医師が指摘する「筋トレ」「BCAA」の誤解。「蛋白質を摂取しすぎると筋肉にならないどころか危険性もある」の意味

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マグロの赤身とヒラメの白身。

その「違い」が人間にもあることをご存じでしょうか。

筋線維には「赤筋」と「白筋」の2種類があり、赤身の魚は筋肉の大部分が赤筋で、白身の魚は白筋でできています。人間はその2種類が混ざり合っており、どちらの筋繊維が多いかで「体質」も変わっていくのです。日本人は赤筋が多いのですが、鍛えると太くなるのは白筋。つまり、日本人は鍛えても筋肉がつきにくい「体質」といえます。

このように、同じ人間であっても、外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がないどころか、逆効果ということさえあるのです。

見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための健康法を、徹底解説してロングセラーとなった『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』が全面改訂されて、『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』として新たに『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』が刊行されました。本書は発売即重版となるなど、大きな話題を呼んでいます。

本書から、とくに注目の話題をご紹介していく連載企画第2回は、ずばり日本人の体質と筋肉トレーニングについて。前編では冒頭にご紹介した「赤筋」「白筋」のことを中心に解説しました。

後編では「筋肉を鍛えるために蛋白質をもりもり摂ればいいのでは」という疑問に答えます。

*本記事は、『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

蛋白質をもりもり摂取しても、期待通りに筋肉にならない

49件の報告を総合的に分析した研究から、体重1kgあたりで1.62gを超える量の蛋白質を摂取しても、筋肉はそれ以上、大きくならないことがわかりました。これは、「日本人の食事摂取基準」が示す目安量の1.5倍くらいの量です。

あまった蛋白質はエネルギー源に回され、消費しきれなかったぶんは脂肪になって体につき、肝臓や腎臓の機能をそこなうこともあります。とればとっただけ筋肉になるわけではないのです。

そして、基礎代謝には意外な側面があります。

減らそうとしている脂肪組織も、エネルギーを消費している

じつは筋肉だけでなく脂肪組織もエネルギーを消費しているので、脂肪が1kg減ると基礎代謝量が1日あたり5kcal下がります*。つまり、激しいトレーニングを通じて筋肉が1kg増え、脂肪が2kg減ったとすると、基礎代謝量の増加は差し引き10kcalになってしまうのです。

これでは話になりません。本当にやせたいなら、カロリーの総摂取量を減らすとともに、日常生活のなかでよく動いてカロリー消費を積み重ねるほうが確実です。

では、蛋白質より吸収しやすく、健康に役立つとして近年話題のアミノ酸はどうでしょうか。

注目の分岐鎖アミノ酸(BCAA)の効果

アミノ酸は蛋白質を分解するとできる成分で、全部で20種類あります。そのなかで分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれる3種類は、運動で傷ついた筋肉の回復を早め、筋肉がつき、運動成績が上がると考えられていました。

そのため、スポーツ選手から運動習慣のない人まで、さまざまな人を対象に世界中で多数の研究がおこなわれてきました。しかしながら、運動後の筋肉痛が早めにおさまるというデータはあるものの、結果はばらばらで、筋肉痛が軽かった場合でさえ、全身の疲労感や筋肉の損傷の程度、運動成績には影響しないとするものが大半でした。

BCAAが筋肉の回復を促す可能性は否定しませんが、筋肉がつくとか運動成績が上がると考えるのは、ちょっと楽観的すぎるような気がします。

バランスよく食べ、専門家に相談しながら運動メニューを組み立てるのが先でしょう。

4月11日公開予定の第3回では、オリーブ油や亜麻仁油など、注目の「体に良い油」。本当に体に良いのか、検証していきます。

記事中の参考記事

*脂肪も基礎代謝量に関わっている:田中茂穂、「総論 エネルギー消費量とその測定方法」『静脈経腸栄養』24(5)( 2009).

【前編を読む】悲報。30万人に健康指導・診療してきた医師が指摘する「日本人は、いくら頑張って筋トレしても、やせ体質にならない」。その納得の理由