日本の軽犯罪法では、「街路又は公園その他公衆の集合する場所」でつばを吐いたり用を足したりすることが禁じられています。これは裏を返せば、人目に付かない田舎道などで立ち小便をしても軽犯罪法違反には問われないということになりますが、ノルウェーとロシアの国境沿いにあるのどかな村には、「ロシアの方を向いて放尿すると罰金が科されるかもしれない川」があります。

Don’t pee on Russia - It will cost you, Norway says | The Independent Barents Observer

https://thebarentsobserver.com/en/borders/2021/08/dont-pee-russia-it-will-cost-you

RTL Today - Spending more than a penny: In Norway, peeing toward Russia will get you fined

https://today.rtl.lu/news/world/a/1777376.html

Don’t Pee on Russia - It Will Cost You, Norway Says - The Moscow Times

https://www.themoscowtimes.com/2021/08/26/dont-pee-on-russia-it-will-cost-you-norway-says-a74904

ノルウェーの北東部にあるグレンセ・ヤコブセルフという村には、ロシアとの国境沿いを流れるヤコブセルヴァ川があります。そして、このヤコブセルヴァ川には監視カメラがあることを警告する表示や、「ロシア方向に放尿しないで(NO PEEING TOWARDS RUSSIA)」と書かれた看板が立てられています。



ノルウェーの国境当局のJens Høilund氏はこの看板について、「このような看板が立てられた経緯はよく分かりません。もし、誰かが国境に関するロシアとの協定に抵触するようなことをしたら、警察や国境警備隊が警告するようにしていますので」と述べました。

これまでのところ、「国境付近での排尿事件」がロシアとの間で問題になったことはありませんが、ノルウェーには国境に関する規則を定めた特別法があります。1950年に制定されたこの法律には、「国境沿いで隣国やその当局者に向けて攻撃的な行為をしてはならない」という条文があり、これに違反すると罰金または3カ月以下の懲役刑が科せられるとのこと。Høilund氏は、「ロシアの方を向いて川へ放尿することが法律に違反するかどうかは警察が判断することです」としつつ、もし法律違反になるのであれば3000クローネ(約4万円)以上の罰金刑になる可能性があると話しました。

グレンセ・ヤコブセルフでは、2016年にロシアとの国境に向けて石を投げたノルウェー人4人が国境警備隊と警察により逮捕されたことがあります。また2020年には、ノルウェー・ロシア・フィンランドの国境が交わる場所に設置された標識である三国ケルンに登った女性が監視カメラに発見され、「左手がロシアに侵入した」として8000クローネ(約10万円)の罰金の支払いが命じられたこともありました。



by Julia Velkova

Høilund氏によると、国境当局もこの地域の警察関係者も、一体誰が放尿を禁止する看板を立てたのかは知らないとのこと。Høilund氏は、「ここは人気の観光スポットですし、グレンセ・ヤコブセルフまでの長いドライブをした人が最初に訪れる場所でもあります。ひょっとすると、ここで尿意を催してしまう人もいるかもしれません。そこで、川で用を足した人が法律違反で捕まらないか心配した誰かが看板を設置したのでしょう」とコメントしました。

ノルウェーとロシアの国境は約200kmにわたって続いていますが、1826年に両国が国境を定めてから1度も紛争が起きていないため、この国境は「ロシアがまだ戦争をしたことがない唯一の隣国であるノルウェーとの平和の象徴」と呼ばれることもあります。しかし、2014年にロシアがクリミア半島に侵攻して以来、NATO加盟国とロシアが接する最北端の国境であるこの地域でも、少しずつ緊張が高まってきているそうです。