左からセブン-イレブン、セイコーマート(Kkdbill301/Wikimedia Commons)

写真拡大 (全2枚)

 ここのところコンビニ業界、とくにセブン-イレブン(以下セブン)をめぐる問題が噴出している。24時間営業での本部と店舗の対立、弁当ロスの対応、そして被害額5500万円という7payでの失態……。つい最近も、営業短縮を伝えた店舗のオーナーに“警告文”を送ったことが明らかになった。こうした影響は、数字にも現れ始めた格好だ。

 ***

 6月末、日本生産性本部サービス産業生産性協議会は、顧客満足度調査の最新版を発表した(2019年度JCSI第1回調査結果)。コンビニエンスストア部門で1位に輝いたのは、セイコーマート(以下セコマ)で76・3ポイント。これに、セブンが69・7、ミニストップが68・1ポイントと続く。

左からセブン-イレブン、セイコーマート(Kkdbill301/Wikimedia Commons)

 コンビニ部門でセコマが1位に選ばれたのは、これで4年連続。人気のワケについては後述するが、注目は調査結果発表資料に添えられた、以下の文書だ。

《コンビニエンスストア業種は、2016年度から2018年度にかけて、スコアが横ばいでしたが、2019年度は上昇しています》

《セブンイレブンは、2017年度から2019年度にかけて、僅かながら低下しています》

 コンビニ業界全体では満足度が《上昇》しているのにもかかわらず、セブンは《低下》……。調査は4月3日〜29日の期間にインターネットで行われた。

「7Payをめぐるゴタゴタの前であることを考えると、現在はさらにポイントを落としているかもしれませんよ」

出典:JCSI日本版顧客満足度指数第1回調査詳細資料

 と分析するのは、流通アナリストの渡辺広明氏だ。

 たとえば、影響は客数にも見て取れるかもしれない。昨年期(18年3月〜今年2月)までの3大コンビニの既存店客数は、セブンが前年同月比平均99・4%でトップ、ファミリーマートが98・9%、ローソン(ナチュラルローソン含む、以下同)が97・6%という結果だった。セブンが“絶対王者”といわれるのがよく分かる数字だ。

 ところが最新のデータを見ると、今年3〜5月までの前年同月比平均が、ファミリーマートが99・4%、ローソンが98・7%であるのに対し、セブンは97・9%。昨年期にくらべ、セブンだけ明らかに客足が鈍くなっているのだ(以上、各社の月次情報をもとに算出)。売上は3カ月とも前年比100%を超えているし、流行のキャッシュレス決済にセブンの対応が遅かったことなども影響しているはず。とはいえ、24時間問題が顕在化した2月以降に変化が現れた点は、一考の余地があるだろう。

セコマ人気を支える北海道事情

 顧客満足度を下げたセブンに対し、4年連続で1位を獲得、しかも今回、大きくポイントを上げた(昨年73・9→今年76・3)のがセコマだった。先に種明かしをすれば、他の調査対象コンビニが全国展開であるのに対し、セコマは1186店舗中1090店舗が北海道にある超ローカルチェーン(今年6月末の数字、他は茨城県と埼玉に96店舗)。高い顧客満足度には“組織的な道票”、もとい“道民のセコマ愛”があることは想像に難くない。

 北海道の話ながら――沖縄タイムスプラスが7月6日に配信した「セブン出店前『余地あり』沖縄のコンビニ数全国45位の少なさ帝国データ沖縄調査」記事で、人口10万人あたりのコンビニ数が最も多いと紹介されたのが、北海道の56・6店だった。その激戦地でひとり勝ちしているのが、セコマということになる。

 ローソンのバイヤーとして3年間を北海道で過ごした経験のある先の渡辺氏は、セコマ人気の秘密をこう分析する。

「最新の国勢調査では、北海道の人口は約538万人。そのうち約231万人が札幌都市圏と、人口が集中しているんです。大手も北海道に進出してはいますが、基本的に札幌エリアが中心。こうした状況にあってセコマが支持されるのは、人が少ないエリアにも出店する“生活インフラ”としての役割を果たしていることが評価されているのでは。なにせ日本最北端の稚内には『えびす店』、最東端の根室に『うちやま歯舞店』があり、利尻島、礼文島、奥尻島にも出店しています。人口1500人の地区にも店舗を構えているほど」

 評判のいい店内調理の弁当「HOT CHEF」の影響もあるのだろうか。

「かつ丼などが定番メニューですね。北海道の方って、おにぎりを温めて食べる習慣があるんですよ。あつあつで出来立ての食べ物への需要は、寒い北海道では特に強いのでしょう。さらに言うと、セコマは安い。我々の知っているコンビニは基本、定価販売ですが、セコマはセール価格で商品を提供する。毎週安売りチラシを配布するのも、コンビニでは珍しいですよね」(同・渡辺氏)

 過疎地への出店に、商品のセール販売。セブンほか大手チェーンも顧客満足度獲得のために見習っては……と思うところだが、なかなかそうもいかない事情があるという。

それを可能にする北海道の人件費

 24時間営業問題で明らかになったように、コンビニ運営の上でのハードルとなるのが、深夜営業と、それに伴う人件費である。実はセコマが24時間営業を行っているのは、250店舗ほど。過疎地の店舗などは、23時には閉店してしまう。

「そもそも人のいないエリアですから、深夜人口も少ない。夜、店を開けておいても意味がないわけです。これは、セコマの店舗の8割が直営店舗で、本部が営業をコントロールできるからこそできるやり方ですね。24時間営業が当たり前の大手では、経営が成り立たないわけです。セコマは、正月には店を閉めてしまうほど。私が過去に取材したときは、半数の店舗が正月休みをとっていました。これも大手ではまず無理。また、深夜営業を行う店舗や過疎地店舗の人件費の課題は、“北海道は安い”のでクリアできます」(同・渡辺氏)

 厚生労働省の発表によれば、全国の最低賃金の加重平均額は874円であるのに対し、北海道は835円と平均以下。仮に東京のコンビニが8時間アルバイトを雇ったとすると、単純計算で最低賃金985円×8時間=7880円の給与を払うことになるのに対し、北海道であれば6680円と、1000円以上安いのだ。このあたりも、北海道限定で展開するセコマゆえの“うまみ”なのかもしれない。

 このようにセコマには、北海道ならではの特殊事情に支えられた顧客満足度の高さがあった。SNSを覗けば、今回の調査結果を受けて“セコマさすが”との声は多い。対してセブンには、批判的。中には“7Payは納期重視主義の無理がたたって、問題が生じた”なる真偽の不確かな意見もあった。

 なぜセブンは株を下げたのか。この辺り、事情通はこう耳打ちする。

「7Payの噂が本当かどうかはわかりませんけれど、セブンが色々と問題を抱えているのは確か。新商品の売上などのノルマを店舗に課した際の達成率、業界では店の“徹底力”というのですが、ローソンやファミマは、6〜7割。一方、セブンは9割と高いのです。だからこそ、お客からすれば“いつ行ってもいいものが揃っているお店”と評価が高かったわけですけれど、オーナー側からすればたまったものじゃない。SNSに、ファミマやローソンオーナーの不満の声があまりないのも、そのせいです。長年、テレビを始めとしたメディアには、広告主であるコンビニを悪く報じることはタブーで、なかなか不満の声が外に出なかった。ところが、いまやネットの時代。24時間問題を真っ先に取り上げたのが『弁護士ドットコムニュース』でしたし、ネットで話題になったことをテレビが紹介することが当たり前になった。そういう時代になったおかげで、初めてセブンへの不満が表に出たわけですよ」

 だが、「裏を返せばセコマにもセブン的な要素はある」と付け加える。

「セコマもまた、取引先のメーカーへの当たりは強いと聞きますね。たとえば普通のコンビニではまず無い、売れ残った食品をメーカーへ返品する契約を結んでいると聞いたことがあります。それでなくとも、メーカー、とくに北海道の地元業者は、セコマには逆らえません。だからこそお得な値段で客にサービスできている側面もあるでしょう」

 商売は、切った張ったの世界。多かれ少なかれ、こんな話は当たり前なのかもしれない。とはいえ……取引先満足度調査、あったら結果を見てみたい。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月10日 掲載