「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「囲炉裏(いろり)」「炉端(ろばた)」の「炉」。旧字体の(爐)を見ると「戸」の部分が「おひつ」を表し、そこに「火」を添えて、屋内で火を焚き食事を作る様子を意味しています。



今回の漢字は「囲炉裏」「炉端」の「炉」。

旧暦十月「亥(い・いのしし)の月」の、最初の「亥の日」は「炉開きの日」。

今年は十一月八日となりますが、この日は屋内の「炉」に火を入れるのに縁起がよいとされ、茶室では「炉開き」をするといいます。

中国の陰陽五行説によれば、いのしし(亥)は火を鎮める力をもつといわれ、この日に火を入れて冬支度を始めると、火事を免れると信じられていたのです。

では、その「炉」という漢字のなりたちをひもといてみましょう。

「火」という字の横に「戸」と書いて「炉」。

旧字体を見ると「戸」の部分は「盧溝橋」の「盧」という文字になっています。

この「盧」は、炊きあがった飯を入れておく「飯びつ」の形。

そこから「炉」という漢字は「屋内で火を焚くこと」を意味するようになりました。

人が集まって暖をとり、煮炊きをして飯をともにする場所。

「炉」という文字には、そんな団欒の風景が刻まれています。

縄文の時代から、日本人の暮らしの中にあった「囲炉裏」。

かつての「炉」は床下を掘って、土の上に砂や灰を盛り、炭や薪を置いて使いました。

炭火でじっくりと焼く肉や魚、貝類や野菜を煮込んだ汁はうまみたっぷり。

特別な調味料や多彩な食材がなくても、おなかをしっかり満たします。

そばに居れば身体を芯から温め、お酒の酔いもゆっくりまわる。

家族で互いの顔を確かめ合って、語らうときを楽しむもよし、ゆらめく炎を静かに見つめ、自分自身の心のうちと向き合うもよし。

スイッチひとつですべてをすませ、できた時間をあくせくと埋めてきた私たち。

手間のかかる「炉」を捨て、不自由な暮らしを抜け出したつもりが、その実、人間が味わうべき本来の幸せを失ったような気もします。

ではここで、もう一度「炉」という字を感じてみてください。

本来、屋内で使う「炉」の扱いは簡単なものではありません。

まずは、燃料となる木を切りだして乾燥し、薪にする作業がある。

火をおこして薪につけ、炎を育て、消えぬよう燃えすぎぬよう番をする。

そこには「火」を敬う心、深い愛情と責任がありました。

「炉開き」は、その頃の気持ちを取り戻し、火の安全を祈る行事のひとつです。

そしてふと、思い出すのが原子炉の「廃炉」という文字。

いにしえの人々が「炉」という文字にこめた平和な日常への願いを、今一度、見つめなおすときがきています。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『夢丸ログハウス選書(9) 薪ストーブと囲炉裏の本 心と体を温める、火のある暮らしを楽しむための本』(夢の丸太小屋に暮らす編集部/編 地球丸)

『しあわせを呼ぶ和ごよみ』(岩崎眞美子、サイトウトモミ/著 学習研究社)

11月11日(土)の放送では「介」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/