中国人転売ヤー「ポケカでマネロン」のカラクリと台東区4億円強奪事件の「深層」
キャラクターグッズやブランド品を日本で買い漁り、自国に持ち帰って売却し利鞘を得る……これが在日中国人の転売ビジネスの典型だった。しかし最近、このパターンに当てはまらない転売行動を見せる中国人が出現している。
「1000万円分ほどカードを爆買いしたかと思えば、数日後にまた戻ってきて、買ったカードを売る人が増えています。彼らが使用するのは、中国の『銀聯カード』や支払い上限のないプラチナクレジットカード。『ニセモノにすり替えているんじゃないか』と疑ったこともありましたが、そうではなく、買ったものをそのまま売るんです。うちだけじゃなく、他の店からも同様の話を聞いています」
そう話すのは、東京・秋葉原のトレーディングカードショップの店員だ。中国人が売買を繰り返しているのは、昨今大人気のポケモンカード(以下、ポケカ)だという。
この謎を解く手がかりは、中国から海外への資金持ち出しを可能にしてきた「地下銀行」の存在にある。中国政府は自国民に対し、海外への資産移転を厳しく規制しているが、世界各国で資金をプールしている地下銀行を用いれば、中国国内で手渡した金を海外で受け取ることができる。だが中国人の資産逃避を支えてきた地下銀行も、近年は構造的問題を抱えているという。
資金の流れが偏ることを防ぐため、地下銀行は同業他社とも連携して多国間での資金の往来を活発にし、プール金の偏りが生じない仕組みになっていた。しかし最近は、中国から海外へ向かう資金逃避が圧倒的。中国側に資金が溜まる一方だという。
【前編を読む】中国人転売ヤー「ポケモンカード」と「地下銀行」でマネロンの実態…驚愕のスキーム
ポケカ転売の「からくり」
資金偏在の解消手段として用いられているのが、ポケカ転売なのだという。どういうわけか。
「銀聯カードなど中国の銀行口座に紐づいている決済手段で、日本でポケカを購入して日本で売却すれば、支払いは人民元建てで行われ、手元には日本円が残る。つまり、中国から日本にキャッシュを移動できるということ。このからくりを利用することで、中国に偏る資金を日本に配分できる。
転売自体で儲からなくても、資金移動さえできればいい。ポケカでなくても、iPhoneやロレックスなどを日本で買って売却する方法もあるが、保管や持ち運びが便利で、売買価格の幅が狭いポケカが重宝されている」(同前)
ただ一方で、こうしたポケカによる資金移動の手軽さは、地下銀行の存在を危うくしているという。A氏が続ける。
「当たり前だが、トレカショップでのポケカ売買は地下銀行業者を使わなくても、誰でもできてしまう。地下銀行を使った場合の資産移転の手数料は移転額の8%前後が相場だが、自分でやればコストを浮かせることができるからね」
ここでA氏は、本誌記者に2つのデータを示した。ひとつは中国国家外貨管理局が公表している「外貨販売量」の月次グラフ。そしてもうひとつは「みんなのポケカ相場」によるPSA10カードの取引量の推移を示すグラフだ。中国での外貨販売量は直近で、'24年12月、'25年9月、そして同年12月に増えている。PSA10カードの取引量も、奇しくも同じタイミングで増加している。
A氏はこれを根拠に、
「外貨販売量は人民元からの資産移転の規模を計るひとつのデータ。これがポケカ取引と連動しているということは、両者が密接に関わっていることの証左だ」
と、主張する。
続発した「現金強奪事件」
なじみのない人からすると、ポケモンカードが中国人の資産逃避の一大ツールとして利用されていることは意外かもしれない。だが、中国人富裕層による驚きのマネロン方法は他にもある。
今年1月29日、東京都台東区で男女5人が現金約4億円を奪われる事件が発生。翌30日未明には、羽田空港駐車場で男性4人組が襲撃されたものの、うち2人はそのまま香港に渡航、現地で再び襲われて約5100万円が奪われた。両事件の被害者はともに両替商で、香港への資金移動中を狙われたとされる。
被害者らが多額の現金を持ち運んでいたのは、香港での金塊購入目的だったという憶測も飛び交った。過去に、消費税のない香港で金地金を購入し、日本に無申告で持ち込んだ後、消費税付きで売却して利鞘を得るスキームが流行したためだ。
だが、元国税局職員で税理士の松嶋洋氏はこう指摘する。
「'19年の税制改正により、貴金属買い取り業者は出所不明の金塊を消費税付きで買い取らなくなった。今も消費者向けに販売したり、溶解・再精錬して小口で買い取り業者に売却したりして、輸出による還付で消費税を受け取ることは可能ですが、10%の利鞘だけではコストに見合いません」
日本流入が止まらない中国マネー
では、日本・香港で両替商を襲った事件は、なぜ起きたのか。
香港の地下経済に詳しいX氏はこう話す。
「中国大陸と地続きである香港には、現金や貴金属をハンドキャリーする形で中国から持ち込まれた逃避資産が滞留しています。その多くは金塊や仮想通貨として保管されていることが多い。強盗被害にあった両替商らは、この金塊や仮想通貨を買うために、多額の現金を運んでいたのでしょう。
逃避資産が姿を変えた香港の金塊や仮想通貨は、中国当局に監視されている金融機関の利用は避け、対面で取り引きするのが基本です。表に出せない資産なので、正規市場より割安で取り引きされることが多い。これを買い付けて日本で売却すれば多額の利益が出る」
香港での強盗事件では、実行犯として日本人3人と中国人や香港住民の計6人の男女が香港警察に逮捕された。うち1人は、襲撃された側でありながら犯人側と内通していた日本人だ。
「香港側の取引相手から彼らが大金を持って香港に向かうという情報を得た組織が、犯行に及んだのでしょう。中国からの資産逃避には、反社組織が関わっていることも多い」(X氏)
次々と新たな手法が生み出されながら、中国マネーは日本に入ってきている。
「週刊現代」2026年3月30日号より
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