飛び交うイジりやヤジ、問われる「応援上映」の現状 祭りと鑑賞は両立可能なのか
最近では、『ハイキュー!!』や『忍たま乱太郎』といったアニメ作品の劇場版において、応援上映のマナー違反が問題視され、SNSを中心に賛否が飛び交っている。筆者もこれまでさまざまな応援上映に足を運んできたが、その空気感は作品ごとに大きく異なり、ファン層や観客の入り方によって、会場の雰囲気ががらりと変わることを実感してきた。
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そうしたなか、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』に続くシリーズ最新作『隻眼の残像』が公開された。応援上映の実施有無についてはまだ発表されていないが、その動向にシリーズファンの関心が集まりつつあるのも事実だ。
劇場版『名探偵コナン』シリーズでは、2016年公開の『名探偵コナン 純黒の悪夢』をきっかけに、応援上映というスタイルが徐々に定着していった。キャラクター人気の高まりとともに、劇場で声を出して楽しむ文化が広がりを見せる一方で、一部キャラクターへの過剰な発言やセクシャルなヤジが問題視されたケースもある。作品への愛が高まる場だからこそ、その熱量の行き先が問われる場面も少なくない。
そうした背景もあり、応援上映という場では、観客のノリや温度感に摩擦が生じることもある。たとえば、応援上映の“温度感”には観客ごとにばらつきがあり、「どこまでが許容されるのか」という感覚が一致しないまま参加しているケースも少なくない。声を出してもいい上映とはいえ、その加減やタイミングは人それぞれだ。応援上映に関するマナーガイドラインは多くの作品で公式サイトなどに掲載されているものの、観客によっては、マナーガイドラインを確認しないまま来場している可能性もあるだろう。
加えて、SNSの存在も応援上映の空気感に少なからず影響を与えているように思う。作品をきっかけにファン同士がつながり、日常的なやり取りを通じて“内輪ノリ”や独特のテンションが生まれること自体は、ポジティブな面もある。だが、その空気がそのまま劇場に持ち込まれると、周囲との温度差が際立ってしまうこともある。
特定のキャラクターへのイジリや、一部の観客による過剰な盛り上がりは、初めて参加する人にとって違和感や疎外感を抱く原因になりかねない。作品によっては、他の観客を牽制するようなツッコミに、「他のファンとは違う自分」を見せたいという欲がにじみ、マウントを取られているかのように感じたこともあった。
こうした空気のズレを少しでも和らげるために、応援上映の場づくりに工夫を凝らす作品も増えてきた。そのひとつが、上映前にマナーを共有する動画の存在である。
応援上映の先駆けとして知られる『KING OF PRISM』シリーズでは、「4つの約束」と題したマナー動画を導入し、観客のテンションを高めながらも鑑賞空間の方向性を丁寧に“整える”工夫がなされていた。近年でも『ONE PIECE FILM RED』や『「ツキウタ。」劇場版 RABBITS KINGDOM THE MOVIE』、『劇場版すとぷり はじまりの物語~Strawberry School Festival!!!~』など、応援上映作品では同様の取り組みが相次いでおり、その重要性は広く認識されつつある。
どこで声を出していいのか、何がNGなのか。そうした情報をマナー動画であらかじめ伝えることで、初めて参加する観客も安心してその場に加わることができる。動画に合わせて声を出すことで場の空気があたたまり、上映前から自然と一体感が生まれるのも大きな魅力だ。
ただし、こうした取り組みがなされている作品はまだ一部に限られており、すべての応援上映で「祭り」と「鑑賞」のバランスがうまく取れているとは限らないのが現状である。
応援上映における理想的な空間とは、作品へのリスペクトと観客同士の一体感が共存することだ。声援や拍手、リアクションといった“祭り”の盛り上がりが、作品の世界観や演出と調和してこそ、応援上映ならではの高揚感が生まれる。だがその一方で、過剰な叫び声や私語が作品の鑑賞体験を妨げてしまえば、それはもはや「応援」とは言いがたい。観客一人ひとりが“観る”という基本の姿勢を忘れずに楽しむことで、場の熱量もまた、健全に保たれていくはずだ。
そして冒頭でも触れた通り、今後のトピックスとして注目されるのが、まもなく公開を迎える『隻眼の残像』だ。応援上映の実施情報はまだ発表されていないが、近年の『名探偵コナン』シリーズでは、発声可能な応援上映に加え、自動制御ペンライトによる演出を取り入れた特別バージョンの上映も行われており、“応援上映の先駆け”的な存在となっている。おそらく今回も応援上映が行われると予想されるなかで、そのあり方を通じて、応援上映の“今”が垣間見えるかもしれない。(文=すなくじら)

