@AUTOCAR

写真拡大 (全9枚)

第4のスペーシアは、4ナンバー

執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

8月26日。スズキは、スーパーハイト軽ワゴンの「スペーシア」シリーズに新バージョン「スペーシア・ベース」を設定して発売した。

【画像】スペーシア・ベース 内装のアレンジ【じっくり見る】 全170枚

スペーシアの現行型は、2017年に登場した2代目。


スペーシア・ベースXF(ピュアホワイトパール/全方位モニター用カメラパッケージ装着車/2WD)    宮澤佳久

当初は標準車の「スペーシア」とカスタム系の「スペーシア・カスタム」の2バージョンだったが、2018年にクロスオーバーテイストの「スペーシア・ギア」も追加され、いずれも人気を博している。

そして今回、第4のバージョンとして「スペーシア・ベース」が登場したわけだ。

いままでの3バージョンとの大きな違いは、4ナンバー、つまり軽商用車になるということ。

だが、商用車といってもコマーシャルユースがメインなわけではない。クルマの使い方が多様化した現在、仕事専用(モノ重視)でも、遊び寄り(ヒト重視)との間のポジション。遊び・仕事・日常使いにも使える軽商用車(バン)として生まれた。

2018年にホンダが軽商用車の新しい姿としてNバンを発表し、2021年にはダイハツがアトレーを4ナンバー化して、仕事でも趣味でも使えるクルマとした。

スペーシア・ベースも、これらのクルマをライバルと見据えて、軽商用車の新しい流れに乗ったクルマといえるだろう。

では、いままでのスペーシア・シリーズや、ライバルたちとはどう違うのか? その概要を紹介していこう。

サイズは? クォーターウインドウはなし

スペーシア・ベースのボディサイズは、全長3395×全幅1475×全高1785〜1800mm。ホイールベースは2460mm。

このサイズは、いままでのスペーシア・シリーズの3バージョンと変わらない。


スペーシア・ベースXF(デニムブルーメタリック/全方位モニター用カメラパッケージ装着車/2WD)    宮澤佳久

ライバルである「ホンダNバン」「ダイハツ・アトレー」は専用ボディのため、どちらかといえば商用車的な雰囲気が漂っている。それに対し、スペーシア・ベースは乗用車であるスペーシア・シリーズとボディパネルなどは共通で、イメージも引き継いでいる。

この違いは、ライバルに対して大きなアドバンテージになりそうだ。

フロントまわりの顔つきはスペーシア・カスタムをベースにしており、なかなか力強い。さらに、フロントグリル、ドアハンドル、ドアミラー、バックドアガーニッシュ、リアコンビネーションランプ内のリムなどにブラックパール塗装を施し、重厚感を強調。ブラックで統一したアルミホイール(ハーフキャップ付き・XF)とスチールホイール(GF)も採用した。

そしてスペーシア・ベース最大の識別点は、他のスペーシアでは6ライトウインドウとなっているCピラー部をクォーターパネルとし、ボディサイドのビードと共通イメージの3本のビードを入れたこと。タフさを表現しながらクルマ全体での統一感をもたらしている。

また、リアゲートに付けられた「BASE」のエンブレムはチェッカープレート(縞鋼板)をモチーフにしたデザインで、このクルマのコンセプトを体現している。

ボディカラーは、専用色のモスグレーメタリックをはじめ、全5色を設定した。

内装 ブルーのアクセントで差別化

インテリアのデザインも、基本的に他のスペーシア・シリーズと変わらない。

エクステリア同様にスーツケースをモチーフとした意匠が取り入れられ、助手席前のグローブボックスには、ボディサイドのビードと似た凹凸がデザインされている。


スペーシア・ベースXFの内装。マルチボードを下段(の前方)に設置した状態。車中泊の就寝時に適している。ボードの下に高さ165mmのスペースがあり、荷物を保管可能。下段の前方にボードを設置すると、横たわったまま、手探りで荷物を取り出せる。    宮澤佳久

他のスペーシアでも、エアコンの吹き出し口やドア内張りなどにアクセントカラーが採用されているが、スペーシア・ベースでは、グレイッシュブルーと呼ばれる「灰色がかった濃いめの青」がアクセントカラー。

この色をグローブボックスやドア内張りなどに用いており、好きなものを気兼ねなく積める実用性と、力強さを感じさせる渋カッコいいアクセントとしている。

運転席まわりでは、倒すとテーブルになる助手席シートバックに、物が落ちにくい外周枠を付けて、底面には傷が目立ちにくいシボを採用。

シート地は、フロントに撥水ファブリック、リアに防水PVCを採用し、濡れたものでも気兼ねなく使え、汚れてもすぐに拭き取れる。

さらに、フロントシートの頭上にはオーバーヘッドシェルフ(最大積載量は1.5kg)を、リアクォーターパネルの内側部分にはポケットが備わるなど、仕事にも遊びにも使えるクルマとして機能性を高めている。

マルチボードとは? 車中泊/テレワークに

軽商用車は、開口部の縦と横の長さが800mm以上、荷室の床面積が0.6平方メートル以上、そしてリアシートを起こした状態でラゲッジスペースはリアシートのスペースより広くなければならない、などといった基準がある。

そのため、スペーシア・ベースは商用車化されたことでリアシートは簡略化された。その代わり、荷室長は1205mm、荷室床面幅は1245mm、荷室高は1220mm(いずれも2名乗車時)という、軽自動車としては十分に広いラゲッジスペースを手に入れた。


マルチボードを中段に設置。車中泊の食事時、テレワークのデスク、移動販売などを想定したモードだ。ボード下に高さ290mmの空間を確保。    宮澤佳久

フロアは樹脂製で、リアシートをたたんだときはフルフラット・フロアにできるカバーも備わる。そして、スペーシア・ベース最大の売りは、標準装備されたマルチボードだ。

ラゲッジスペースの左右側面にボードをセットできる溝が刻まれており、10か所のユーティリティナットと組み合わせれば、さまざまなカスタマイズが可能。

マルチボードを、上段(フロアから430mmの高さ)にセットすれば、シートバックをたたんだリアシートに腰掛けて、モバイルオフィスにしたり、作業現場での打ち合わせにも使える。

中段(同290mmの高さ)にセットすれば、リアシートを全倒ししてテレワークのデスクにしたり、移動販売にもピッタリ。

そして下段(同165mmの高さ)にセットして、フロントシートを前に出して、ヘッドレストを外してシートバックを倒すと、ほぼフラットな空間となり、オプションのマットを敷けば車中泊も可能だ。また下段は、前方・後方の2つの位置を使い分けられる。

さらに、マルチボードを立ててセットすれば(次項の写真)、荷室は奥行き545mm、リアシート部は奥行き805mmのセパレートされたスペースとなり、ペットを連れての旅行や、スーツケースなどの積載にも最適なのだ。

軽商用でCVT 燃費は21.2km/L

スペーシア・ベースのパワートレインは、他のスペーシアに搭載されているマイルドハイブリッドやターボ付きエンジンではなく、R06A型と呼ばれる0.66L(正確には658cc)の直3 DOHC12バルブに吸排気VVTを備えたもの。

最高出力は52ps/6500rpm、最大トルクは6.1kg-m/4000rpm。組み合わされるトランスミッションは、スズキの軽商用としては初となるCVT。駆動方式は2WD(FF)と4WDが設定されている。


マルチボードを立てて設置した状態。荷室を前後に分割したいとき、スーツケースを運ぶときなどに便利。なお、標準装備用のこうしたマルチボードを開発するのは、スズキ初のこと。    宮澤佳久

全車エコカー減税の免税対象車となっており、2WDモデルのWLTCモード燃費は、21.2km/Lを達成。これは、2022年8月現在、軽商用車としてはナンバーワンの数値だ(スズキ調べ)。

ターボ車が設定されていないのは、ライバルに対して弱いところだが、スズキとしては「とりあえずNA(自然給気)のみで」の展開としている。販売状況次第では、将来的にはターボ車やマイルドハイブリッド車の追加もあるかもしれない。

サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式コイルスプリング、リアが2WDはトーションビーム式コイルスプリング、4WDがスズキ独自のI.T.L.(アイソレーテッド・トレーリングリンク)式コイルスプリング。

ブレーキはフロントがベンチレーテッドディスク、リアがLT式ドラムと、このあたりは乗用車のスペーシアと変わらない。

それゆえ、フロントシートの乗り心地や静粛性なども、他のスペーシア・シリーズと「ほとんど変わらない」とスズキは説明する。

商用車であっても“乗用車並み”の快適な乗り心地・静粛性の高い室内空間は、セールスポイントの1つになるだろう。

ADASと装備について

商用車であっても、安全装備に抜かりはない。

夜間の歩行者も検知するデュアルカメラブレーキサポートなどを搭載する「スズキ・セーフティサポート」を全車に標準装備。


スペーシア・ベースXFの後席内装。    宮澤佳久

上級グレードの「XF」には、アダプティブ・クルーズコントロール(全車速追従機能付き)も採用している。

LEDのヘッドランプ/フォグランプと4エアバッグは全車に標準装備。すれ違い支援機能を搭載した全方位モニター用カメラは「XF」にメーカーオプション設定されている。

快適装備では、作業での動線を考えた右側パワースライドドアを「XF」に標準装備。

夜間時でも作業しやすいLEDルームランプ(リア)、キーレス・プッシュスタートシステム、USB電源ソケット(タイプA&C)、運転席&助手席シートヒーター、フルオートエアコン、ロールサンシェード、後席脱着式シートベルトなど、グレードにもよるが、仕事をラクにしたり、ガマンを強いられることのない充実ぶり。

また、スペーシア・ベースとさらに楽しく過ごすための純正アクセサリーパーツも豊富に設定された。もちろん、いままでのスペーシア・シリーズ用のアクセサリーでも流用可能なパーツもあるから、楽しみはさらに増幅していくというわけだ。

価格・発売日

スズキの新しい軽商用車、スペーシア・ベースの発売日は8月26日。

目標販売台数は、年間1万台と発表された。


スペーシア・ベースXF(新色のモスグレーメタリック/全方位モニター用カメラパッケージ装着車/2WD)。純正アクセサリーの「ベースキャリア」「カーゴラック」「コンソールバッグ」「リラックスクッション」「LEDランタン」「サーモタンブラー」「山型工具箱」を搭載。    宮澤佳久

グレードは、「GF」「XF」という2種類を用意。価格は下記のとおりとなっている。

スペーシア・ベースGF(FF):139万4800円
スペーシア・ベースGF(4WD):151万8000円
スペーシア・ベースXF(FF):154万7700円
スペーシア・ベースXF(4WD):166万7600円

メーカーOPでは、「XF」に設定できる全方位モニター用カメラパッケージが4万6200円。また、全車で選べるピュアホワイトパール塗装は、2万2000円となっている。

スペーシア・ベース スペック

スペーシア・ベースXF(FF)

車両価格:154万7700円
全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:870kg
エンジン型式:658cc直3
最高出力:52ps/6500rpm
最大トルク:6.1kg-m/4000rpm
トランスミッション:CVT
燃料:ガソリン
燃料タンク容量:27L
WLTCモード燃費:21.2km/L
タイヤサイズ:155/65R14


スペーシア・ベースXF(新色のモスグレーメタリック/全方位モニター用カメラパッケージ装着車/2WD)    宮澤佳久