人事抗争、男の嫉妬、そして出世争い……。ソフト販売やレンタルを主戦場に、多くが任侠・ヤクザの世界を描く「Vシネマ」が、ネット配信隆盛の波に乗り、再び人気を呼んでいる。業界をリードし続ける、“Vシネマの帝王” こと小沢仁志(58)が語る。

「いま、俺たちは売り手市場だ。なんといっても、配信でVシネマを初めて観て、『へえ、おもしろいじゃん』と気づいてくれる人が増えたのが大きいよな。『日本統一』は44話を撮り終え、10月は5本撮りだよ(笑)。

 低予算で撮影日数も短いけど、テレビや映画のような制約がない。この間も、(本宮)泰風に言ったんだ。『テレビに日和るなよ』って。マイルドにしたら、昔からのファンを裏切ることになる」

 さらに最近のVシネマは、「ビジネスにも役立つ教訓が得られる」と再評価されている。

「意外だね。でも、俺がよく行くお好み焼き店のオーナーが、人事で悩んだときに『統一』で勉強したって。IT企業の経営者も、幹部にすすめてるらしい。でも俺ら、ちょいちょい(作品の中で)人殺してるだろ? それはどうなんだろうね(笑)。

 Vシネマは、ここからが始まりだ。まずは若手の育成。まだ端役の役者が、出番が終わっても監督の横でずっとモニター見ながら、目をギラギラさせているんだよ。こういう奴を鍛えたい。

 ヤクザ映画で先行する韓国映画とのコラボも実現させたい。オレがかわいがってる役者を連れてって、『日本にはこんなにすげえ奴らがいる』と教えたいね」

 次のページでは、Vシネマ界を見続けてきた評論家の谷岡雅樹氏が選んだ、注目の俳優5人を紹介する。

武蔵拳

【Vシネマ評論家・谷岡雅樹の「この5人から目を離すな!」】
●武蔵拳(61)/おすすめの一作『誇り高き野望』シリーズ(2005年〜)
「出演作220本が、ほぼ任侠映画。未だ世間には知られず、主演作はシリーズ含め20作を超え、海外進出も目論む。片桐竜次がもっとも惚れ込み、初監督作『ボストンの鉄爪』に主演で起用した『Vシネマの最終兵器』」(谷岡氏、以下同)

●松田一三(54)/おすすめの一作『極王』(2020年現在、6作品がリリース)
「Vシネマに現われ20年、ついに長期シリーズ『極王』に主演し、その全身に刻まれた味が全開する。酸いも甘いも嘗め尽くした未完の大器の底力がいよいよ発揮、メジャー化の予感」

●大沢樹生(51)/おすすめの一作『双頭の龍』(2017年) 
「ジャニーズ事務所出身のVシネ最大のスターであり、魂ごと持っていかれた、アイドル系初の遺伝子。松潤が嵐のコンサートを演出するがごとく、みずから監督にも進出し、手腕を発揮する実力派」

●黒石高大(33)/おすすめの一作『新喧嘩の花道』(2013年)
「 “ハマの狂犬” といわれた総合格闘技出身のキレキレの男が俳優を志し、もっとも水を得た魚としてVシネマの世界で縦横無尽に泳ぎ始めた。人生のタイトロープを走り抜ける逸材」

●原田桂佑(25)/おすすめの一作『組長への道 獅子の野望』(2019年)
「Vシネマもまた、本気で新人を発掘し育てる意気があることの証明のような男。現状多くのホンペン(劇場公開映画)やテレビドラマでは、そんな “輝く原石” を使い切ることができない。駿才の登場だ」

取材協力・谷岡雅樹(Vシネマ評論家、ノンフィクション作家)

(週刊FLASH 2020年9月15日号)