『冬のなんかさ、春のなんかね』©日本テレビ

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 序盤、文菜(杉咲花)がコインランドリーでひとり本を読んでいるシーンがある。前後のシーンと服装が異なっているので、どの時系列にあたるのかは判然としない。それでもこの場所は、第1話の冒頭でゆきお(成田凌)と出会ったのと同じコインランドリーだ。1週の休止を経て2月25日に放送された『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)は第6話。全10話で展開すると今泉力哉のX(旧Twitter)で見かけたので、話数的にはここから後半戦に突入することになるわけだが、蓋を開けてみればまだ前半戦(もしかすると、ここまでが、かもしれないが)のなかにあるようだ。

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 いつものように山田(内堀太郎)とホテルで会う文菜は、そこで“昔好きだったけれど恋人になれなかった”相手に送ったという長文のメールを見せる。過去のメールに残った「あまりにも病的で暴力的」な言葉を前に、「人を好きになって自分を見失うのは絶対嫌だ」とつぶやく文菜。その相手というのが、ミュージシャンの田端亮介(松島聡)という青年であり、2年前の冬、亮介に呼び出されて彼の家に会いに行ったときのやり取りを振り返ることになる。

 そんな亮介との関係も然り、前回描かれた大学時代の恋人――佃(細田佳央太)との一連も然り、過去の恋愛が如実に現在の文菜自身を作りだしているわけだが、それ以上に今回はっきりと見えてくるのは、小太郎(岡山天音)の位置付けである。大学時代のバイト先の同僚であり、小太郎は文菜に対して明確に好意を向けているが、2人の関係は腐れ縁である以上でも以下でもない。

 これまでは単に文菜が自分を好きでいてくれる相手を切らずに近くに置いているように見えることもあったが、今回描かれる2年前の回想を通して、文菜は小太郎と自分自身をどうしても重ねてしまうことがわかる。自分を好きになってくれない人を好きになってしまう。呼び出されれば、相手の家に行ってしまう。文菜が亮介にしたように、キスをねだって断られてしまう。自分自身を客観的に見ることはできないに等しい。だが、時には客観的に見ることも必要であり、そのためには自分自身の近くにいる自分自身に最も似ている存在を見るしかない。そういった意味で、ある種の運命共同体のようだ。

 ところで、亮介に呼び出された文菜は、そこで彼には他に好きな人――幼なじみでアイドルをしていた麻衣子(鈴木愛理)――がいることを知らされる。だが麻衣子はレズビアンであり、亮介の想いは成就することはない。麻衣子が遠回しに亮介を振るために書いた詩を、亮介は文菜の前で弾き語りで歌う。そのシーンの時点ですでに回想シーンなのだが、さらに亮介と麻衣子の回想へと飛び、そこから歌声の主は麻衣子へと切り替わる。

 その流れは文菜と山田のホテルでの一幕――山田が文菜の長文メールを音読していき、途中からそれが文菜のモノローグへと切り替わっていく一連を反復させる。しかし亮介と麻衣子の歌声は重なり合うけれど、山田から文菜に移ったメールの文言は重なり合わない。あたかも亮介と麻衣子は恋人になれないけれども深く通じ合っている関係であり、対照的に文菜と山田はまるっきりそうではないことを暗に示しているかのように。

(文=久保田和馬)