『ジュラシック・パーク』© 1993 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC. AND AMBLIN ENTERTAINMENT, INC. All Rights Reserved.

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 ユニバーサル・ピクチャーズの人気シリーズにして、スティーヴン・スピルバーグの映画製作会社アンブリン・エンターテインメントの代表作でもある、『ジュラシック・パーク』シリーズは、2025年8月8日公開の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』で通算7作目となる。最新作公開を記念して、スピルバーグが自ら監督したシリーズ第1作『ジュラシック・パーク』(1993年)を振り返ってみよう。

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 本物の恐竜が生息するテーマパークが舞台となるだけに、製作にあたって恐竜たちをどのように描写するかが課題だった。スピルバーグはILM(ジョージ・ルーカスが設立した視覚効果スタジオ)にCGI制作を依頼し、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)や『インナースペース』(1987年)などアンブリン製作の映画でアカデミー視覚効果賞を受賞していたILM所属のデニス・ミューレンがCG部署の監督を務めた。

 それとは別にフルスケールモデルの動く恐竜も作ることになり、特殊メイクアーティストのスタン・ウィンストンが起用された。ウィンストンは、コンピュータ制御で動くロボット仕掛けの生物“アニマトロニクス”も得意分野で、『エイリアン2』(1986年)のクライマックスに登場する巨大なエイリアン・クイーンもウィンストンの仕事のひとつだ。『ジュラシック・パーク』の映画後半で、建物内に侵入してくる肉食の小型恐竜ヴェロキラプトルは、ウィンストンが制作した実物大のスーツとCGIモデルが併用されており、人間とヴェロキラプトルが同じ画面に収まるカットでは実物モデルが恐怖感を上手く演出している。豪雨の中で主人公たちを襲うT・レックス(ティラノサウルス)も実物大の造型物が用いられ、対峙する俳優たちの演技も迫真だ。

 ソフトウェアとCG技術の目覚ましい発展によって、2020年代の今なら、どんなものでもスクリーン上に作ることが出来る。そこそこ低予算な映画でも、割と見栄えがする作品に仕上げられるのも、時代と共に発展してきたデジタル技術の賜物といえるだろう。ましてや大作の『モンスター・ヴァース』シリーズにおけるゴジラやコング、派手な視覚効果と超能力バトルが売り物のマーベルヒーロー作品など、架空のキャラクターの戦いを見過ぎた我々はもうCGIで作られた映像に慣れてしまっている。しかし1993年当時に、それまでのストップモーションアニメで表現した怪物のようなカクカクした動きではない、リアルな恐竜を動かした『ジュラシック・パーク』は全世界の観客を驚かせるに足る画期的な映画だった。

 『ジュラシック・パーク』は最初の公開時に全世界で9億7千万ドル(2025年の紙幣価値で約1,445億円強)もの興行収入をあげた。これは1997年の『タイタニック』に追い抜かれるまで、世界最高の興行収入を記録した映画で、まさに「誰も観たことがない映像」だったのだ。この当時のビデオ市場で、洋画のセルビデオの一般的な価格帯が平均14,800円だったのに対し、初めてビデオグラム化された『ジュラシック・パーク』のVHSソフトは20,000円という高価格だった。この強気な定価でも売れる映画と思われたのだろう。同作のDVDが1,000円台で買える現代からすると、嘘のような値段だ。 キャストの方にも目を向けてみよう。生きた恐竜がいる自然公園「ジュラシック・パーク」を考案する大富豪ジョン・ハモンド。白髭をたくわえた老人でありながら、子供のような純真さを持つ情熱的な男を名優リチャード・アッテンボローが演じている。そのハモンドに呼び寄せられ、パークを訪れる古生物学者アラン・グラントにサム・ニール、古植物学者エリー・サトラー役にローラ・ダーン。それにカオス理論の学者イアン・マルコム役のジェフ・ゴールドブラム。ハモンドに招かれた彼ら(と、私たち観客)が、パーク内で初めてブラキオサウルスを目にする瞬間の感動は格別だ。

 また、病気で動けないトリケラトプスを目の当たりにし、恐竜を間近に見て涙を流すほど感動するサトラーと、「子供の頃から一番好きな恐竜だったんだ」と全身で抱き着くグラント。このシーンはダーンとニール両者の演技が素晴らしい。しかしパークに着いた頃からマルコムが「生命の強さを侮ってはいけない」と警告していたように、人間が恐竜を管理することへの困難が徐々に表れていく。シリーズを通して、恐竜という大きな生き物をコントロールする難しさと、逆境に立ち向かう人間の強さを常に描いており、そのテーマ性は第1作から健在である。

 危機を切り抜けていくなかで、子供が苦手だったグラントが、ハモンドの孫娘アレクシスとその弟ティモシーと疑似親子のような関係を築いて行く過程や、若い頃に子供向けのインチキ興行をやっていたハモンドが、本物の恐竜パークを作りたいと思った切実な心境が明かされていくドラマも見応えがある。この後、アッテンボローは第2作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)に、ニールとダーンの学者コンビは第3作『ジュラシック・パークIII』(2001年)と第6作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022年)に、ゴールドブラムは第2作と第5作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018年)と第6作にそれぞれ同じ役で出演し、このシリーズに貢献している。

 『ジュラシック・パーク』の日本語吹替えは1種類しか制作されていないため、テレビ放送では同じ物が使われているが、富山敬(ニールの声)、弥永和子(ダーンの声)、永井一郎(アッテンボローの声)、梁田清之(サミュエル・L・ジャクソンの声)など、すでに他界された声優が多く出演している。ちなみにハモンドの孫娘役アリアナ・リチャーズの声は、人気声優にして歌手の坂本真綾が担当しているので、こちらもご注目を。今や一大フランチャイズに成長した『ジュラシック・パーク』シリーズ。その始まりの第1歩目がいかなるものだったのか、地上波放送で始めて観る人もどうぞお楽しみに!(文=のざわよしのり)