「まだどこからもオファーが来ていません」焦りは募るが、悲観すべきではない。興國10番がプロの兄からかけられた言葉
「正直、この夏の期間は思い通りにいかないことばかりで、『何でやろ?』と思うことが多くて...。めちゃくちゃ辛くて、逃げ出したくなったこともありました。でも、それだけ自分の実力がまだまだなので、日々の練習で100%を出して成長していくしかない。一番はプリンス関西で活躍して、選手権予選で優勝に貢献していかないと、プロからオファーが来ることも、U-17日本代表の最終メンバーに入ることもないと思うので、ここで全試合、勝たせにいくつもりでやろうと思っています」
これだけは言い切れるのは、今の樺山は決して悲観すべき状況ではないということだ。正式オファーこそ来ていないが、すでにJ1、J2クラブの練習に参加しており、プロクラブからはリストアップの対象選手であることは間違いない。8月にはスペインに渡り、スペイン4部リーグに所属するUEサン・アンドレウの練習に参加。高い評価を得たという。
樺山の周りには可能性という言葉がたくさん転がっている。あとはそれを今後のプレーで拾い上げていくのみ。それを伝えると、彼は少しだけ表情を緩ませた。
「それはお兄ちゃん(樺山諒乃介/ギラヴァンツ北九州)にも言われました。『変に迷わずに、自分が決めた目標に向かってやり切れ』と。やっぱりそこしかないですし、むしろ今は前向きな状況ですよね。正直、今の僕は勝った試合の終わりとは思えない暗さと歯切れの悪さが出てしまっていますよね。でも、このまま飲み込まれていくのは嫌です」
悩めば悩むほど、「何でやろ?」と思えば思うほど、過去ばかりを気にして立ち止まってしまう自分がいる。だが、変えられるのは過去ではなく、未来しかない。そのためには前に進み続けるしかない。
「もう、1試合1試合に気持ちを込めてプレーする。プリンス、選手権予選を全力で走り抜けて、その先にあるプレミア昇格、選手権優勝を目ざすために、今はピッチの上で集中あるのみですね」
自分に強く言い聞かせながら、必死で前を向こうとしている。その姿勢、経験こそがこれから先、樺山をより強くする財産となるだろう。
チームは兄・諒乃介が2年生だった時に初出場して以来、選手権には一度も出ていない。あの時の兄と同じ背番号10を託されているだけに、いつもアドバイスをくれる兄の思いも背負って戦うという使命もある。
可能性と想いを両手に抱えて。樺山文代志は高校ラストイヤーをなりふり構わずに走り抜く。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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