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KDDI(au)が6月より、3つの新料金プランを順次提供しているが、中でも注目されるのが、データ通信し放題の「auデータMAXプラン」。だがこのプランは必ずしもデータ通信がし放題という訳ではなく、長時間の大容量通信をすると速度制限がかかるという制約が設けられるのが一般的だ。なぜ“使い放題”とうたいながら、制約を設ける必要があるのだろうか。

○auがデータ通信し放題のプランを発表し話題に

NTTドコモが6月より新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の提供を開始したのに対抗する形で、KDDIも6月から夏にかけて、auブランドに3つの新料金プランを追加する。既存の「auフラットプラン20」「auフラットプラン25 Netflixパック」と合わせて、5つの料金プランを提供し、選択肢を2つに絞ったNTTドコモとは逆に、選択肢の多さを重視した料金戦略を取っている。

これらの新料金プランについて改めて説明すると、1つ目は「新auピタットプラン」。これは従来提供されていた、データ通信量に応じて料金が変化する「auピタットプラン」を、よりライトユーザーに特化した形に変更したもので、月当たり最大7GBまで、3段階に料金が変化する仕組みとなっている。

2つ目は、月当たり7GBまでのデータ通信が可能な「auフラットプラン7プラス」。“プラス”と名前が付いている通り、TwitterやFacebookなどのSNSを利用した時のデータ通信量をカウントしない、カウントフリーの仕組みが導入されているのに加え、7GBを超過した場合の通信速度が300kbpsと、従来よりやや高速というのがポイントだ。

そして3つ目は、今夏提供予定の「auデータMAXプラン」。これはデータ通信量の上限がない“使い放題”のプラン。テザリングやデータシェア、国際ローミング利用時はデータ通信量が20GBに制限されるが、それでも国内で、スマートフォンでのデータ通信がし放題というのは大きなインパクトを与え、注目を集めたようだ。

だがこのauデータMAXプランの内容を見ると、「動画配信、ストリーミングサービスなどの、大量のデータ通信または長時間接続をともなうサービスをご利用の際、通信速度を制限致します」とされている。つまり大容量のデータ通信を長時間し続けると、何らかの通信速度制限がかかり、何でもし放題という訳にはいかないようだ。

実はこれまでのauの料金プランにも、3日間に6GBのデータ通信をすると速度制限がかかるという制約が設けられている。KDDIの関係者によると、auデータMAXプランの制約はそれより緩いものになるというが、データ通信のし過ぎには注意が必要ということに変わりはないだろう。

○無線通信の宿命だが条件によっては“炎上”も

もっとも、こうした制約はauデータMAXプランに限ったものではない。高速データ通信が定額で無制限という料金プランはこれまでにもいくつか存在したが、いずれも同様の制約が設けられていた。その理由は、「電波」を使うという携帯電話のネットワーク特性にある。

携帯電話は、各家庭に1本1本、専用のケーブルが敷設されている固定回線とは異なり、国の公共財産である電波を、多くの人と共有して通信する仕組みだ。だが通信ができる電波の帯域幅、つまり道幅には制限がある。それゆえ特定の人が大容量通信をし続けると長時間1人で道路を占有してしまい、他の人が道を通りにくい、つまり快適にデータ通信できなくなってしまうのである。

ゆえに携帯電話でデータ通信し放題の料金プランを提供する場合は、特定の人に無線ネットワークが占有されないよう、「○日当たり×○GBのデータ通信をすると、通信速度を制限する」といった制約を設けている訳だ。だがそうした制約は、大容量通信を頻繁にすることを目的としてサービスを契約した人達にとって、どうしても不満が生じる部分でもある。

それゆえ制約の内容によってはユーザー側の大きな不満を集め、評判を大きく落とすというケースも過去には起きている。その1つが、2016年に発生したUQコミュニケーションズの、主としてWi-Fiルーターに向けた通信サービス「UQ WiMAX」に関する騒動だ。

同社は2015年より、「WiMAX 2+」のネットワークを利用している限りデータ通信がし放題となる「UQ Flat ツープラス ギガ放題」という料金プランを提供している。だがこのプランは当初、3日間のデータ通信量が合計で3GBを超えた場合、翌日の昼頃から翌々日の昼頃まで、通信速度制限がかかるという制約を設けていた。

だが“使い放題”であることを目的に契約した人達が、この通信速度制限にかかってしまうケースが急増。SNSなどで多くの不満が上がり“炎上”が起きるにまで至ったのである。そこで同社では、速度制限がかかる条件を「3日間で10GB」に変更し、さらに速度制限時の通信速度もおおむね1Mbpsにまで上昇させるなどの緩和策を打ち出すことで、事態の収拾を図っている。

通信方式が5Gになれば通信容量が増え、より大容量通信がしやすくなることは確かだ。だがその一方で、通信容量が増えるに従って、通信量をたくさん消費するコンテンツが増えるというのもまた確か。ユーザーに不満が出ない範囲で、いかに満足できる通信サービスを提供できるかというのは、今後も携帯電話会社にとって大きな課題となるだろう。