一人勝ち!サイゼリヤの謎…なぜインフレ時代に″安いままで美味い″のか!?

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人気の秘密は?

″外食控え″もどこ吹く風、サイゼリヤには長蛇の列ができていた。FRIDAY記者が都内の一等地にある店舗を訪れたのは、夕食にはまだ早い水曜日の夕方4時半。近くの飲食店には空席が目立っていたが、サイゼリヤの前にはすでに10組以上の客が入店を待っている。

ウェイティングリストに名前を記入してから約20分後、店員に名前を呼ばれて入店すると、約180席が埋まっており、年代、性別、国籍を問わない客たちは次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打っていた。

ターメリックライスにコクのあるホワイトソース、食べ応えのあるミートソース、とろけるチーズが絶妙に絡み合った『ミラノ風ドリア』は、町の洋食店にも劣らぬ絶品で、なんと税込み300円。一店舗あたり平均で一日100皿、全国約1000店舗合計で10万皿が注文される、サイゼリヤの看板商品だ。

追加で『小エビのサラダ』(350円)に、グラスワイン100円)を頼んでも、会計はたったの750円という驚きの安さ。記者と共にサイゼリヤを訪れたフードアナリストの重盛高雄氏は、赤ワインと『ミラノ風ドリア』でちょい飲みを堪能しつつ、「他のファミレスに比べても価格満足度がかなり高い」と絶賛する。

「昨今の物価上昇、原材料費高騰を受け、各社は次々と値上げに踏み切っています。たとえば、ファミレス大手のガストは’24年に約6割のメニュー価格を10〜20円上げ、昨年は卵を使用するメニューを10円値上げし、今年2月には平日限定ランチの価格を約50円上げました。

ところがサイゼリヤは、この状況下でも値上げをせずに料理のクオリティを維持している。他の店が高くなったと感じる若者たちが、サイゼリヤに流れていくのも納得できます」

重盛氏の言葉通り、サイゼリヤは低価格路線を突き進み、今年8月期は3年連続で最高益を更新する見込みだ。それに先んじて、今年1月には株価が上場来高値を更新。″値上げなき急成長″を続け、一人勝ちの様相を呈している。

いったいなぜ、サイゼリヤは安いままで美味いのか。全国の″サイゼファン″が抱く疑問を解く第1のカギは、「選択と集中」だ。

「一般的なファミレスは、和洋を問わず数多くのメニューを展開しますが、あくまでイタリアンレストランであるサイゼリヤはそれをしません。安価なお子様セットを用意し、おもちゃをつけて子供を喜ばせ、家族全員の会計で売り上げを立てることもしない。つまり、扱う食材を減らし、物流効率を上げ、店舗従業員の負担も軽減しているのです。

パスタを例にとれば、『タラコソースシシリー風』(400円)や『カルボナーラ』(500円)、『イカの墨入りセピアソース』(500円)、『ペペロンチーノ』(300円)といった定番のラインナップは充実していますが、驚きを与えるような創作パスタはありません。それでも、他店に比べて圧倒的に安いので、不満に思う人はいないでしょう。ドリンクバーで用意されている飲み物の種類も他店に比べて少ないものの、定番のドリンクやカプチーノ、エスプレッソはきちんと揃っており、単品で300円、料理とセットで注文すれば200円と驚きの安さです」(同前)

こうした戦略は、「安かろう悪かろう」のイメージを持たれやすい諸刃の剣だ。しかしサイゼリヤは、メニューを絞り込みながらも、イタリアから直輸入したエクストラ・バージン・オリーブオイルを使い放題にするなど、客を喜ばせる″大盤振る舞い″を同時に行っている。

とことんムダを省く

捨てるものは捨てる、こだわるものはとことんこだわる--。このメリハリが、サイゼリヤの薄利多売経営を支えているのだ。「選択と集中」は、メニューのバリエーションだけでなく、店舗運営においても徹底されている。飲食業プロデューサーの須田光彦氏が話す。

「セントラルキッチンで作られた料理を個包装にして店舗へ配送しているので、従業員はそれを必要に応じて温め、パッケージを開けて皿に盛るだけ。厨房には包丁さえなく、新メニューを作る際は、その調理に適した機械の製造から着手するこだわりぶりです。サイゼリヤの創業者である正垣泰彦氏が『おいしいものが売れるのではない。売れているものがおいしいのだ』という言葉を残しているように、店舗での調理よりも、顧客に高品質の食品を安定的に、より多く提供することに特化していると言えます。いわば、サイゼリヤは飲食店ではなく食品販売業者なのです」

飲食店運営における最大の出費は人件費だが、サイゼリヤはそのムダも省(はぶ)く。

「セルフレジを導入しており、客はほとんど店員と接触せずに食事を終えるケースも増えてきた。注文用のタブレットは維持費が高額なので導入せず、客のスマホを使って注文を受けるQRコードスタイルを導入しています。

一方で、サイゼリヤはメニューブックにこだわっている。多くの飲食店は、同じ大きさの写真を単純に並べがちで、どの商品を売りにしているのかがわかりづらいのですが、サイゼリヤは『ミラノ風ドリア』や『小エビのサラダ』などを大きく掲載し、一目で人気商品がわかる工夫をしているのです」(同前)

サイゼリヤは広告を打たず、キャンペーンをせず、割引クーポンの配布や名店コラボ商品の開発もしない。以前は100株以上を保有する株主に2000円分の食事券を発行していたが、’23年8月末分でこれを廃止し、現金配当に切り変えることで送料分の負担を削減した。

『FRIDAY』2026年4月17・24日合併号より