第35回のテーマは「ジュニア選手にオススメのお餅」について

写真拡大

連載「強い子どもを育てる ミライ・アスリートの食講座」第35回

 栄養・食事の観点からジュニア世代の成長について指南する、「THE ANSWER」の保護者向け連載「強い子どもを育てる ミライ・アスリートの食講座」。プロ野球・阪神タイガースなどで栄養サポートを行う公認スポーツ栄養士・吉谷佳代氏が講師を務め、わかりやすくアドバイスする。第35回は「ジュニア選手にオススメのお餅」について。

 ◇ ◇ ◇

 冬に食べる機会の多いお餅は、代表的なアスリート食品。選手もお餅が大好きなので、私自身、選手の献立をたてる際にも、かなり出番の多い食品の一つです。

 お餅の主の栄養は炭水化物。体を動かすため、そして成長期の子供たちにとっては、体を大きくするためにも欠かせないエネルギー源です。もっとも栄養価が似ているのは「ご飯」。ご飯はうるち米、おもちはもち米が原材料と、同じ米類ということで親戚のような関係です。

 お餅がアスリート向きである理由は、含まれる糖質の種類にあります。お餅やご飯は、体のなかでゆっくり消化吸収され、ゆっくりエネルギーに代わるタイプの糖質。持久力の欲しい試合の日の朝ごはん(試合の3〜4時間前がベスト)や、ハードな練習の日の昼食・夕食にもピッタリです。

 お餅の最も優れている点は、「効率のいいエネルギー源」であることです。例えば、パンは空気を、麺類は水分をたくさん含んでいるため、見た目のボリュームほど糖質量は多くなく、お腹もいっぱいになりません。

 しかし、お餅は空気も水も抜き、炭水化物をたっぷり含むもち米をギューッと凝縮した塊。栄養価の似ているご飯も、水分を含むうえ、米と米の間に隙間がありますから、見た目に対しての糖質量はもっとも多い、と言えるでしょう。

 私はよく選手に「お米は全体量の大体、3分の1が炭水化物だよ」と伝えています。コンビニエンスストアのおにぎりを例にすると、ご飯の量は約100g。その約3分の1ですから、1個食べると約30gの炭水化物が摂れる計算です。一方、お餅に含まれる糖質量は重量の約2分の1。100gで約50gの炭水化物が摂れます。

 市販の四角い切り餅はだいたい1個約50gですから、2個食べればおにぎり1個を超える炭水化物量(約50g)を補給できます。小学生でも2個程度はおやつ感覚でペロリと食べられるので、エネルギー補給にはとてもおすすめなのです。

見た目にボリュームがあると、子供たちは「頑張ってこれを食べないといけない」という気持ちになります。精神的に追い込まれたり、緊張したりすると胃腸機能が下がり十分な食事量がとれないこともあります。そういった面からも、効率よくエネルギー補給できるよう、炭水化物の密度が濃いお餅を積極的に活用するとよいですよ。

 さて、いくら大好きなお餅でも、正月から出番が続くと、子供たちもちょっと食べ飽きてくるころだと思います。お餅のよいところは、きなこや砂糖醤油などで甘くしても、塩気などを加えておかず系にしてもよいという、調理のアレンジの幅が広い点。最後は、これまで選手たちに好評だった食べ方を少し紹介しましょう。

 選手に人気のアレンジは「お餅のチーズ乗せ」。ピザ用チーズをトッピングしてオーブントースターで焼くだけ。シンプルですが、塩気がきいていてすごくおいしい。炭水化物に加え、タンパク質やカルシウムも補給することができ、一石二鳥です。

 また、スープ類に入れる食べ方も、選手たちに大人気。市販のしゃぶしゃぶしゃぶ用の餅のように薄くスライスして、お味噌汁やうどん、そばに加えたり、鍋物の具材としてちょい足しします。練習がハードでご飯だけではエネルギーが足りない日、朝食など時間のないときの食事にもおすすめです。

 最後は大根おろしと少しの醤油をトッピングする「からみ餅」。昔は定番でしたが、今は意外とご家庭で作られる方は少ないかと思います。

 大根おろしに含まれる成分、ジアスターゼはお餅の吸収・消化を良くしてくれます。ですから、持久力やスタミナは欲しい、でも緊張感から消化吸収能力がちょっと落ちてしまう試合の日におすすめ。とはいえ、試合当日になれないものをいきなり食べるのは逆効果なので、まずは試しに、おやつとして出してみてください。

 増量したいけれど、ご飯だけだとあまり食べられない、という成長期のお子さんも、おやつや汁物に入れるなど、日々の食卓にお餅を活用するとよいですよ。

吉谷 佳代
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。江崎グリコ株式会社で健康食品開発や、スポーツサプリメントの研究開発に従事。その傍ら、多くのアスリート、学生スポーツ、ジュニアへの栄養指導、食育イベントに携わる。2013年に独立。以降、ジュニアからトップアスリートまで幅広い競技の選手に対し、栄養サポートを行う。現在、プロ野球・阪神タイガース、実業団女子バレーボール・JTマーヴェラスのチーム専属栄養士。過去には、シスメックス女子陸上競技部(2015〜2020年)、Bリーグ・西宮ストークス(2014〜2017年)、自転車ナショナルチーム(2013〜2018年)をはじめ多くのプロ選手やジュニア選手の栄養サポート実績を持つ。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。