2016年7月に公開されるや大ヒット、82億円という最終興行収入を記録し、地上波初登場となった11月12日の放送では平均視聴率15.2%と驚異的な数字を叩き出すなど、大きな反響を呼んだ映画『シン・ゴジラ』。ゴジラと対峙する自衛隊や米軍の軍事的描写のリアルさも大きな話題となりました。その軍事考証に関わっていたのが、メルマガ『異種会議:戦争からバグパイプ〜ギャルまで』の著者で軍事ジャーナリストの加藤健二郎さん。加藤さんは、具体的にストーリー内のどの部分にどのように関わったのかをメルマガ内で詳しく明かしています。

映画『シン・ゴジラ』原作に軍事アドバイス

2016年7月29日に劇場公開開始した映画『シン・ゴジラ』で、カトケンはストーリー内の軍事面での考証を担当した。この『シン・ゴジラ』は公開前に内容が漏れないようにと機密保持が厳しかったので、カトケンも、この映画に関わっていることさえも周囲には公言できずに、公開日を迎えた。

で、今回は、具体的にストーリー内のどの部分にどのように関わったのかを書いてみたい。

「マル秘、G作品、準備稿」という216ページの台本を渡されたのが、2年以上前の2015年7月7日。では、さっそく内容に…。

1つ目。陸上自衛隊の戦車や特科(砲兵)は、通常の移動時には実弾は別送しているので、移動中の戦車部隊を突如の計画変更で戦闘に投入するためには、弾薬を輸送しているトラックを合流させなければならない。最初の原稿である「準備稿」に対して、この点を伝え、修正がなされた。

2つ目。米空軍のB-2ステルス爆撃機は、機密保持のため、米国内の基地からでないと離着陸をさせない運用のため、日本上空にB-2が現れる時点から逆算して数時間(以上)前には、爆装して離陸出撃していなければならない。このタイムラグは重要。この意見も映画内で反映されていること、観ていただければわかるかと思います。

3つ目。準備稿では、米軍によるゴジラ攻撃に、巡航ミサイル案があったが、巡航ミサイルは速度が遅いため、貫通力に乏しく、ゴジラ攻撃には不向き。高々度から落下させる爆弾の方が、重力加速度で着弾時には高速になるため、貫通力は大きい。破壊力においても、ミサイルは飛行のための燃料がある分、目標物を破壊する炸薬が少なくなるため、爆発破壊力でもミサイルは自由落下式の爆弾より劣る。

以上、1)戦車実弾輸送、2)B-2ステルス爆撃機の発進タイミング、3)ミサイルでなく爆弾。この3つが、映像上にもはっきり反映されたものだが、他にも、対潜ソナーシステムのこと、都区内の山王ホテルにある米軍ヘリポートのこと、多連装ロケットシステムMLRSのこと、米空母の緊急出港のこと、日米両軍の指揮系統のことなど…約12項目。そのうち3〜4項目が、準備稿からの修正として採用されていたのは、公開初日(7月29日)に確認しました。

映画の制作側が気にしていたのは、自衛隊の指揮所や官邸などの指揮コントロール部署に、外部のどのような人がオブザーバーとして出入りしている可能性がありうるか…、例えば、自衛隊の指揮所に米軍人がオブザーバーとして入る可能性は不自然かどうか、などなど。

準備稿については、以下にちょびっと・・・。

● シン・ゴジラと東長崎機関の関係

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