相手との行き違いをなくすには、どんな言葉遣いをすればいいか。ANAの元CAで研修講師の三上ナナエさんは「丁寧に伝えたつもりでも、曖昧な伝え方だと相手との齟齬が生まれてしまう。誰が聞いても同じように伝えるには、言葉選びを慎重に行うことだ」という――。

※本稿は、三上ナナエ『一生使える「敬語&ビジネスマナー」』(大和出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/EastFenceImage
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/EastFenceImage

■細かく伝えることで、行き違いは圧倒的に減る

ビジネス上のやりとりで、私が一番気をつけているのは「誤解や行き違いを生まないこと」です。自分はしっかり連絡したはずなのに、ちゃんと伝わってなかった……、このような行き違いは、後々大きな問題につながるからです。

行き違いを生まないための一歩は、「曖昧な表現」で相手を迷わせないこと。

お願いやお断りのときは、相手に配慮しながらも、いかに的確に伝えるかが大切なポイントです。

特に日にちや時間感覚、大きさ、数に関する認識のすれ違いは、いろんな場面で起こりやすく、トラブルの元になりやすいものです。

例えば、電話の相手から「お調べして、折り返しお電話をしてもよろしいでしょうか?」と言われたとします。

あなたは、何分後に電話がかかってくると予想しますか?

何人かに尋ねてみると、「5分」「15分」「30分」「1時間」と答えはさまざまでした。

状況にもよりますが、5分後だと思って待っていて、1時間経ってもかかってこないとしたら、「忘れられたのかな?」と不安に思う人もいそうです。

この場合は、「お調べいたします。恐れ入りますが、確認が取れるまで最大1時間ほどかかる可能性がございます。よろしいでしょうか」と伝えるのがベストです。

なるべく具体的な数字を使って、細かく伝えることが必須です。

■「日にち」「時間」「大きさ」は曖昧にしない

丁寧に伝えたつもりでも、相手との齟齬(そご)があっては仕事に支障が出ます。伝えたい情報を、同じ形で受け取ってもらえるように工夫しましょう。

●「今週中にお送りします」→「10日(金)の午前中までにお送りします」
●「ご確認くださいませ」→「ご確認いただき、変更点がございましたら、明日14時までにご連絡いただけますでしょうか」
●「小さめでお願いします」→「名刺ほどのサイズでお願いします」
●「伊藤はしばらく休んでおります」→「伊藤は来週の月曜日に出社いたします」
●「30部プリントアウトし、1部を鈴木さんにお渡しください(計30部なのか、31部なのか不明)」→「30部プリントアウトし、その中の1部を鈴木さんにお渡しください。29部は私に渡していただけますか」

このように、誰が聞いても同じように伝わることが大切です。そのための言葉選びは、慎重に行いましょう。

■配慮や優しさを伝える「クッション言葉」の効果

クッション言葉とは、本題に入る前にひと言添えて気遣いを示す言葉です。

三上ナナエ『一生使える「敬語&ビジネスマナー」』(大和出版)

主に「お願い・依頼」「お断り」「意見・反論」する場面で使います。

言いにくいことを、そのままストレートに伝えると、相手は心の準備ができず、素直に受け取れなかったり、ショックを受けてしまうことがあります。

その名の通り、衝撃を和らげるクッションのような役割を果たすのです。

また、クッション言葉から会話をスタートすると、自然に相手を尊重する柔らかな口調になるため、言いづらい話も切り出しやすくなるでしょう。

なお、対面でのコミュニケーションに限らず、温度感やニュアンスが伝わりづらい文書やメール、電話でも、積極的に使うことをおすすめします。一方的な印象になることを防ぎ、「配慮」や「やさしさ」が伝わります。

信頼関係を築くうえでも、クッション言葉は欠かせないものなのです。

お断りするとき

「あいにく」「残念なのですが」「申し訳ございませんが」「心苦しいのですが」

例「申し訳ございません、○○は本日、休みを取っております」

協力してほしいとき

「恐れ入りますが」「お手数をおかけいたしますが」「お忙しいところ恐れ入りますが」

例「恐れ入りますが、○日までにお返事をいただいてもよろしいでしょうか」

負担のあるお願いをするとき

「ご面倒をおかけしますが」「ご迷惑とは存じますが」「こちらの都合で恐れ入りますが」

例「ご面倒をおかけしますが、お引き受けいただけないでしょうか」

ご要望に応えられないとき

「せっかくお声をかけていただいたのですが」「ぜひご期待にお応えしたかったのですが」「身に余るお話、光栄なのですが」

例「身に余るお話、光栄なのですが、今回は辞退させていただいてもよろしいでしょうか」

ものを尋ねるとき

「失礼ですが」「差し支えなければ」「お教えいただきたいのですが」「お尋ねしてよろしいでしょうか」

例「失礼ですが、お名前をフルネームでお聞かせいただけますでしょうか」

改善してほしいとき

「細かいことを言ってしまい恐縮ですが」「こちらの都合ばかりで申し訳ございませんが」「説明が足りず失礼いたしました」「○○さんの立場に立っておらず恐縮ですが」

例「こちらの都合で恐縮ですが、決定の理由を2つ以上挙げていただけると助かります」

意見や反論するとき

「僭越ながら」「おっしゃることは重々承知をしておりますが」「余計なこととは存じますが」「私の考え過ぎかもしれませんが」

例「おっしゃることは重々承知をしておりますが、今回はA案をご提案させていただけないでしょうか」

出典=『一生使える「敬語&ビジネスマナー」』

■仕事ができる人ほど必ず使いこなしている

相手への伝わり方が大きく変わり、そして大いに自分の味方になってくれるクッション言葉。

仕事ができると言われる人は、必ずと言っていいほど自然に使いこなしています。

ぜひ、実際に使いながら、言い回しのバリエーションを増やし、自分のものにしていきましょう。

POINT
「数字」を使うと断然わかりやすい。
さらに「クッション言葉」でより伝わる

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三上 ナナエ(みかみ・ななえ)
元CA・人材教育講師
新卒でOA機器販売会社に入社し、販売戦略の仕事に携わる。その後、ANAに客室乗務員として入社。チーフパーサー、グループリーダー、OJTインストラクター、客室部門方針策定メンバーを経験。ANA退社後は、研修講師として活動。著書に『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『マンガでわかる!仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『気遣いできる人は知っている! 会話のキホン』(以上すばる舎)、『ビジネストラブル脱出フレーズ80』(学研プラス)、『仕事の成果って、「報・連・相」で決まるんです。』(大和出版)などがある。
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(元CA・人材教育講師 三上 ナナエ)