「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「酢(す)」。「お酢」の味わいが、蒸し暑い夏の食欲を刺激してくれます。

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年7月27日(土)放送より)



「酢」という字は「酉」の市の「酉」と書き、その隣に「作る」という字の向かって右側、「乍(サク)」という字を添えます。

「酉」の字は「とりへん」という部首で、酒を入れる器の形を描いた象形文字。

一方の「乍(サク)」という字は、木の枝をまげて家の垣根などを作る様子を示す漢字です。

のちに、あらゆるものを「つくる」、「いとなむ・おこす・なす」といった行為や、「過ぎ去った月日、昔」を意味するようになります。

つまり「酢」という漢字は、ときがたって酒が醸され、そこに出来上がった調味料のことを示しているのです。

酢のおもな原料となるのは米や麦といった穀物や果実。

それが酒に変わったのち、「酢酸菌」の作用によって「酢」が出来上がります。

「酢酸菌」は空気中に多数、存在するため、管理を少しでも怠ると、酒は酢に変わってしまいます。

その酒を中国では「苦い酒」と書いて「苦酒(クオウチュウ)」、

日本では「酸っぱい酒」と書いて「酸酒(からさけ)」、

そして西欧では「酸っぱい葡萄酒」を意味する「ビネガー」と呼ばれました。

米、酒、酢。

その変化に気づき。新たな利用法を生み出したのはいにしえの人のたくましさ。

古代中国では周の時代、日本では五世紀の初頭あたりから、食べるもの、調味料としての「酢」を積極的に作りだすようになります。

大化の改新の折には「造酒司(さけのつかさ)」が置かれ、酒はもちろん、醤油のことをさす「醬(ひしお)」とともに、「酢」が醸造されていたといいます。

食べ物にすっきりとした味わいをもたらし、保存効果を高め、身体の調子を整える「酢」の力に気づいた先人たち。

以降、和食を支える代表的な発酵調味料として親しまれるようになりました。

今日の漢字は「酢」。

酒を入れる器と、「つくる、なす」という意味をもつ「乍(サク)」という字を並べ、酒からできる調味料「酢」を示す漢字になりました。

ではここで、もう一度「酢」という字を感じてみてください。

あえたり漬けたり、かくし味に使ったり。

最近では飲料としても人気の「お酢」。

今では世界中で愛されている「鮨」にも欠かせません。

スズキの昆布締め、油ののったしめ鯖、銀色の光を放つ新子。

品のよいお酢の香りに誘われて、夏の鮨。

きりりと冷えたお酒とともに味わえば、しばしの涼が訪れます。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……。

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)

『醤油・味噌・酢はすごい 三大発酵調味料と日本人』(小泉武夫/中公新書)

8月3日(土)の放送では「帽」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20〜8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/