こう語る樺山の表情はどこか堅かった。劇的な勝利を収め、かつ決勝点をアシストした選手とは思えないほどのものだった。その理由は明らかだった。

「もしかすると今が高校に入ってから一番苦しい時期だと思っています。高卒でプロになるという考えは一切変わっていませんが、まだどこからもオファーが来ていません。それにU-17日本代表でもU-17アジアカップ(4月)に出場できて、その直後のスペイン遠征(6月)はメンバーに入れたんですけど、前回のフランス遠征(8月)には入れずに、おそらく今回の国内合宿も正直厳しいのではないかと感じています」

 高校3年生の9月になって、入学時に思い描いていたプランとは異なる現実を突きつけられている。同年代の選手がJリーグで活躍したり、内定を得たニュースを見たりするたびに焦りが募り、さらにターゲットにしていたU-17W杯(11月)の出場も黄色信号が灯り始めている。

 この状況に苦しむのは理解できる。だが、それでもリーグ戦は来るし、来月からは高校最後の選手権予選が始まる。立ち止まっている暇は1秒もないし、それは本人も理解している。

「正直、この夏の期間は思い通りにいかないことばかりで、『何でやろ?』と思うことが多くて...。めちゃくちゃ辛くて、逃げ出したくなったこともありました。でも、それだけ自分の実力がまだまだなので、日々の練習で100%を出して成長していくしかない。一番はプリンス関西で活躍して、選手権予選で優勝に貢献していかないと、プロからオファーが来ることも、U-17日本代表の最終メンバーに入ることもないと思うので、ここで全試合、勝たせにいくつもりでやろうと思っています」
 
 これだけは言い切れるのは、今の樺山は決して悲観すべき状況ではないということだ。正式オファーこそ来ていないが、すでにJ1、J2クラブの練習に参加しており、プロクラブからはリストアップの対象選手であることは間違いない。8月にはスペインに渡り、スペイン4部リーグに所属するUEサン・アンドレウの練習に参加。高い評価を得たという。

 さらに今は落選しているとはいえ、今年はU-17アジアカップ(U-17W杯アジア最終予選)に出場しているし、コンスタントにU-17日本代表に呼ばれている実績があるだけに、今後の活躍次第では最終メンバーに滑り込む可能性だって十分にある。

 樺山の周りには可能性という言葉がたくさん転がっている。あとはそれを今後のプレーで拾い上げていくのみ。それを伝えると、彼は少しだけ表情を緩ませた。