近年、大量のロボットを互いに通信させて目的に沿った行動を取らせる「スワームロボティクス」と呼ばれる技術の開発が進んでいます。スワームロボティクスには「大量のロボットを用意するのに多大な費用がかかる」という問題点が存在していますが、新たに1台当たり18.72ドル(約2400円)で準備可能な安価なロボット「HeRo 2.0」が発表されました。

[2202.12391] HeRo 2.0: A Low-Cost Robot for Swarm Robotics Research

https://doi.org/10.48550/arXiv.2202.12391

HeRo 2.0, an ultra-low cost 3D-printed robotics platform, could open swarm robotics experimentation up to all

https://www.wevolver.com/article/hero-20-an-ultra-low-cost-3d-printed-robotics-platform-could-open-swarm-robotics-experimentation-up-to-all

スワームロボティクスはロボット同士に互いの位置関係を把握させることで大量のロボットを1つの群れとして一意の目的に沿って動かす技術です。このスワームロボティクスは「天気の監視」「農作業データの収集」「宇宙探査」など多くの用途に活用できると期待されており、世界中で研究が進められてます。以下の記事では、スワームロボティクスによってロボットの移動を制御する様子を確認できます。

互いに通信しながら一定の目的に沿った行動をする集団行動ロボ「Kilobot」 - GIGAZINE



スワームロボティクスの研究を行うには大量のロボットを用意する必要があるため、ロボットを準備するコストの高さが研究開発の障害となっていました。ミナス・ジェライス連邦大学の研究チームが開発したスワームロボティクス用ロボット「HeRo 2.0」は部品の設計図やソフトウェアのソースコードが公開されており、1台当たり18.72ドルというこれまでのロボットと比べて安価な価格を実現しています。



実際に組み立てられた「HeRo 2.0」が以下。本体カバーやホイールなど多くの部品が3Dプリンターで作られています。



研究チームによると、「HeRo 2.0」は「サイズが小さい」「互いの位置情報を検知しつつ3時間動作可能」「簡単に入手できる素材で作成可能」「障害物に対する高い耐性」といったスワームロボティクス用のロボットとして十分な性能を持っているとのこと。また、動作に必要なソフトウェアがオープンソースで開発されており、電子工作業界で広く用いられている開発ソフトウェアArduino IDEを用いて独自の機能を追加できます。

「HeRo 2.0」のパーツには3Dプリンターが多用されているため「部品の品質にバラつきがある」「長時間動作させた場合の耐久性に難がある」といった問題が存在します。このため、研究チームは品質のバラつきを抑える設計や部品の耐久試験などを続ける予定とのことです。