休んで休んで休んで休んでまいります。でも、結果は出す」。それは、デンマーク人の人生の美学のようなものなのかもしれない。
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