『あんぱん』写真提供=NHK

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 板橋駿谷が、NHK連続テレビ小説『あんぱん』に第11週より登場している。板橋が演じるのは、小倉連隊で嵩(北村匠海)が所属する内務班の古年兵・馬場力。班長の神野(奥野瑛太)から、「馬場! こいつらに、この小倉の連隊魂を教えてやれ!」と命じられると、ここぞとばかりに理不尽な暴力を嵩たち初年兵に振るっていく。戦争パートの幕開けとなる第51話では開始早々から殴るシーンの連続であり、軍隊での厳しさを最も分かりやすく表しているのが、馬場だろう。

参考:『あんぱん』第55話、嵩(北村匠海)が八木(妻夫木聡)に横顔を描いたスケッチを渡す

 その反面、嵩が転属の際にリュックに持ち込んでいた井伏鱒二の詩集を見て、「詩集……? ますじ……?」と首を傾げていたり、中隊長の島(横田栄司)に「軍人勅諭の五か条を言ってみろ」と言われ、しどろもどろだったりと、学がないのは明らか。就寝前、ほかの兵士たちに「女はよかよ~」と自慢したり、また別の日には足を嗅いで「くさか~」と騒いでいたりと、まるで“ガキ大将”のよう。『アンパンマン』ではないアニメの例えで少々心苦しいところはあるが、馬場が『ドラえもん』のジャイアンに思えてならない。馬場といつも一緒にいる甲田(萩原亮介)がスネ夫、その上にいる神野や島、八木(妻夫木聡)たちがジャイアンのママ的ポジションにいる。

 軍隊は年功序列であり、階級がものを言う世界。乙種幹部候補生に合格した嵩を、馬場と甲田が一升瓶を持って祝杯に誘う。「2人ともだいぶ殴ってすまんやったな。もうわしは、下ば殴って憂さ晴らしするんはやめるばい。そげんとどころやなくなるやろ」と急に改心する様子は、劇場版のジャイアンと言えば聞こえはいいが、嵩が自分より身分が偉くなることを見据えての手のひら返しだと見れば、どこまでも卑しい人物にも見えてくる。

 そんな馬場を演じる板橋が朝ドラに出演するのは約6年ぶり。広瀬すずがヒロインを務めた朝ドラ『なつぞら』(2019年度前期)で、“番長”こと門倉努を熱演し、それが板橋にとっての出世作となった。番長は、なつ(広瀬すず)が通う十勝農業高校の3年生で、ピュアで真っ直ぐな高校生役を、当時34歳だった板橋が演じていることが大きな話題に。2020年に公開された、河合優実との共演作でもある映画『サマーフィルムにのって』においても、高校生とは思えない“ザ・時代劇”なルックスを持つ、老け顔高校生ダディボーイを演じている。2021年にはNHK大河ドラマ『青天を衝け』で、剣術家の真田範之助を好演。彼もまた勇ましく、番長と似て女性に惚れっぽい役柄だった。

 馬場もそういった番長に通ずる愛されキャラの要素は少なからず持ち合わせているものの、やはり厳格なファーストインパクトは、視聴者に大きなギャップを与えている。しかし、それが板橋にとっての“俳優としての幅”として滲んでいくのではないだろうか。もちろん、先述した作品が板橋が出演している全てではないものの、“観られた”作品によって俳優のイメージが形成されていくことも事実。今後は馬場とはまた違った手厳しい、熱血キャラのオファーが来る予感がしているのと同時に、コメディ作品でがっつり芝居をしている板橋の姿も見てみたいと馬場のとぼけた一面から思ったりもしている。(文=渡辺彰浩)