乃木坂46 久保史緒里、9年のアイドル人生に幕 丁寧に歩み続けた道のり、生田絵梨花・山下美月らの存在
乃木坂46 久保史緒里の卒業が目前に迫っている。11月26日、27日に神奈川・横浜アリーナで開催される『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』で約9年間のアイドル人生に区切りをつけることになる。
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■アンダー楽曲「日常」の存在、北野日奈子ら先輩たちから寄せられた言葉
2016年に3期生として加入して以来、歌唱力と表現力を武器に、グループの歩みを支えてきた久保。近年は俳優業でも活躍し、大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)や連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)など話題作への出演が続いたが、それは決して偶然ではなく、どんな現場でも彼女が誠実に作品と向き合い、その経験を丁寧に積み重ねてきた結果だと言えるだろう。
歌や芝居で見せる表現力だけでなく、ラジオのパーソナリティーという立場でも培われたであろう言葉を選ぶ慎重さや、仲間を見守る眼差しも久保の魅力だった。楽曲でセンターを務めた経験はもちろん、先輩から受け取ったステージとの向き合い方や心構えが、今の彼女の芯の強さに繋がっているのだと思う。
久保にとっての乃木坂46だった証は、華やかな実績だけではない。自分には「何もない」と感じていた少女が、仲間と支え合いながら少しずつ形にしていった成長の道のりそのものだ。20thシングル表題曲「シンクロニシティ」で初選抜され、福神メンバーに。しかし、体調不良で一時活動を休止。22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』期間にはアンダーとして活動した。
久保の表現の土台を大きく支えてくれたのが、そのアンダーとして過ごした時間だったのだろう。「#乃木坂ダンスプレイリスト」で同シングルのアンダー楽曲「日常」を選び、「この衣装を着ると2018年のあの頃を思い出せます」(※1)と語るほど、久保にとっては重要な転機にもなった。歌声の印象が先行しがちな彼女だが、ステージで見せるキレのある動きやしなやかさには、先輩である中田花奈や渡辺みり愛らが築いてきた“乃木坂46のダンス”の系譜が確かに息づいていることが伝わってくるのだ。
この時期の久保を支えていたのが、「日常」でセンターを務めた北野日奈子や伊藤かりん、伊藤純奈という先輩たちだった。久保は北野を“大好きな先輩”であり“ヒーロー”と公言しており、自身が休養していた時期には、その言葉が大きな支えになっていたと語っている(※2)。『3期生単独ライブ』ではソロパートを任されることが多かったが、当時の久保は「自分の実力が認められたわけではない」と感じていたという。そんな彼女が前を向けたのは、近くで見守り続けてくれた先輩たちの励ましがあったからだ。「乃木恋公式YouTubeチャンネル」では、久保は「伊藤かりんさんと伊藤純奈さんに支えてもらって、あそこからソロで歌う機会が増えた」と振り返っている(※3)。一つひとつの言葉や背中に触れながら積み重ねてきた経験は、久保にしか出せない芯の強さへと変わっていった。
そして、久保のアイドル人生を語る上で欠かせない存在が、歌や演技に真正面から向き合う姿勢を見せた生田絵梨花だろう。歌唱力やミュージカルでの活躍など、圧倒的な才能で乃木坂46を牽引してきた生田は、久保にとって憧れであり、いつか追いつきたい目標であり、背中で多くを示してくれた先輩だった。ふたりは「きっかけ」で大切なパートを任され、2020年に出演した音楽番組では映画『アナと雪の女王』の「生まれてはじめて」をデュエットで披露したこともある。生田が乃木坂46で“歌姫”というポジションを築いた存在だとすれば、久保はその背中を追い、自身の声と向き合い、次の世代へとその役割を繋ぐ役割を担ってきた存在なのだと思う。
■『Venue101』生田絵梨花との絆、同期 山下美月“くぼした”の関係性
11月22日に放送された『Venue101』(NHK総合)のスペシャルロケ企画では、卒業を控えた久保のもとに、生田が登場。フォーメーション発表や『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)のリハーサルなど、数えきれない時間を過ごしてきた場所であるレッスン室へ足を踏み入れると、こらえきれず、久保の目に涙が浮かぶ場面も。生田は「番組(『Venue101』)に来てくれるたびに、どんどんたくましくなっていって、しっかり乃木坂46を率いる存在になっていた」と優しく語り、後輩の成長をまっすぐに受け止める。その言葉に、久保は「初めてセンターに立った時、泣き虫のままじゃいけないと思った」「いくさん(生田)に会うと、一瞬で後輩に戻ってしまうんです」と胸の内を明かしていく。憧れ続けた先輩の前では、どれだけ努力を重ねた姿を見せても、ふと素の自分に戻れる。そんな帰る場所のような安心感の中でふたりが長い時間をかけて育んできた温かな絆が見えたようだった。
同期の山下美月も、久保にとっては欠かせない存在だっただろう。互いに補い合い、グループの外でも俳優としてともに活動し、刺激し合ってきた。ファンの間で“くぼした”と呼ばれてきたふたりの関係性は、同じ時間を共有して支え合う、まさに理想の同期だったように思う。32ndシングル表題曲「人は夢を二度見る」でWセンターを務めたふたりの姿は、3期生としてともに歩んできた時間が確かな形になった瞬間だった。そして、山下の卒業後も、その時間は久保の背中をそっと押し続けているのだと思う。山下の卒業コンサートで、久保が語った「器用に見えて不器用な山が大好きでした」という言葉には、長い時間を共有してきた同期にしかわからない関係性が表れていた。
自身がそうだったように、久保を自然体で支えていたのが、後輩の田村真佑。責任感が強い久保にとって、田村は肩の力を抜いて笑い合える相手だったのだと思う。ラジオで見せるゆるい掛け合いや、『13th YEAR BIRTHDAY LIVE』で久保が「頼りにしちゃうことが多い」と田村について語ったエピソードなど、田村の前では飾らない自然体な久保が顔をのぞかせることも多かったような気がする。役割や立場を一度離れ、素の自分に戻れる関係がそばにあったことは、長くグループの中心を担ってきた久保にとって、確かな支えになっていたはずだ。
かつて「自分には何もない」と語っていた少女は、今では朝ドラや大河の現場で信頼される俳優へと成長し、乃木坂46の歴史にその名を刻んだ存在として旅立っていく。横浜アリーナで行われる卒業コンサートは、彼女の歩みの集大成であり、グループの中で過ごしてきた時間そのものの証でもある。久保が守り、積み重ねてきたものは、確かに後輩たちへ受け継がれていくだろう。その未来が、また誰かの背中をそっと支えていくはずだ。
※1:https://www.youtube.com/shorts/HTqcNJ7tjvk※2:https://hominis.media/category/idol/post4682/※3:https://www.youtube.com/watch?v=xdyKH_wSoV4
(文=川崎龍也)

