「こんなに仲がいいのに、どうして」水谷豊が初めて明かす、及川光博との“不仲説”の真相と『相棒』の知られざる舞台裏〉から続く

「どうしてあんな根も葉もない嘘を書くんだろう」――水谷豊が、珍しく怒りを露わにした。娘・趣里のヌードシーンをめぐり、一部週刊誌が書き立てた“激怒報道”の真相である。

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 真実はその正反対。「若いときにしかできないから」と背中を押したのは、父・水谷自身だった。『水谷豊 自伝』(新潮社)より、娘・趣里との関係性をめぐる誤報と、父親としての本音を明かす。(全4回の4回目)


水谷豊 ©︎文藝春秋

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「背中を押したのに、激怒したことになっている」

 時は遡るが、水谷の監督作品の一作目、『TAP THE LAST SHOW』が公開された1年半後、ある映画が封切られた。タイトルは『生きてるだけで、愛。』(関根光才監督 18年)。菅田将暉と、水谷の娘の趣里がダブル主演した作品である。

 この映画で趣里は、躁鬱病に悩み、エキセントリックな言動を繰り返す女性を演じた。ラスト近くでは衣服を脱ぎ棄てながら、商店街を走るシーンがある。その演技力が高く評価され、彼女は高崎映画祭最優秀主演女優賞、おおさかシネマフェスティバル主演女優賞、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。当時28歳だった。

「どうしてあんな根も葉もない嘘を書くんだろう」

 水谷が怒っているのは、ある週刊誌が〈娘の趣里が映画で裸になったことを知らされていなかった水谷が、激怒している〉と書き立てたことである。記事によれば〈女優が裸になったら、これからの役が限られてくる〉というのが、怒りの所以だという。

「娘が中学を卒業してから、叱ったことはないです。叱る理由がない。それに、娘からあの映画について相談されたときに、僕は、若いときにしかできないから、と言って出演を勧めたんですよ。背中を押したのに、激怒したことになっている」

「裸のシーンがあったからといって…」水谷豊が語る真相

 趣里から相談を受けたとき、水谷は自分が『青春の殺人者』に出演したときのことを例に出して話したという。

「『青春の殺人者』では、結構裸のシーンが多くて、股間にボカシを入れられたりしているんです。僕が24歳くらいのときかな。素晴らしい作品だったので、演ってよかったと思っているし、『生きてるだけで、愛。』の企画にも同じ匂いを感じたから、娘に、これは演った方がいいと勧めた。裸のシーンがあったからといって、娘を叱るはずはない。それに、あの映画は僕も試写会で見せてもらって、いい作品だな、と感動したくらいなんですよ」

悪意の報道に傷ついた娘・趣里

 また、父娘の仲が悪いと報じられたのも嘘である。

「僕は父親との縁が薄かったので、子供にとって父親の存在がどんなものかよく分かっていなかったんです。趣里が生まれてからは、自分がイメージする父親らしくあろうと思ったけど、あるとき、そんなことを考えるより、正直に付き合っていくしかないと分かった。だから、父親然とした格好もつけないし、自分の若い頃を振り返ったら、娘に偉そうなことを言えるか、という気持ちがあります」

 にもかかわらず、まことしやかな噂が広まり、心配した知り合いから「そんなことで怒ったら趣里ちゃんが可哀想」と諫めるような連絡もあったという。

「娘は、まだそういう悪意の報道に免疫がないから傷ついたり、がっかりしたりしてね。無責任な作り話ばかりでしょう。ただ、『あれは一部のマスコミがやったことだから、マスコミ全体を一くくりにしないように。これからもいろいろあるだろうけど、いい人にも出会うから』と忠告しています。芸能の世界に落胆して、後ろ向きになってほしくないので」

 怒りを滲ませつつも、水谷は口元を緩めた。

「『相棒』で右京が時々犯人に向かって激怒するでしょ。僕が娘に激怒したという記事はそのせいかな(笑)」

「蘭さんには打ち明け、僕には内緒に」趣里の決意

 趣里が幼い頃は芸能の世界に来ないように、繰り返し言い聞かせてきた水谷だが、ある時期から応援する側に回った。彼女が演技者の道を歩む強い意志を持っていることを知った頃だった。

「娘はバレエが大好きで、イギリスに留学もしたけど、アキレス腱を切ったり、剥離骨折したりで、これ以上は無理だというときがきたんです。日本に戻ってきてからは、普通に大学へ通っていると思っていたのに、演劇の勉強を始めていたんですね。そのことを蘭さんには打ち明けて、僕には内緒にしていた。僕が知れば必ず反対されると思っていたんでしょう。親としては大丈夫だろうかと、色々な不安材料があったものの、最後には本人が望んでいることをやるのが一番いいということになって、今は自由に、好きなようにやってもらっています」

(水谷 豊,松田 美智子)